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2021.4.1Wednesday>>講読編,

20204月1日(水)講読【】出席6名(聴講3名)

2015中国微型小 排行榜P.246-248)

秀娟

 

家湾では、秀娟の芋万頭といえば本場ものだ。秀娟はきれいに洗った芋を鍋に入れて、よく茹でて、掬い取って、竹籠にほおりこんで冷まし、皮をむいて、瀬戸の鉢に置いて、潰し、小麦粉、木犀の粉、生姜・ニンニク・胡椒を混ぜて、少しばかりの塩を加え、こねて楕円形に丸め、鍋に入れる。普通はひと鍋で20個入る。鍋にふたをして、火をつける。これらは、普通の人は一度教えればすぐわかる。けれども、秘訣はここにはない、火加減にある。とろ火から強火にして、再び強火にしてとろ火にする、これは火を止めて万頭を取り出すまでずっとだ。こうした過程の火加減には、ちょうど良い按排が欠かせない。秀娟はこのちょうどよい按排をしっかり身につけていて、できあがった芋万頭は甘くておいしくて、歯ざわりがよくて柔らかくて、とてもおいしい。

家湾:地名。湾は辺鄙な所の意。東京湾などの湾ではない。】

家湾はさつま芋の産地だが、一食に芋万頭を食べられる人は決して多くはない。芋万頭の主な原料は芋だけれど、つまりさらには小麦粉なんかを必要とするのだ。小さな子どもなんかが泣いたりわめいたりして芋万頭を欲しがり、急かされた大人が芋を懐にしまって秀娟の家にやってきては、交換する。しばしば、こうした時に秀娟は言うのだった。子どもが食べたいなら持って行ったらいいよ、芋なんかを持ってくるなんてさ。来た人が帰るときには、芋を下げたままだった。秀娟は同郷のみんなの状況をよくわかっていた。たった一つの芋が彼ら一家の一日の食扶ちになりえるということを。このように考えて、芋を懐に入れてやってくるそうした人達をまた見かけると、秀娟は芋万頭を手にして、こっそり脱け出した。その人が不満気に家に戻ってから、子どもの口が芋万頭でふさがれているのをみると、涙の粒が湧きあがった。

=その日の夜、秀娟の亭主が月の光の中、戻って来た。亭主は家に入ると、背負ってきた芋を下ろして、言った。遊撃隊の新しい任務だ、明日出動だ。秀娟は亭主を見ながら、涙が目の中にいっぱいになった。亭主が言った。私が行っても、お前はいつもどおり、芋万頭をがんばって作るんだぞ。秀娟は頷いた。亭主は芋万頭を一つ手にして、一口かじって言った。うまいな。言うと、亭主はまた一つ手にして、向きを変えると、玄関から出て行った。月の光をあびた亭主の後ろ姿が見えなくなると、秀娟はやっと家に戻った。

=その後、秀娟の芋万頭は評判になった。湾のという金持ちが耳にして、人をよこして、秀娟に彼の家に行って、そこで作るように言った。秀娟は答えて言った。作るのはできます、でも彼の家には行きません。さんはちょっと考えると、秀娟の言葉を承知した。さんがいれば、このようなお金のある人が原料を提供するので、秀娟は芋万頭の調味料でまた少し改良できた。時が経ち、秀娟の作る芋万頭は家湾に住む人々のあこがれの品となった。秀娟が、それでも必ず考えていたのは、湾のお年寄りや子どもに少しでも送る方法だった。

=ある日、日本軍の一隊が家湾に進軍してきた。湾の人達は皆山に行って身を隠した。秀娟は逃げなかった。日本軍の小隊長は大股で秀娟の前にやって来て、怒号を浴びせた。:きさま、死にたいのか?秀娟はわからないふりをして、言った。どうぞ、食べて、食べて。言い終わると、秀娟は蓋を開けて、芋万頭を一つ取り出して日本軍の小隊長の手に渡した。甘い香りが鼻をついた。

