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2019.5.20.Wednesday>>講読編,

2019515日(水) 講読   出席8名

『智者』  凌 鼎年

2015中国微型小 排行榜P.163-165)

 

『知恵のある者』

国王は天下の英才を自ら集めたいと公言した。要するのはただ

能力のみであると。

=ある者が国王に知者を推挙した。国王は上から下までじっと

見たが、所謂「知者」は背も低く、容貌も普通で、実のところ

その知者に何か人より優れている所を見出すことはできなかった。

=国王はA大臣に知者の素性を調べに行かせた。試しに使って

みてその知者にいったい何か才能があるのか見てみようとした。

=一週間後A大臣は国王に報告した。王さま、あの者は田舎の

とある貧しい家の生まれで、ほとんど独学で学んだということで

ございます。何か天地もひっくり返るような大事を成したという

ことは聞き及びませんでした。しかしながら、田舎のさえない者

どもの中ではまだましで、少しは賢いということで、周りの者

からは信頼を得ていたようでございます。A大臣は強調した。

ある諺がございます。「田舎の秀才は都の愚者にも及ばず」、

この意味は田舎の者は見識が狭く、そこで抜きに出ていたとしても

都に来ますれば、長いこと都にいた愚者ほどの見識もないという

ことでございます。

=国王は考えた。「龍は龍を産み、鳳凰は鳳凰を産み、鼠の子は

穴を掘るしかない」、この言葉は一理あるな。しかしながら、もし

すぐにこの者を追い出せば、余が自ら知者を切に求めておるという

名声を台無しにするやもしれぬ。そばに留め置き半年ばかり試しに

使うにこしたことはない。真の「知者」に知恵がなければ、その時

追い出しても遅くはなかろう。

=(以下略)**ある時、辺境の地へ視察に赴いた国王は山道や

ぬかるみの悪路に足を痛くし、不満を述べた。すると大臣たちは

国王の通り道に牛皮を敷き詰めることを提案した。国王は満足し、

知者は名ばかりでこの大臣たちには遠く及ばない、視察が終えたら

罷免しようと考えた。大臣たちは各地から牛皮を集め専任者を雇い

国王の行く道に敷き詰めた。**

=知者は三日視察し、三日考え、国王に上中下の三策を提案した。

下の策:王の行く道にずっと牛革を敷く。この場合千から万の

枚数必要となる。中の策:ひと渡り敷き詰めては、そこを歩き、

歩いた後の牛革を前方の道へ移す。こうすれば、数十枚で足りる。

上の策:半分の上等な牛革を選び、2枚に分け、両足を包み、皮

上部に穴をあけ、紐を通し、しっかり縛る。そうすれば、難なく

道を歩ける。でこぼこの石や砂利をもうおそれることなどない。

たとえ水たまりや泥水があっても足は濡れないし、汚れない。

=聞くやいなや国王はすぐに気づいた。知者のこの意見は

A大臣B大臣C大臣の愚かな考えより優れているかもしれないと。

直ちに知者の上策を採用し、こうして革靴の雛形が誕生した。

=(以下略)**その後大臣たちは余計な口出しは控えるように

なり、視察から戻ると国王は知者を大いに賞賛し、知者は靴工場を

作り専門職人を召集、総監督となった。靴の改良に邁進している時

前線から良くない知らせが届いた。「外敵が侵入、破竹の勢い」。

大臣たちが提案したのは、降伏し、貢ぎ物を納めるということ

だった。国王は手も足も出ない状態だった。**

=知者は国王が自分を軽んじてはいないのだから、当然策を献上

すべきだと考え、国王に上中下の三策を献上した。下の策:遷都、

中の策:和睦、上の策:奇襲 だった。

=略=

=知者は言った。遷都は一時的には安泰だが、長くはない、かつ

領土を半分失うことになる。和睦は才色兼備な公主を犠牲にし、

もし公主に胆力・見識があればもしかしたら10年か20年の

太平が得られるかもしれないが、不確定要素があまりに多い。

奇襲ならば逆転勝利もありうる。今は敵は勝利に有頂天となって

いる、よもや我々が奇襲をかけるなどとは思いもよらないだろう。

最も重要なのは、今や我々の兵は皆皮の靴を履いていて、その

進軍速度はすでに以前とは同じとは言えない。我々がもし最も

進軍が難しい西の道から夜襲をかければ、敵は対抗する暇など

ない。八割九割の勝ちを手にできる。

(以下略)**国王は知者の上策を採用し、全軍革靴を履き、夜襲

をかけ、逆転勝利をおさめた。論功行賞ではもちろん知者が第一の

功労者だったがこれで大臣たちは気分を害し、知者に圧力をかける

つもりだった。**

=功績表彰の席上で、知者は国王に言った。「私はもともと田舎

の村の民で何の徳も能力もございません。国王の為、国家の為

力を尽くすことができれば、それだけで、すでに私と私の家族

にはこの上なく光栄なことでございます。私は地位も財産も

いりません。王さま、私に靴を作る独占の権利をお与えください。

それだけで私は十分に満足でございます。」

大臣たちはこれを聞くや、国王に進言した。この知者を

靴づくりの開祖として報じてください。その家族に靴づくりを

独占させて下さい。それで彼に十分報いたこととなります。

=聞くところによると、知者はこれより隠遁し、靴を作って

生計を立て、百まで生き、病もなくその生涯を終えたと

いうことだ。

(完)

 

靴の起源のお話。この知者、靴の権利独占!意外と抜け目

ない?ABC大臣だけで、この次敵が来たら王さま大丈夫?

 

難しさ★★☆☆☆ 面白さ★★★☆☆

 

今後の予定

5/22休み   5/29長編『芳』第5 

6/5短編『电话』      6/12休み         

6/19短編『一只茶杯』 6/26長編『芳』第6

author:多摩中, category:講読編, 06:44
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2019.5.8 Wednesday>>講読編,
2019年5月8日(水) 講読     陈老师  出席7〜8名
『上三旗』  田 洪波著
(2015中国微型小说 排行榜P.160-162)
「上三旗」とは清代に支配階層である満洲人が所属した社会組織
・軍事組織「八旗」のうちの皇帝直轄の「正黄」「正蓝」
「镶黄」。他五旗は「正红」「正白」「镶白」「镶红」「镶蓝」。
騎馬民族故に旗はその象徴。「镶」の旗には縁取りがある。

アトリエの椅子が壊れてしまって、画の大家张子恒は新調しよう
と思っていた。ある人が城西の乔木匠を张子恒に勧めた。
その工房はそれほど大規模ではないけれど、腰を据えた仕事ぶりで
どちらかと言えば、信用と品質を重んじているということだった。
その前にも张子恒は新聞で乔木匠の記事を目にしたことがあった
ので、二の句もなく自分で予約しに出かけた。

乔木匠は50歳は超えていて、角刈りで、その切り株のような頭には
薄っすら白いものが混じり始めていた。彼は落ち着き払って张子恒
が述べる注文に耳を傾けていた。
===略===
乔木匠は鉛筆で真剣に张子恒の話を書き留め、太くて濃い両方の
眉を寄せて、ノートに絶えず描いていた。
===略===
张子恒は家に戻り寸法を測るのを待つことになるが、なるべく早
くと色々提案する彼に対して、乔木匠は請け負わず急かす张子恒
の不満を感じて言った。「私たちは製品の信用と品質を重んじて
おります。お支払い頂く時には必ずやご満足頂けますから。」
张子恒は不満だったがその場を去るしかなかった。
===《↓次の部分が難しかったです。》
”张子恒琢磨,这也可能是有意吊他的胃口,似乎不这样,不足以
显示自家的活儿好。把这心思说给好友听,好友表示赞同,好友说
可能真的这样,俗话不是说得好吗,无奸不商!不过这样也好,
我们可以一探他的手艺。”张子恒はあれこれ考えた。こうやれば
私の興味をわざと掻き立てられるわけだ。こうしないと、
自分の仕事がたいそうなものだと充分にアピールできないしな。
そう思ったんだと友だちに言うと、友だちたちは同意し言った。
本当にそうかもしれない、諺はうまいこと言ったよな、ずる賢く
ない商売人などいない!ただそれでもいいさ、彼の腕を確かめ
られるってもんだ。

変わり者には変わったところがあるもんさ、家具ができれば、
君の画と相まってそれぞれがより一層引き立って、君の
アトリエはその時からいっそう輝きを増し色を添えられるさ。
===略===
長いこと待っていると、乔木匠は弟子を伴って測りにやって
来た。わざわざご足労いただかなくてもお弟子さんに来て
いただけばいいのに、と言う张子恒。それに対して、乔木匠は
この家の壁紙がどんな色かどのような素材が合うのかをこの目で
確かめなければと言った。张子恒の心の声、まさかまたしても
なんかもったいつけようっていう魂胆か?
”别是又要给自己贴什么标签吧?”
===略===
乔木匠はものさしできちんと測った。弟子にある数字を尋ね
弟子が少しあいまいに応えようものなら、額に青筋。
「わずかの違いも許されんぞ!一は一、二は二。正しく見て、
正しく言う。肝心な時、少しもいい加減にしてはならん。」

张子恒は乔木匠の真面目さに感服し、わずかの合間に話を
すると、彼が満州族で、祖先はかつて満州族の皇室を守る
八旗の镶黄だったと知る。それは八旗の中の上三旗に属する。
张子恒は大いに驚き訝しく思った。皇帝をお守りしていたの
ですか?乔木匠は张子恒をちらっと見て、一目であなたは
学がある方だとわかりましたよ、と言った。正黄旗、镶黄旗、
正蓝旗は皇帝ご自身が統率し、上三旗という。他の五旗は
正红旗、镶红旗、镶白旗、正白旗、镶蓝旗で下五旗といって
親王、贝勒,贝子が掌握し各地に駐屯していた。
===略===
材料やそれを用いる理由を説明する乔木匠に続けざまに
なるほど、と言いながら、张子恒はまだ疑っていた。心の中で
つぶやいていた。商売人はずる賢い、もしかしてなにか私を
ひっかけて、陥れようとしているのか?測り終わっても
乔木匠は意を尽くし切れてないかのようにアトリエを歩き、
椅子とテーブルをどのように並べるのかアイデアを話し始めた。
昨今の世の中にもこんな実直な人がいるなんて、なんて稀有
なのだろう。後は彼の腕が本物であることを願うばかりの
张子恒だった。

長い間待って、やっと家具が乔木匠と弟子によって慎重に
運びこまれた。しつらえた家具を遠くから、近くから見て、
満足気な乔木匠。その様子がどうも誇張気味ではないのかと
感じた张子恒は家具とかけてある画の位置を換えてみてはと
提案してみる。怒る乔木匠。絶対にだめです。このアトリエに
とって最も立派にしつらえたのだからと言う。

その勢いに、疑い続けた张子恒のすべての疑念は消え去った。
乔木匠は手で繰り返し家具をなで、まるで自分の子供に対する
ように愛情に満ちた眼差しをそれに降り注いていた。张子恒
があなたは本当に巨匠ですねと言うと、乔木匠は朗らかに
笑って答えた。私はただの大工です。ただし、私どもの
この仕事っていうは技の道を神妙に守ることを重んじる
もんなんです。今じゃそれはめったにないことかもしれません
がね、わたしは自分にそれを成し遂げることを課しておるん
です。张子恒は余分に払おうとするも乔木匠は決して受け取ら
なかった。张子恒は乔木匠を表まで送り、遠のく姿を見送る
しかなかった。

部屋に戻り、光輝く家具を前に、上三旗のあの切り株頭を
思い出し、张子恒は声をあげて笑った。
(完)
余談:作者は満州族の方ではありません。失われつつある良き
   ものを、民族を超えて尊ぶ内容は進歩したと言える。
   高貴な色の順番黄→藍→赤色。

難しさ★★★★☆ 面白さ★★★★★
今後の予定
5月15日:短編『智者』
  22日:休み
  29日:長編『芳华』第5节 
author:多摩中, category:講読編, 10:31
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3月27日 講読

3月27日 出席7名

月亮山 いつもより1ページ多いので、30分余分に授業しちゃいました。

先生、ありがとうございました。

石原 という名前が出てきたので、てっきり日本人がからんだお話と

思い込んで、授業に臨みました。

実際は、中国の農村で頑張る大学で最新の農業技術を学んだ青年と

相思相愛都会のお嬢さん、それにその母親の話でした。

石原は、石が姓 原が名 でした。まぎらわしい!

 

次回4月3日  乡村方式

4月10日   鸳鸯跳

4月17日 お休み

4月24日 長編小説

 

代筆なので、いつもの方のようには、書けません。ゴメン

以上

author:多摩中, category:講読編, 14:32
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2019.3.13(水)講読クラス
☆これまで「講読」を「購読」としていました。
 申し訳ありませんでした。
 広報の方、ご迷惑をおかけしました。
 ご指摘有難うございました。☆

2019年2月6日(水) 講読   陈老师  出席5名
『芳华』        严 歌苓 著
--第三节--
私が刘峰と正式に交流をもったのは、彼が移動してきた半年後
だった。私たちは大きな部隊につき従って、川西北山区まで行軍
訓練に来ていた。それは七日間野営して進軍する軍事訓練だった。
もし私たちが一年に一度、本当の「軍人役を演じる」(扮演)
と言えば、この七日間だけ(就)なのだ。決まり通り行う射撃訓練
と投弾訓練はすべてこの時に完了する。「兵士を演じる」ことは
私たちにとってはゲームのようなものだった。なぜなら、訓練を
しなくてもいいし、射撃を思う存分楽しんでもいいし、乾パンを
おやつにできたし、「歩哨襲撃訓練」では本当の喧嘩や相撲も
できたからだ。射撃訓練を開始する前、訓練所の简副所長が2人の
見張りを選んだ。それは、射撃場の一番の外側に立たせて農民の
侵入を防ぎ、兵士たちに銃弾で動く標的を撃たせるためだった。
その見張りに私と刘峰が選ばれた。刘峰は志願した。それは彼が
野戦軍から来ていて、射撃はたいして珍しいものではなく、省いた
射撃に熱中する機会を他の人に譲ったのだった。私はと言えば、
満場一致で推挙されたのだ。何故なら私はいつも射撃の点数が
悪くて、いままで銃弾が標的の周りに当たった事がなく、みんな
私がグループの射撃練習成績を悪くすると心配していたからだ。