=日本軍の小隊長はよだれを垂らしたが、食べなかった。彼は芋万頭を後ろの兵士に渡した。その兵士は食べると、パクパクと音を立てながら、続けざまに、ほめて言った:すごく、うまい、うまい。言い終わると、兵士はまたいくつか手にとって、ガツガツと貪り始めた。

=ひとしきり時が経って、その兵士に異常がないのを見て、日本軍の小隊長も一つ手に取って、一口頬張るとすぐに、続けざまに賞賛の声をあげた:すごくうまい、すごくうまいな……。このあと、秀娟を伴って日本軍の軍営に行った。そこで、秀娟は日本軍の兵士たちに芋万頭を作って食べさせた。

=逃げ出した同郷のみんなが戻って来た。聞けば、秀娟が芋万頭を日本軍のために作っているというが、信じなかった。その後、本当のことだとはっきりすると、一人一人恨み、しきりに歯がゆい思いをしていた。秀娟の芋万頭を食べていた老人や子どもたちは秀娟のあのむさくるしい家を通りかかると、吐き気がして、さらに罵った、あのどうしようもない女め……【×牙根只痒痒→〇牙根直痒痒

=ある人が秀娟の夫に言いつけようと遊撃隊を探しに行った。多くの人は強い口調で言った、あの女を見つけたら、皮をはいでやる!こうしたことを秀娟はすべてわかっていた。

=けれども、秀娟は依然として日本軍に芋万頭を作っていた。その上、ちょっと暇な時など、日本軍たちに冗談を言ったり、からかって日本軍達が楽しんだりしていた。とりわけ日本軍のあの小隊長は秀娟の芋万頭を食べさせられて、ぷくぷく太って、心から嬉しそうだった。

=その日、日本軍は知らせを手に入れた。日が暮れた後出発し、家湾の遊撃隊をせん滅する準備をせよと。秀娟は芋万頭を上手に作った後、芋万頭をくわえながら、日本軍の口ぶりをまねながら、言った、すごくうまい、すごくうまい……。

=日本軍はいっせいに笑ったり、食べたりした。その後、出発しようとしたとき、ある人がお腹を押さえながら、痛いと叫び始めた。続いて、更に多くの日本軍が地面に転がった。日本軍の小隊長のお腹も痛くなってきて、彼は軍刀をぬいて、秀娟にむかって、迫って来た。

秀娟はゲラゲラ笑い出した、まさに何かを言おうとした時、お腹も痛くなってきた。

痛みながらも、秀娟はさらにかまわず、少しの言葉をしぼりだした。

 このわたしの命をかけたのさ!かいがあった!

姑奶奶:自分のことを偉そうに言っている】

家湾の遊撃隊が駆けつけてきた。秀娟の亭主は秀娟を胸にだいて、泣きながら叫んだ:、お前はなんて馬鹿なことを、あの鼠殺しを……

 

面白さ★★☆☆☆

難しさ★★☆☆☆

 

今後の授業 :これから毎週Zoomでの授業となります。次回は249頁の「小朵出走」。 先生が今週と来週の短編を朗読し、メールで送ってくださいました。 いつもご丁寧な対応をありがとうございます。Zoom導入にご尽力下さった方々、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

author:多摩中, category:講読編, 18:28
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4月1日web授業を始めます。

4月1日 13時から

web授業を開始します。

Zoomを使います。

詳細は、メールで、発信してます。

 

author:多摩中, category:講読編, 12:44
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2020.2.26Wednesday>>講読編,

2020年2月26日(水) 講読【陈老师】 出席7名(聴講3名) 

 

(2015中国微型小说 排行榜P.243-245)

『明天要开民主生活会』    蒋 先平 著

『明日は党員反省大会だ!!』

 

=副局長の王は執務室に午後中閉じこもっていた。原稿の上の非常に大きな字は数文字しか書かれていない。ああ、最高責任者・局長の何らかの欠点を探すのか。王副局長は困ってしきりにため息をついた。明日の午前、局では指導者グループの党員反省大会が開かれる。これまで党員反省大会はただ形式だけのものだった。みんなが自己批判をする。基本的には他人を批判するのではなく、さらに責任者である局長を批判しないのは言うまでもなかった。【走形式:表面だけを取り繕う・お茶を濁す】