あのとき、私はあとひと月で13歳だった。身長は1m61、体重
は38kgで1972年の川西北の冬のさなかに立って、軍人と人民の
間の生身の长城を築いていたのだ。まとまったたくさんの銃声が
午後の一時から四時まで続いた。私は立っての見張り番から
ピョンピョン跳んでの見張り番になった。たった3時間の間に
足がしもやけにならないように、私はダンスの授業で習った
ジャンプの組み合わせを試さざるをえなかった。一面のさつまいも
畑に一列の的がささっていた。さつまいもは既に掘り上げられて
いて、黒くなったつるがひろがってまるでぼろぼろの漁の網のよう
だった。ダンスの杨先生の大きい腕時計が私の手首にあって、私
は3〜5分くらい跳んでちょっと見ては、孤独と疲労と寒さで
5分が一生のようになると実感した。四時を五分過ぎた。銃声は
完全に静まった。射撃練習は四時には当然すべて終了するはず
だった。一匹の野ネズミがキーキーと私の足元から走り去った。
私の視線がそれを追いかけると、やがて田のあぜ道の下につる
つるした穴があるのを見つけた。私はちょっとその穴の中を見たい
と思って、すぐに腹ばいになって、もともとは草原を警戒するため
の高倍率の望遠鏡で、穴の中を見たけれど、何も見えなかった。
私は野ネズミにとって猫が敵なのかどうかもわからずに、猫の
鳴きまねをしながら木の枝を拾うと穴の中をかき回した。その時、
「パンッ」と一発聞こえて、銃弾が私の頭の上の楡の木の梢を
かすって、シュッと音を立てた。射撃練習は終わったわよね?
30秒も経たぬうちに、「パンッ」とまた一発。私がまだ訳が
わからないでいると、誰かが私を地面から引っ張り上げた。
顔を振り上げると、両方の頬を真っ赤にした白い顔が口から
白い息を吐いていた。私はこの顔を知っているはずだったけれど、
その顔がこんなにもクローズアップになっていたからいかにも
見知らぬ人に見えたのだ。その人が口を開いた。きつい言葉
だった。:「君、どういうことだ?!どうして、村の人が射撃場
に入っているんだ?!」山東省の訛りで私はわかった、この人は
もう一人の見張りのまさに刘峰だった。彼はもう一方の手で背の
曲がったおばあさんを抱えていた。そのおばあさんは明らかに
私が野ネズミにかまけていた時に射撃場に入ってきてしまったの
だ。けがを負っているようで、低くうめいていて、刘峰の手に
身を任せてだらっと動かず、ついには黒目が閉じ、瞼のすき間
にはただ2本の白い線が残った。刘峰は「おばさん、おばさん」
と叫んでいた。私は何も考えられなくなっていた。次の印象は、
刘峰がおばあさんを抱えながら私の前に飛び出してきたとき
のものだ。彼は大声で言った。「まったく無責任だな!遊びたい
とはひどいな、どんな兵士だ?!……」向いの山に赤十字の旗が
翻っていて刘峰はおばあさんを戦地救急隊へと抱えていった。
私は後ろにつき従って、走ったり転んだり、両方の頬は涙が
いっぱいだった。涙は転んだからか、怖かったからか、刘峰に
責められたからなのか、その全てだと今なら思う。刘峰と私は
おばあさんを救急テントに運び入れると、まさに戦場救急隊員を
「演じている」外来診察部の医者と看護婦が取り囲んだ。続いての
印象は、刘峰と私がテントの垂れ幕の外で悪い知らせを待っていた
時のものだ。しばらくすると刘峰は立っているのに疲れて、腰を
下ろすと顔をあげて、私に聞いた。「十…いくつなの?」私は蚊の
なくような声で「十三」とつぶやいた。彼はそれきり話さなかった。
私は彼の後ろの襟ぐりに長いつぎ当てがあるのを見つけた。その縫い目
は細かくて全然見えないほどだった。垂れ幕がついに開いた。救急医
が私たちを入って見るようにと呼んだ。私と刘峰は互いに目を
見合わせた、遺体確認なのか?刘峰は震えながら弾はどこに当たった
のか聞いた。医者はどこにも当たっていませんよ、30分おばあさん
の身体を検査しましたけれど。身体は丈夫で回虫の薬さえも飲んだ
こともないしアスピリンも言うまでもないくらいです。お腹がすいて
気絶したか、でなければ、銃声を聞いて驚いて卒倒したのでしょう、
と言った。

私たちは首を伸ばしてちょっと見た。おばあさんが軍用の果物の
缶詰を抱えて、スプーンでシロップ漬けのパイナップルの大きな
2切れを口に押し込んでいるのが見えた。刘峰が私を引っ張って、
私たちは急いで垂れ幕の中へ入って行った。刘峰はおばあさんに
敬礼をしてお詫びを言った。おばあさんはジュルジュルと食べ、
卒倒した自分を取りもどすのに専念していて、私たちに気づく
どころではなかった。

救急看護師は小声で私たちに言った。運がいいですよ、本当に
当たっていたら、彼女の家族はサツマイモを食べる必要もなくなり
文化宣伝工作団に食料を頼ることになったでしょう。

駐屯地にもどると、話ははっきりした。ベーシストの曾大胜は
残った数回で3回続けて10点を必ず出すという賭けをみんなと
していた。みんなは撃ち終わり、曾大胜一人がまだそこで這い
つくばっていて、半オートマチックはまだ二発銃弾が残っていた。
彼は三分間狙っていたが一発も撃っていなくて、後ろの軍事訓練科
の副科長にハンカチを借りて目を片方覆って再び改めて狙いを定め
始めた。ある人がからかって言った。この一発で10点を出せなけ
れば科長のきれいなハンカチに顔向けできないな。もう一人が
さらに辛辣に言った。こんなにまでして狙ってんのに、10点じゃ
足らなくないか?この一発で11点が出るんじゃないのか?曾大胜
は跳ね起きて、あてこすった奴に一発蹴りをいれ、再び第三回目を
狙い始めた。この時、既に七分が過ぎていた。これがまさに私が
射撃練習が既に終わったと思って、持ち場を離れてしまった理由
だったのだ。
今後の予定
3月20日  休み
3月27日  短編『月亮山』p150-153
親睦会は4月になってからです。
author:多摩中, category:講読編, 19:06
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2019.3.6(水)購読クラス
2019年3月6日(水) 購読 陈老师  出席7名
『生命』  刘 建超著
(中国微型小说 排行榜P.147-149)
彼は数十分あがいていたが、無駄だと感じた。巨大な黒い流れは
彼を岸からだんだんと遠くへと押し流していた。彼はいっそのこと
静かに海面に浮かんで流れに身を任せた。岸は次第に一つの線と
なり、目の前から消えた。

空は暗くなり、紺碧な海は光輝く美しい姿を仕舞い込み、薄っすら
と黒くなった(一抹沉遏法6は一面まるで灰色の網のように、
四方を覆い尽くし、彼の心までも覆った。

今回の海中撮影の計画を彼は何日もかけて準備したが、潜水の収穫
は満足のいくものとはなっていなかった。彼は少し焦っていて、
頭の中は、様々な点や線や面が交差していっぱいで、計画して
いた区域から知らない間に外れていたのだ。ひときわ大きな波が
彼を深海へと押し込んでいった。

それでも彼は緊張し始めることもなく、心配などしていなかった。
彼は海兵隊に従軍していたことがあり、海上での生存訓練では
いつも優秀だったのだ。彼は分かっていた。今、最も重要なのは
身体能力の維持だ。潜水服により身体の熱を保持できる、彼は
まるで海面に浮かび漂う木切れのようにできるだけ動きを少なく
した。

漆黒の夜空を眺めながら、失望と失意で彼はため息をついた。
除隊後彼はある広告会社に入社した。そこで彼はコピーライター
の瑶瑶と出会った。彼女は爽やかで美しく、明朗快活な女性
だった。大きな目を見開いて、彼の海兵隊での物語を聞いて
くれた。初めて聞くように、ちょっと驚くと、クスクスと
笑いだし、それはまるで澄んだ音色の風鈴のように、彼の心の
扉をノックした。(恋に落ちちゃいました〜)
【風も吹きだし、波が高くなり、気温は下がり、彼は死が自分に
近づいてきていると感じる。】
楽しい事を考えよう。今晩はとても耐えられそうにない。
楽しい事と言えば、楽しかったなあ、瑶瑶の誕生日。その時、
バーで彼と瑶瑶は二人で歌の勝負をした。負けると瑶瑶は一缶
ビールを空けた。彼はと言えば、軍歌をたらふくしこんでいる。
だから瑶瑶が相手になるわけがなくて、飲み過ぎて酔いつぶれて
しまった。瑶瑶は家まで送ろうとしても車を拾わせてくれず、
どうしても彼におんぶして家まで行ってと、きかなかった。
瑶瑶の顔が彼の首の後ろにぴったりくっついて、彼女の
温かい息がくすぐったく彼の顔のあたりにかかった。
【楽しい時はやはり短い。会社の写真部の小白脸が瑶瑶に
しつこく迫ってあきらめない。彼には全国的な賞をとった
というアピールポイントがあって、瑶瑶を写真に撮ったり
した。そして、地方取材に一緒に行って、瑶瑶のテントに
もぐりこんだのだ。】
彼は思いっきり小白脸に拳をお見舞して、(あれれ)会社を
辞めた。(さらにあらら)小白脸は赤くはれた顔を覆って
泣きながら叫んだ。「瑶瑶が僕を好きなんだ。腕があるなら、
君も全国レベルの賞でもとってみろよ。」(なぬっ〜!)

彼は本当にカメラを担いで、負けん気を出したが、海兵隊員
で活躍したその二つの目でも最上級に美しい画面を探し出す
ことはできていなかった。

【彼は波の中で目ざめた。空は明るく四方見わたす限りの海。
太陽は眩しく、彼をあぶり、体力を奪ってゆく。唇は渇いて
裂け、手はふやけ、いささか絶望を感じて来た。元気を奮い
起こし彼は海面を漂う植物や腐った魚を食べた。】

彼は首から下げていた(!!!この状況でまだ持ってたんかい!)
カメラを取り出すと漫然と眺めた。一面の空と海、体の下一面
の紺碧の青、目の前の一面の青、数羽の海鳥が飛んでいた。

彼の撮影の腕はみるみる向上し、大小の賞を受けたが全国レベル
は(憎っき小白脸に言われたのに!ぬぬぬ。)まだだった。彼は
今度の全国コンクールの為に未知の海域を選び、潜った。自分の
あのちょっとしたプライドの為、あんなメンツと虚栄心の為に
なんと己を命も危ない苦境に陥れてしまったのだ。
====略====
陽が落ちて、海の果てで最後の光を仕舞い込み、彼はまた暗黒へ
入っていく。ああ、まだましだ。今夜の夜空には星がでている。

♪きらきらひかる、お空の星よ♪あの歌を思い出した。あの晩
瑶瑶が彼とお酒を飲んで歌ったな、彼の顔に笑みが浮かんだ。
(この歌を歌う女子ってどうなの?)彼はこれまでこんなに
夜空の星達に親しみを感じたことなどなかった。ついに彼は
星達のお話するたくさんの声が聞こえるようになった。
(大丈夫か!しっかりしろ!)一筋の流れ星が地平へと流れた。
人が死ぬと流れ星になれるという。星空を眺める人に一瞬の
喜びを与えられるとしたら、それは素晴らしい最後かもしれない。
地位、お金、なんの価値もない。それらすべては死ぬ時持って
ゆけない。(地位,财物,算个什么东西,都是身外之物。)
【彼はついに死を選び、海へと顔をつけた。】
息を止め、真っ暗な深海を眺めていると突然、目の前に戦友が
現れた、瑶瑶も小白脸も現れた。彼らが皆彼を軽蔑し臆病だと
嘲笑していた。生命は尊い、どうして容易く無駄にできようか?
日々生きることは素晴らしいことだ。どうして挫折したからって
努力を放棄できようか?彼は頭を上げ、海面から跳ね上がって
深々と息をついて、夜の海に受かって一声吠えた。

【朝になり】目の前の茫漠とした海面に太陽が昇ったばかり
だった。海面には緋鯉のような波が広がっていた。たちまち
何千何万の名もわからぬ魚が海面に跳ね上がり朝日に向かって
心ゆくまで楽しげに踊っていた。その壮観な情景で、彼は
あたかも神仙の地に、蜃気楼に、身を置いているかのようだった。
彼は本能的にカメラを掲げ、素早くシャッターを切った。

彼は海上を漂流した四日目に、通りかかった船に救助された。
ほとんど生きている兆しもない状態だったが、意外にも彼は
頑強に息を吹き返した。彼の写した作品《生命》は全国
コンクールの金賞を獲った。新聞メディアがインタビューで
彼に受賞の感想を話してくれるようにというと、彼はただ、
二言言っただけだった。「生命への畏敬、大海の抱擁」。

彼は受賞作品を瑶瑶と小白脸に贈った。瑶瑶は健康で可愛い
小さな命に恵まれてそのお腹が膨らみはじめたばかりだった。
(終わり)
主人公の彼、マッチョ海兵隊。恋に破れ男の意地でカメラで
全国制覇を狙うも、海で遭難。そして、命の危機の中、
海に抱かれ、星に慰められ、悟ったのですね。元恋人と
なぐっちゃった恋敵に自分のすんばらしい命がけの作品を
プレゼントしました。こんな男性。絶滅危惧種では?
難しさ★★☆☆☆ 面白さ★★★☆☆
今後の予定

3月13日  長編『芳华』第3节 
3月20日  休み
3月27日  短編『月亮山』p150-153
author:多摩中, category:講読編, 17:47
-, -, - -
2019.2.27(水)講読クラス
***前回の購読のブログにお見苦しい点がございました。
申し訳ありませんでした。***
2019年2月27日(水) 購読 陈老师  出席8名
『谁送来烤红薯』  何 葆国著
『誰ひとり焼き芋をくれる人などいない』
(中国微型小说 排行榜P.144-146)
窓の木枠の光ったところが少しずつ暗さを帯び、とうとう
真っ暗になった。彼はぼんやりとしていたが、ぶるっと
震えて、まるで夢から覚めてそして又夢現の世界へと滑り
落ちていくようだった。風が窓から吹き込んできて、ピュー
ピューとチャルメラが低く吹かれているようだった。彼は
ふいに土楼村での少年の頃を思い出した。彼の父親の出棺
の時のあのチャルメラの音、その音は彼の心をしめつけた。
その後、彼は马铺の副知事になって、父のお墓を移した。
その時鳴り物の一団を頼んだ、その日のチャルメラと銅鑼の
合奏はとても陽気だった。でも今、彼の耳に聞こえるのは
ただ低くて沈むような悲しみや恨みの音だった。

彼は籐の椅子から立ち上がった。どのくらい古いかわからない
椅子はギーギーと音をたてた。もう辺りはすっかり暗くなって
いた。彼は昼に残ったひと塊のご飯を残り物の野菜スープと
合わせて煮ておかゆにしようと思った。まさに马铺で言う
ところの「猫まんま」だ。それで夕飯は作らなくてもやり
過ごせる。かつて時間がたっぷりあって、毎晩どれだけ宴会が
あったことか、お腹にどんなに詰め込まなきゃならなかったこと
か、わかりゃしない。今はよくなった。毎日昼にわざと多く
作って、ご飯とおかずを余らせれば、手数は省けて、一回分
ご飯を作らなくて済む。一度、息子が突然厦门から会いに戻った
が、父と息子はご飯をすべて平らげてしまい夜にご飯を作るのが
億劫で一晩中お腹を空かせて過ごした。彼は思い出した。刑務所
から出所したばかりの時(刚刚进去时)2、3日何も食べず、あれ
は本当にひもじくて気持ち悪くなった。(饿得肠子都要断了。)
====略====
彼のいる部屋は彼がまだ马铺の民政局の課員だったころあてが
われたもので、その後住宅制度改革によって、買わされたものだ。
その後、彼は少なくとも3度新しい部屋に引っ越した。この古い
部屋はほとんど忘れ去られ門は鍵がかけられ、中は蜘蛛の巣
だらけだった。彼が罪を犯してそれらの部屋は没収されるか
競売にかけられるかしたが、彼が刑務所から出た時、幸運にも
まだこの古い部屋に身を寄せることができた。

彼は厨房に入った。そこはベランダを改造したもので、狭かった。
彼は残ったおかずをご飯にかけると、水道水を少し加えて、
鍋をまるごと電気コンロに置き、何回かスイッチを押したが、
全く反応しない。壊れてしまった、彼は心の中でため息をついた。
もし水をかけなければ残ったご飯とおかずはまだ食べられた。
刑務所ではいつも冷えたご飯とおかずだったのだ。水をかけて
しまったな、彼はちょっと考えると、身震いした。
====略====
窓はしまっていなくて、冷たい風がピューピューとしきりに
入ってきていた。彼は立って窓を閉めようとして、外で数回
ドアを叩く音を聞いた。そう、ドアを叩く音。彼が戻ってから
はじめてこの音を聞いた。あのころ家のドアを叩く音は続けざま
で、お客は絶えなかった。彼は刑務所から出た後ここに住んで
半年あまりだが、これが初めて聞いたドアを叩く音だった。

彼は大急ぎでドアを開けた。ドアのところには彼よりも老けた
顔があった。彼は誰だか分らなかった。「曾書記、あなたは
私のことをお忘れですね。圩尾weiwei町の老罗です。あの頃、
私はあなたの貧困救済指定の対象者でした。ある年の冬至に
あなたは私の家に一瓶の落花生油と一組の綿布団を贈って
くださって…」