=聞くところによれば、今回の党員反省大会を上級機関は重視していて、要求されているレベルは比較的高く、必ず本当の話を論じ、事実を言わなければならない。単に最高責任者・局長が副責任者・副局長の粗を探さなければならないだけではなく、グループの構成員一人一人が局長の欠点を指摘しなければならない。さらに上級組織人事部門は人を派遣して会議に列席させて、わざわざ監督視察をさせるのだそうだ。【上面:上級機関・上司 一把手:ここは最高責任者(局長のこと)挑毛病:粗を探す】

=実際には局の最高責任者である局長の欠点は多い。横暴で権力を独り占めし、利己主義だ。こうしたことは指導者グループの構成員は言うまでもなく、一般の労働者でさえはっきりと分かっている。けれども王副局長は党員反省大会でこうしたことを言えるか?ずばずばと否定する言葉を言うのか?前人の失敗は後人の戒めだ、絶対に言えない!【个不字:ノーと言う 前车之鉴:前の人の失敗は後の人の戒めとなる由来漢書・賈誼伝

=忘れもしない、副局長に抜擢されたばかりのあの年、初めて党員反省大会に参加し、思いあがった王副局長は当時の局長に2つの意見をバカ真面目に呈上してしまった。大会では、局長は心を込めて言った。王副局長、良い意見をよくぞ言ってくれた、私は必ずや真摯に改めよう。ところが、誰も知らないがその後、王副局長は局長が至る所で彼をいじめているのをはっきりと感じた、王副局長は心の内でわかっていた、局長は大会で意見した彼に対して思うところがあったんだと。【不知不高地厚不知死活:思いあがって、何もわからずに、 有想法了:自分の考えを持っていた。→遠まわしに不満を表現している。】

=ずっと後になって局長が退職し、王副局長の日々はやっとのこと、少しずつ好転していった。今の局長は元の局長に比べて、なかなか腹をわらない人物で、ごく少数の反対意見など聞き入れない。明日は党員反省大会を開催する予定だ、本気で取り組まなければならない、それで、王副局長は頭痛に見舞われていたのだ。本当の話をすれば、これは断じてよくない、本当の話をしない、とか新鮮味のないことを言う、例えば指導者の何某かの仕事が厳しすぎるとか、革命のお身体に気を遣っていないとか、人を批判するのが少なすぎて、生温いとか、こうした批判は満足な標準に達することなど決してできないんだそうだ。彼ら、監督視察班の監督視察人員がその場にいるんだしな。【城府更深:腹をなかなかわらない 老生常谈:老いの繰り言→聞き飽きた話 过关:標準に達する

=どのくらい言えばいい?痛くもかゆくもないんじゃだめだが、指導者の天子の顔に衝撃を与えるような意見なら、また、局長が私に仕打ちをするのが恐ろしい。王副局長は困って午後中少しも書けなかった、煙草はまるまるひと箱空いてしまった。

小鞋穿:小さな靴を履かされる→仕打ちをされる、意地悪される】

=夜になって、家に戻ると、王副局長はまた長い間閉じこもって、ついに指導者の欠点を探し出した。:第一は局長が下層部への指導実践時間が少なく、下層部の人間と一丸となることがない。第二には局長の執務室の面積が大きすぎる、洋間があって、トイレがあって、重厚で標準を超えたものだということだった。

=王副局長はわざわざ夫人を呼んで言った、ちょっと見てくれ、私が組織の局長に提示する、この二つの欠点はどうだろうか。王副局長は妻の傍らで説明して言った。今、上級機関は指導者幹部に大いに下層部と交流するように求めているんだよ。民衆から遊離するというこうした欠点は今すべての最高責任者に内在する共通問題だな。そして、省の同期の奴がこういうのを聞いたんだ。ある程度の頃合いになると指導者幹部は執務室を直すのだけどその広さが度を越えているってね。これは客観的な現象だし、すべての指導者幹部に常に見られる欠点だってね。