彼は少しも思い出せなかった。かつては年末ごとにどうしても
政府を代表して貧しい人の家に慰問にいかなければならなかった。
その時贈ったものは皆国家が調達したもので彼は全く印象に
残っていなかった。目の前のこの老けた顔については更に
まったくもって記憶がなかった。
「曾書記、本当にお布団を贈っていただきありがとうござい
ました。本当のことを言えば、あの年もしあのお布団が
なければ我が家は本当に暮らしていけなかった…」
その人は突然手を伸ばすと彼の手にビニール袋を手渡した。
それは温かくて湯気が昇っていた。

「あなたに差し上げるようなものが何もなくて。私は今
解放区の入り口で焼き芋を売っています。どうぞちょっと
味をみて…」彼がビニール袋を受け取ると、その人は
立ち去ってしまった、まるで彼が受け取らないと困ると
思ったようだった。踊り場まで行くと、振り返って言った。
「どうぞ味をみてやってください。私の焼いた…」

彼がそのビニール袋を開けると、それは一個の大きな焼き芋で、
うっとりするような香りが立ち昇っていた。彼は大きな口で
一口頬張った。柔らかくて美味しそうな香りがして全身すぐに
温まって、我慢できずに続けざまに三・四口食べて、本当に
こんなに美味しいもの食べたことがなかった。彼はその生涯に
おいて高級煙草の中华烟·茅台酒、160平米以上の住まい、人民
元、米ドル、ユーロ、高級時計のロンジンやヴァシュロン
コンスタンタンは受けとったことがあった。けれどもこんなに
美味しい焼き芋だけは受け取ったことはなかった。彼は大口を
空けて四・五口と焼き芋を食べてしまった。お腹はあったかく
気持ちよくて、気持ちよすぎてお腹がフンフンフンと歌を
歌っているようで、心にはゆっくりと感動が湧きあがって
きた。彼が罪を犯し、刑務所に入ってからはほどんどの人は
彼のことを万死に値する悪役人だと考えた。けれども今、
彼の恩に感謝している人がいたのだ。しかも、彼に2つとない
ような美味しい焼き芋をくれた。彼の涙は音もなく流れ落ちた。

1時間ほど後、彼は解放区の入り口に行ってみると、そこには
焼き物の屋台が一つ出ていた。彼はそこの若者に尋ねた。
「あの焼き芋屋の老罗は?」屋台の若者は言った。
「老罗だって?去年死んだよ。そうでなけりゃ、なんだって
おれがこの場所でやってるんだよ。」

死んだ?彼ははっと大きく口を開けた。驚いて何も言え
なかった。
(終わり)
難しさ★★★☆☆ 面白さ★★★☆☆
今後の予定

3月6日  短編『生命』p147-149
3月13日  長編『芳华』第3节 
3月20日  休み
3月27日  短編『月亮山』p150-153
author:多摩中, category:講読編, 19:04
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2019.2.20(水)講読クラス
2019年2月20日(水) 購読 陈老师  出席6名
『裱画徐』  马 犇著
『表具師の徐さん』
(中国微型小说 排行榜P.141-143)
表装は一つの伝統芸術だ。淮城には古来多くの文人墨客がいて、
表装する所には事欠かない。表装といっても画ばかりではなく
実際には書も表装する。

その土地で描かれた画、他所からの画、さらには補修が必要な
蔵にしまわれていた古いもの、こうしたもので、淮城の表装市場
は比較的盛んだった。けれども、その後工房の中には後継者が
なかったり、古い手法では経営できず、機械による表装に切り
替える工房も出てきた。

他の工房がどうであれ、淮城の南門大通りの東側のある路地に
いた徐という名の表具師はずっと手による表装を守り続けていた。
徐家の表装の歴史は長い。その祖先が表装を学んでいた時、淮城
の画家边寿民*と知り合い、彼の為に表装をした。その交流で、
その経験から学び、次第に彼の祖先は表装の腕があがり、画も
描けるようになり、巧みに篆刻もできるようになった。こうして
表具師の徐さんはその技術をすべて継承してきたのだ。

边寿民は詩の書画が得意で、郑板桥*、金农*等のように有名で
特に芦と雁の絵に秀でていて、人は「边芦雁」といっていた。彼は
淮城の天妃宫の芦のほとりに住んでいて苇间居士(芦原の住人)と
呼ばれていた。徐家と边寿民のよしみを記念して、徐さんの祖先は
当時表装の店に「念芦斋」と名づけた。

「三割が書画、七割が表装」(三分书画七分裱)とよく言われる
が、この言葉から明らかに分かるのは、表装の、書画の作品に
おける重要性だ。表装の過程は複雑で細かく、拘らなければなら
ないことがすこぶる多く、表装師の総合的な素養については極めて
高いものを求められる。(裱画的程序复杂繁琐,讲究颇多,对裱画
师傅的综合素养要求极高。)徐家の表装には三つの規則があった、
それは画を失くさない、偽物を作らない、その書画の作者の評価に
より値を吊り上げたりせず、施した技術に応じて利益を得るとい
うものだった。(不丢画,不做伪,按工艺收钱,不因作者高低
调价。)
====略====
ある時、知らずに有名な画家徐渭の画が徐さんのところに持ち込ま
れた。表具師の徐さんは又、詩を書くのも巧く(亦善写意)、
とりわけ花の画には長けていた。彼は9割がた本物を模倣すること
ができた。その道に明るくない人には全く見分けがつかないほど
だ。徐さんは少し時間をかけてその画を見定める以外は、そのへん
の画と全く同じように表装した。淡々と工程に沿って作業し、表装
が終わると、彼は巻き軸の目立たないところに印を押した。その印
は極めて小さいが、徐による表装であることを明らかにし、その後
の論争を防ぐためのものだ。約束の日がくると、画の持ち主はお金
を渡し画を受け取って帰った。この事はこの業界の話題となって、
(成了行业里的段子)そのまま表装するなんて、ばか真面目だと
言われた。

画の表装には、初めて表装する場合(原裱)と、古いものを新しく
表装し直すという場合(揭裱)がある。揭裱は最も難しく、あえて
引き受ける人は非常に限られている。けれども揭裱は一部の高い
技術を持ちながら、善良でない人には偽物を作る機会を与えるとも
言える。一枚の画仙紙は何層にも剥がすことができ、もし表装を
手がけている人が欲に駆られたら、古い名高い画を何枚にも剥がし
て作ることができる。そうした画の色彩は原画に比べると薄いもの
が多く、表具師はまずは補修に手をつけて、その後に再び古く
見えるよう手を施す。一枚が何枚もの画となり、闇市へと転売
される。
====略====
淮城ではほとんどすべての揭裱は念芦斋に渡る。ただ揭裱という
項目だけでも表具師の徐さんの手を経るものは少なくとも千枚は
あった。けれども彼は画を一枚たりとも壊したことはなく、
これまで機会に乗じて偽物を作ったこともなかった。たとえ顾恺之
や展子虔の画を念芦斋に渡したとしても、画の持ち主は安心して
家に戻り、期日に受け取り行けば、予想外な事態になることなど
なかった。

ところが惜しいことには表具師の徐さんには後継者がいなかった。
息子はみんな国外に移住していた。晩年、徐さんは独りで暮らし、
賄いの人を雇い、客を選ばず(対外)表装の仕事を守り続けて
いた。彼は命ある限り先祖から受け継いだ技術を手放したくは
なかった。
====略====
そんなふうに平穏に人生を終えようと願っていた徐さん。
ところが革命解放後、偽物が横行し栄える書画の市場に目を
つけた、欲望に心奪われた人々は、故郷の徐さんを思い出すこと
となる。ある者は私的ルートを通じて、原画を手に入れ、徐さん
に揭裱にかこつけて偽物を作るよう頼んだ。ある者は直接画の
名前を告げて無理やり画を描くように頼んだ。

徐さんが従うわけはない。けれども、こうした類の人たちは暴力
をふるい、徐さんが自殺しようとするのを見ると残酷な言葉を
浴びせた。「言うことをききな。さもないと、どのみち海の
向こうのお前さんの息子が困ったことになるぞ。」
=====略====
耐えられなくなった徐さんは要求をのみ、いくつかの贋作を
作った。人々は高潔だった徐さんも晩年はどうかしてしまった
(糊涂)と罵った。

ほどなく、表具師の徐さんは大病を患いこの世を去り、その後
間もなく、贋作を転売した人達はお縄となった。淮城の人々は
しきりに驚き、ますます訳がわからなくなった。

警察が地方紙で事件のいきさつを漏らした。実は徐さんは
臨終前に警察に手紙を書いていた。そこに事情の経緯が明らか
にされていて、彼の作った偽物は掛け軸の画仙紙と画の間に
細長い印が押されているとあったのだ。「自由なく、贋作ある
のみ」(身不由己,赝品而已)という印だ。さらに手紙には
その犯人たちの似顔絵が加えてあった。それは表具師の徐さん
が印象に基づいて毛筆でさらっと描いたものだった。

念芦斋は今は観光スポットとなり、外地からの多く人や
ときに現地の人もよく訪れては記念としている。
(終わり)
*は画家。揚州八怪(ようしゅうはっかい):清朝乾隆期頃に
現れた揚州を代表する一群の(8名ではない)文人画家、に
含まれる。
今回は難しかったです。理由は表装という未知で奥深い領域
がテーマであり、尚且つ、次々と襲いかかる人名。しかも
1回しか出てこないものもあり。二文字あり、三文字あり。
飛ばすにも多すぎる。今回も、谢谢。陈老师!は〜、
なるほど、そういう意味ですか〜。と感心することしきり
でした。読み応えがありました。

難しさ★★★★☆ 面白さ★★★★★
今後の予定

2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
3月6日  長編『芳华』第3节   
author:多摩中, category:講読編, 13:54
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2019.2.6(水)講読クラス
2019年2月6日(水) 購読 陈老师  出席6名
『芳华』        严 歌苓 著
--第二节--
あれはもう30年あまり前になる。私たちの兵舎だった赤い建物に
はまだ夢があった。その多くの夢は皆美しく、恐れなど知らない
ものだった。

その赤い兵舎の2階と3階には長い回廊があって、回廊の上に
長々と庇が広がっていた。夕方に3階の回廊で練習曲をクラリ
ネットで吹いたり、バイオリンで弾いたりしながら、ふと目を
周りに移せば、階下にも庇のある回廊があり、更に目でその回廊を
たどれば、その果てには小練習室があった。その練習室を回り
こむと右側にはモチの木の小道があって、その小道で2つの大きな
バケツを天秤棒で担いでいる人をよく見かけた。その人が刘峰だ。
バケツは隣の路地に住む男の子のために担いでいた。その子は
17歳で、親はなく、路地に住む子どもたちの間では「カッコ」と
呼ばれていた。なぜなら彼が真っすぐ立つとその両脚が一対の
完璧なカッコになるからだ。子どもたちが言うには、サッカーを
するなら、その「カッコ」の両足をゴールにできるし、ボールを
蹴るとゴールの枠にボールが当たることはないのだと。カッコは
歩くときは腰かけに寄りかかる。先ずその腰かけを一歩前に運び、
次に自分が腰かけにもたれかかりながら一歩進むのだ。自分の
2本の脚と腰かけの4本の脚、合わせて6本の脚では2百メートル
の道のりを歩くのに15分かかる。毎日夕方には路地の水道水の
蛇口の鍵が開けられ水が売られる。路地の住民は皆、路地の入口
まで来て列をなして水を買うのだ。もしカッコが水を買って家に
戻るとしたら、6本の脚はさらに忙しくひどいことになる。バケツ
を動かし、腰かけを動かし、最後に自分のあの2本の「カッコ」の
脚を動かさなければならない。ブリキのバケツに半分水を入れても
家に着くころにはバケツの底に少し残っているくらいになって
しまう。カッコは水を汲めなければ話にならない。家の古いかまど
で沸かして、お湯を売るのが商売なのだ。刘峰は毎日私たちの庭で
水を2回天秤棒で担いでカッコに届けていた。指導者が問い正すと
刘峰は、私たち軍隊の水道水はいずれにせよ無料でしょう、と
言った。指導者はちょっと考えるとそのとおりだなと感じた。
軍隊は食べることから着るものまで人民から与えられている、
軍隊が少しのバケツの水を人民にあげるのだ、あげられないとでも
言うのだろうか?カッコのように独りぼっちで貧しい身障者の人民
ならなおさらだ。ある夏の終わりの夕方に、屋根のない走廊で
みんなが食後の腹ごなしでぼんやりしていると、手持ち無沙汰の
視線の中を刘峰が行ったり来たりしていた。天秤棒の2つの大きな
バケツは満杯なのに刘峰は一滴だってこぼさないで担ぐ事ができる
のだ。お腹いっぱい食べたトロンボーンの高强はゲップのように
低くこもったような音を鳴らしながら、モチの木の小道を軽やかに
去っていく刘峰の小さな姿をぼんやりと眺めてため息まじりに
言った。「はあ〜、なんだってあいつは疲れをしらないんだ?
なんて名前だっけ?」側にいたベースの曾大胜が言った。
「刘ーーー峰。」トロンボーンの高强はさっきのトロンボーンの
音のように長くひっぱって言った。「LiーuーFengーーー私は、
チッ!もう一人の雷又锋です、か。」

刘峰はこうしてそのあだ名、雷又锋を手にしたのだ。

私が初めて刘峰のことを近くから子細に観察したのは彼が私たちの
団に転属になってほどなくだった。その日の昼食がもうじき終わる
ころ、一人の人が木づちで床板を打ち付けていた。床板はどの
くらい古くなってたかって?こちらで力をいれてちょっと跳ねる
と、あちらの食卓の鉢がみんなひっくり返ったり、少なくとも
ガタガタするほどだ。木づちを打っていたのはまさに浮き上がって
話にならないような床板のところだ。その古い邸宅の90年以上前の
主人は軍閥で、住んでいたその赤い建物を兵舎として私たちに提供
した。20世紀の20年代は2階建てで、一人目と二人目のお妾さんが
住んでいた。30年代初めにさらに3人目のお妾さんを娶り、その
主人は2階の上にもう1階加えたのだ。東北地区では「満州事変」
が起こっていたが、西南地区はこれまで通りお妾さんなど
かこって、どんな危険や災難があろうと、成都ではみんな幸せを
享受し、苦労などなく過ごしていた。昔の事情を知っている人が
よく見れば、3階の赤い色は下の2階とわずかな違いがあった。
同じような赤いレンガを使って、赤い建物から一本の道が敷かれ、
上は青い瓦の庇で、両側には鉄色の木の柱があり、一軒の東屋
まで真っすぐにつながっていた。私たちの小練習室はその東屋の
土台の上に増築されたもので、そのため外観は変わっていて冬は
寒く夏は暑かった。再び入口の方へ進むと、私たちの食堂が
あった。昔はお妾さんたちの芝居小屋だったのだが、後に
抗日戦争になると成都は大後方となり、舞台は解体されてダンス
ホールに改造された。この内庭には馬牽き、女中、ねえやたちの
部屋があり、その造りはみな丁寧なものではなかった。解放軍が
平和裏に四川を開放した時にはすでにほとんど崩壊していた。
とり払われ、2列の平屋が建てられ女中やねえやの部屋に比べて
もさらに簡易なもので、その新しい住人は家族連れの文化宣伝工作
団の幹部だった。最も新しい建築が私たちの練習室だった。それは
大練習ホールと呼ばれ、60年代の建築で、一目でわかる正に当時の
スローガン、「多く、速く、立派に、無駄なく」の産物だった。
この日のお昼に、いつものように、私たちは一つ一つの小さな
テーブルを囲んで、空になったお椀やお皿を前に腹ごなしをして
いた。おしゃべりをして、男女の兵士たちが冗談を言ったり
からかったりしていて、話ていることなんて、どう聞いたって
いい、聞こえたままだと思っていいようなものだった。誰も刘峰が
やっていることなんかに感心はなかった。

なぜ私が刘峰のことが気になったかといえば、左右違った靴を
はいていたからだ。右には軍隊で支給された揃いの兵隊用の黒の
布靴をはいていて、その形は旧解放区のおばさんたち向けの
デザインだった。左にはいていたのは汚い白い柔らかい底の稽古
用シューズだった。後でわかったのだけれど、彼は左脚だけで
回転するのがうまくできなくて、構えるとすぐに傾いてしまった。
だから彼は暇さえあれば何回も回る練習をしていて稽古用シューズ
がいつも用意されていたという訳だ。木づちを打ち終わると、刘峰
は柔らかい底の靴で床板をちょっと踏んで、次に硬い底の靴で
激しく踏みつけ、最後に数回木づちで打つとやっと立ち上がる。
彼が真っ直ぐに立ち上がると、その身長への期待は裏切られること
になる。彼があんな風に座ったりしゃがんでいるとその背丈が結構
あるようだけれど、立ち上がると「そんなに高くないんだわ。欠点
は脚ね、脚が長くないわ。」と心の中でつぶやくことになる。
だけど、とんぼ返りに長い脚は邪魔だ。まさに刘峰はこのとんぼ
返りの上手さで劇団に選ばれたのだ。元の所属はある野戦軍の工兵
の兵営だった。刘峰のとんぼ返りは子供の頃にしこんだものだ。彼
の苦難に満ちた子供時代は县のある地方劇団で過ごされた。山東省
のある貧しい县は刘峰の話では「貧しすぎて着るものもないんだ
よ!」その地方劇団に入ってとんぼ返りを教えてもらわなければ、
彼もまた着るものもないような子供時代を過ごしただろう。

今後の予定
2月13日 お休み(変更です)
2月20日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
3月6日  長編『芳华』第三节
author:多摩中, category:講読編, 01:10
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2019.1.30(水)講読クラス
2019年1月30日(水) 購読 陈老师  出席6名
『管闲』  乔 迁著
『おっせかい』
(中国微型小说 排行榜P.138-140)
张明旺は町の産児計画主任(计生办主任)だ。町の産児計画の仕事
は目下これまでになく暇だ。農村でさえここのところ先を争って
息子や孫を欲しがるようなことはなくなった、だから张さんは楽を
している。多くの人から羨ましがられても张さんは嬉しくはなくて
かえってがっかりしていた。何故かって?张さんはじっとして
いられないタチ(闲不住的人)で、おっせかいが大好きなのだ。

おっせかいな人は大抵人に嫌われる(大多都不受人待见)。最近は
多くの人、多くの事が表だって知られることはなくなったので
おっせかいは嫌がられるのだ。おせっかいが大好きな张さんは
当然、人に嫌がられ町の人たちはみんな张さんのことをおっせかい
张さんと悪意を込めて呼んでいた。けれども张さんは気にしない
どころか、けなされたっていつも嬉しそうにニコニコと
(乐呵呵地)おっせかいをやいていた。

ある時のこと。露店の李丽华が店から8歩〜10歩のごみ箱に、歩き
もせず戸口からゴミ袋を投げた。シュートなんてちっとも上手く
ないから、ゴミ袋はまあまあバスケットボールのように飛んで
いったのに、入らずに見事に外に落っこちた。ちょうど张さんが
通りかかって目に留めると、ニコニコ顔で李丽华に言った。
「一度投げたって入りゃしないよ、ゴミ箱のところまで行って、
拾ってもう一回投げてちゃんと入れなよ。」李さんは白目を
剥いて一言言った。「あっちいってよ。」张さんは続けて
言った。「転がすなよ。ビー玉じゃあるまいし。投げなきゃ。
ほら投げろよ。」李さんはむっとして「あんた、この町の管理人
かい?あたし、投げないよ。あんたに何ができるっていうん
だい?」张さんはニコニコして言った。「あんたが投げない
なら、町の管理人に電話して罰してもらうさ。」言いながら携帯を
取り出し番号を打ち始めた。李さんは张さんなんか怖れていない
が、町の管理人は怖い、顔中で怒りながら歩いてきて、ゴミ袋を
拾いあげてプンプン怒りながらゴミ箱に投げ入れるとギロっと
张さんを睨んだ。张さんは李さんが睨んでいるのを知ってても
気にもとめず(视而不见)、鼻歌混じりに去っていった。

罵られたって、白い目で見られたって、张さんにとっては大した
ことではない、なぜならおせっかいが原因で頭をかち割られ血が
流れるような散々な目に遭った(头破血流)ことも経験済み
だからだ。一度など、町で2人の若者の喧嘩に遭遇したのだが、
2人は顔を互いに殴り合い、血も吹き出ていて、やじうまが大勢
取り囲んでいるのに、仲裁する人は誰もいなかった。张さんが
見ると、だめだ。このまま殴り合うと最悪死傷者がでるかも
しれない(闹不好会出人命的)。急いで人込みを押し分け二人の
間に飛んで入って両手で二人を引きはがし、しきりに叫んだ。
「よせ、もう殴るな。何かあるなら、ちゃんと話すことはできん
のか、何でけんかしているんだ?」2人の若者は頭に血が上って
いる真っ最中、そんな説教なんか聞くはずもない。张さんが引き
離しているのに、ずっとあっちとそっちから拳で殴り足で蹴って
いる。ちょっと考えてみてくださいな。こんなんじゃ、张さんが
間違って拳や蹴りをおみまいされる確率はすごく高いはずです
よね?ほどなく、张さんは文字通り頭を割られ血が流れ、
(头破血流)後で押し分けてきたやじうまは2人の若者が张さんを
殴ったと思っただろうな!张さんが見たらだめだ。この調子で
ずっとなぐりあっていては、でも2人の若者はなんでもなくて、
自分が先にぶっ倒れたのだった。张さんは大声で叫んだ。
「殴るな、わしは心臓病なんだ。早く人を呼んで助けてくれ。」
言いながら、急にバタンと地面に倒れ手で胸を押さえ、足を
ピンと突っ張った。これを見た若者は手を止め目を合わせると、
あっという間に逃げた。张さんが本当に心臓病で死ねば、自分
たちのせいになるのを恐れたのだ。2人が逃げたのを見て张さんは
起き上がり、顔の血を拭いながらやじうまに向かって言った。
「若いのが2人で殴りあっているのに、なんで止めないかね?」
皆は無視していた、ある人が小声でひとことひそひそ「なんだよ。
心臓病のふりなんかしやがって。」と言うとみんな散って
行った。张さんは怒りもせず足を引きずりながら去って行った。

大雨が一昼夜降り続いていた。次の日の朝には上がった。张さん
は目を開けると突然ひとつの問題を思い出した。町の小学校
の教室が崩れ落ちる危険があるのだった。その教室は2年前に
建てられた。今の町長が教育担当の副町長だった時に力をいれて
建てたものだ。建てられた後非常に多くの人が建物の質が悪いと
言っていたが言ったところで、誰もそれを突き止めない。結局
どうして粗悪なのか、どの程度まで粗悪なのか突き止める人は
いなかった。张さんは追及する権限はなかったけれど、度々
見に行っていた。2日前彼は教室に一筋の深い亀裂があるのを
発見した。手でちょっとほじくり、シャッシャッと土を落として
ちょっと見るとすぐ質が本当に悪いのが分かった。町長に言いに
行かなければければとまさにこの2日間彼は思っていたのだ!
この大雨では教室はおそらく耐えられないのだ。张さんはすぐに
起きて、町長の家へと駆けていった。町長に言うと、町長の
顔つきはにわかに不愉快な色になり、興味なさそうに言った。
「教室がだめなら校長が言いに来られるでしょ?あなたが関わる
必要はありませんよね?わたしが手抜き工事をしたとでも思って
おいでですかね!」张さんはこの町長の態度をちょっと見ただけで
町長は张さんの心配など気にかけるはずがないとわかり、いらだち
足を踏み鳴らし家へ戻った。戻って、少し考えると頑丈な鎖の錠前
を掴むと学校へと走って行った。

先生たちと子どもたちが泥水を踏みながら続々と登校してきた。
けれども入れなかった。张さんが正門を封鎖していたのだ。
校長が走って来て张さんに向かって言った。「张さん、何やって
んだ?」张さんは校長に目を向けて頑として言った。「校長、
教室にヒビいっているのを知らんわけじゃないだろ。一昼夜大雨
が降ったのにそれでも子どもたちを教室にいれるのか。」校長は
教室にヒビがあるのは知っていたが、崩れるというほどじゃない!
张さんの方へ一歩近づいて行った。「张さん、でたらめいわんで
いただきたい。さっさと門をあけて、子どもらを入れなさい。」
张さんは動こうとしない。校長はいらだって言った。「もし開け
ないなら、派出所に電話して来て開けてもらうぞ。」张さんは
首を横に振って言った。「わしは、開けん。校長、電話すれば
いい。」校長は本当に電話をした。十数分後、派出所所長が
やって来た。おまけに町長までついて来た。この時には子ども
たちはみんな登校していて、校門の所で押し合いへし合いし、
子どもを送ってきた父兄たちも张さんは余計なことをすると
文句を言い出していた。町長と派出所所長が张さんの目の前
まで来て、町長はどす黒い顔で言った。「門を開けなさい。」
派出所所長は大きなペンチを手にしていてちょっとちらつか
せた。それでも张さんは門の所に立って動かず、町長に目を
やり言った。「町長、本当に子どもたちを学校には入れること
などできない。やはりその前に誰かに一度教室を調べさせて
くれ、子どもたちはまだこんなに小さい…」町長は面倒くさ
そうに手を振って言った。「開けなさい。私が先に入って
見てこよう。それでいいだろう!」张さんは半信半疑で言った。
「本当か?」町長は言った「本当だ。さあ開けなさい!」
张さんはちょっとためらったが、錠をほどいた。町長は手を
伸ばし門を曳いて開けると子どもたちに言った。「入って
授業だ!」张さんは急いで手を伸ばして門を閉めにいったが
派出所所長はとっくに腕を掴んでいた。张さんは怒って、
大声で一喝し、拳骨を所長の顔におみまいし、殴られた所長は手を
緩めた。人々があっけにとられている間に张さんはすでに飛ぶ
ように教室の前に駆けていくと、狂ったように教室に突き
当たった。思いもよらぬことにドーンという音とともに教室が
本当に崩れた。

张さんは病院で横たわっていた。町のたくさんの人がお見舞いに
来ていた。とても多くの学生の父兄の目には涙が浮かんでいた。
张さんは目が覚めて、皆を見ると驚いて言った。「何で皆さん
来ているのですか?」皆は口を揃えて気持ちを込めて言った。
「张さん、私たちは迎えに来ました。一緒に戻ってまた
おっせかいをしてください。」
==おわり==
世直しおじさんのお話でした。巷でこういうおじさんをお見
かけしなくなりました。ご登場願いたいですが、注意されて
白目むいたりするかもしれません。ありゃ〜。

難しさ★☆☆☆☆  面白さ★★☆☆☆
今後の予定
2月6日  長編『芳华』第2节
2月13日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
author:多摩中, category:講読編, 17:39
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2019.1.16(水)講読クラス
2019年1月16日(水) 購読 陈老师  出席7名
『美女代孕』  殷 贤华著
『美女代理出産』
(中国微型小说 排行榜P.135-137)
菊花と二狗は幼馴染で仲良くてまるで一人の人のようだった
(好得像一个人)。菊花は大人になると、村一番の美しい娘と
なり、縁談には事欠かなかった。ところが、菊花は両親の反対を
押し切って無理やり貧しくてすっからかんの二狗と結婚した。
(穷得叮当响的二狗=鍋しかなくてカラカラと音がなるほど
貧しいという表現)両親は死ぬほど怒った。
==
二狗は菊花の深い思いに感動し、自分が出世し、菊花に幸せな
生活を送らせるんだ、と誓って結婚後ほどなく出稼ぎに行った。
菊花は舅姑の世話をし、自分の親のことも面倒をみなければ
ならなくて、とても苦労した。菊花が将来の幸せを夢見ていた時
悪い知らせが届いた。夫が交通事故に遭いしかも運転手が逃げた
のだ。病院の緊急治療が間に合って、命はとりとめたが、手足が
麻痺してしまった。おそらく人生の残りはベッドの上か車いすに
乗って過ごすしかしかなくなった。菊花は電話を切った後
気を失った。
==
菊花は戻って来た二狗を舅姑や両親に託して町に出稼ぎに行った。
町の求人市場には大学生が溢れていて、やっと高校を出た菊花に
とって仕事探しは難しかった。運よく職を得ても月給は1〜2千
元、これでは二狗の一週間の治療費をやっと賄えるだけだ、菊花
はほとんど絶望した。菊花が涙を流しながら呆然と町を歩いて
いると、突然電柱にある広告が目にとまった。「高額、求む!
美女代理出産」。「面接合格後手付け金10万先払い。代理出産
成功後さらに100万の高額報酬あり。」この文句に菊花の目は
大きく見開いた。以前ならこうした電柱の広告なんて信じ
なかった。すべて詐欺の手口だと分かっていたし、たとえ広告が
事実だとしても、身を売ってお金にするような徳を捨て自分を
貶めることは決してしなかった。けれども今、菊花は万策尽き、
歯を食いしばるしかない。ちょっと試してみようと思い、菊花は
広告にあった連絡先に電話した。二狗を救うためなら、何だって
したい、何を犠牲にしても惜しくはなかった。
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郊外の立派な別荘で菊花は広告主の王总と夫人に会った。二人は
菊花の清純さと美貌に満足した。王总は疑いの目を向ける菊花に
説明した。「妻が不妊症で人工授精をしようと思ったが、不器量な
子どもの場合育てる自信がなくて、美女を選んでの代理出産を
決めたのです。決して詐欺ではありません。」
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菊花の検診が済んだ後、約束どおり手付けが払われた。大きな
10束の現金を目の当たりした菊花はぼーっとした。それから菊花は
王总と各地を観光し、山海の珍味を食べ、高価な洋服を着て、豪華
な家に暮らした。夜になれば王总はとても激しく、優しく、菊花を
いたわり、あの手この手は絶え間なくて、菊花の高まりは止むこと
はなかった。こんな風に二狗は菊花に喜びを与えることは
できない。王总ともつれ合った菊花は興奮した後、二狗を思い出し
慚愧の念に酷く苦しんだ…
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一日一日時は過ぎ、王总と菊花の2人の目には複雑な思いが宿る
ようになった。菊花は豪華な生活にすっかりなじみ、王总の生活
もまた菊花によって生気が満ちていた。菊花はすでに王总の子を
妊娠していたが、王总は夫人にはまだ知らせてはいなかった。
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ある夜、菊花は王总に告げる。「一つお願いがあります。私と
夫は小さいころからずっと一緒に大きくなったのよ。だから彼
への情は深いの。夫は交通事故で手足が麻痺しているけれど、
医者によれば大きな病院にいって、お金さえあれば治せる
らしいの。心からの私の願いをかなえてもらえないかしら?」
王总は遠くをみるような表情になって、ちょっと考えると
「君って本当に思いやりがあって情が深いね。感動したよ。
わかったよ。そうしよう。でも僕も君にあるお願いがあるんだ。
」ちょっと間をおいてから王总は続けた。「妻のことなんだけど、
不妊症だけでなくて、重い神経衰弱と不眠症もあってね、
睡眠薬に頼って眠っているんだ。時間があったら、妻の相手を
して、世話をしてくれないか?妻とは苦楽を共にしてきて、僕が
一番大変だった時も妻は僕を見捨てなかった。僕の成功は半分
彼女のおかげなんだよ。」
菊花は遠くを見るような表情になって、ちょっと考えると言った。
「あなたってなんていい人で情が深いの。わたし、感動したわ。
そうするわね。」
王总と菊花の2人の目のなかには複雑な何かが生まれていた。
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ほどなく、二狗は大きな病院に送られたが、意外な結果となり、
手術台の上で死んでしまった。菊花は知らなかった。執刀医は
王总からたくさんの袖の下をもらっていたのだ。ほとんど
同じころ、王夫人は寝ている間に死んでしまった。王总もまた
知らなかった。菊花が王夫人の飲み物に過量の睡眠薬をいれて
いたとは……。
==おわり==
生まれた子供が誰に似ちゃったのか不細工でした。
生まれた子供がどういうわけか二狗そっくりでした。
といったオチを思わず考えてしまいました。
難しさ★☆☆☆☆  面白さ★☆☆☆☆
今後の予定
1月30日 短編『管闲』p138-140
2月6日  長編『芳华』第2节
2月13日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
author:多摩中, category:講読編, 22:53
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