=政府に勤めている副局長夫人はちょっと見ると言った、あなたのこの2つの欠点はホントにそれっぽいわね。副局長夫人はちょっと考えて王副局長に言った。こうしましょうよ。あなた今すぐに車で、局長の家に行って、直にこの2点の意見を局長にお見せして、ご意見をちょっといただくのよ。もし局長が同意したら、あなた、明日の党員反省大会で慎重そのものって感じで発言するのよ。もし局長が穏やかならない感じなら、このことはなかったことにするのよ。【像回事:いかにももっともらしい 这么回事:そういうこと →像这么回事:いかにもそれっぽい 郑重其事:慎重そのもので】

=もし局長がこの2つの欠点を許可しなかったら、どうすりゃいいんだ?王局長は尋ねた。あなた本当にバカね、面と向かってちょっと局長に聞けないの?言えばいいのよ、私は大会で何を言えばよろしいでしょうかってね。副局長夫人は王副局長を一瞥した。 正に!その通り!やっぱり妻は賢いな。

=王副局長はきちんと記した2点の意見を携えて、車を飛ばして局長の家に行った。局長の家に着いた王副局長は発見した。党・民衆の担当銭書記と李副局長、氏、さらには労働組合の主席、指導者グループの顔ぶれが局長の家に勢ぞろいしていた。

=王さんは分かった、メンバーはみんな明日の党員反省大会での局長に対する意見を求めに局長の家に来たのだと。局長夫人は王副局長に一杯のお茶を差し出して言った。主人は晩御飯を済ませたら、戻ります、皆さん、主人を2時間以上も待っていらっしゃるのですけれど、まだ戻らないのですの、と。王副局長とみんなはさらに一時間以上待ったが局長は戻らない。何しに行っているのかしら?こんなに長い時間戻らないなんて?言いながら局長夫人は局長の携帯に電話をかけた。あなたどこにいるの?

長の家のところだよ。明日の午後、政府の指導者幹部の党員反省大会が召集されるから、長に私の明日の発言の原稿が妥当かどうかちょっと書面で指示を頂くんだ。今夜、全ての局長クラスが残らずみんな来ているんだよ、私達はみんなの長の家の下で待っているんだ。電話の向こうから局長のイライラした声が伝わって来た。

 

媳妇:何も説明がない場合は息子の嫁ではなく奥さんを指す。】

 

王副局長が指示を仰ぐのは2名、まずは奥さんそして局長。安全第一です。難しかったです〜。落ちが見事!

 

面白さ★★★★☆

難しさ★★★★☆

 

今後の授業

コロナウィルス感染予防のため3月7日まで多摩中国語講習会はお休みです。

 

 

author:多摩中, category:講読編, 11:15
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2020.2.12Wednesday>>講読編,

2020212日(水)講読【】出席7名(聴講3名)

2015中国微型小 排行榜P.240-242)

』    赵 春亮

門の守り神

 

=私が頭をもたげて、ガラス窓を通して外を見ると、竜巻のようなあの人影が既に指導者の執務室の入口に到達していた。私が反応できた時には、ダンダンダンとドアを叩く音は広々と奥深くひっそりした廊下に響いていた。この音は私に言わせれば晴れた日に響く雷鳴に劣らないほどで、さらには庁の前で聞こえる冤罪を訴える太鼓の響きのようだった。多くのことを考えるゆとりもなく、私と刚子は急いで部屋にかけつけて、すばやく彼女のそばに行った。

探视:見舞う→見る :量詞・丸いものに使う、ここは背中を丸めている人影に使用  鸣冤擂鼓:冤罪を訴える太鼓の響き】

=指導者が部屋にいらっしゃいます、お邪魔はできません。ご退出ください!私はあえて大声はあげなかった。なぜなら、一つ一つの扉と窓の後ろには、そばだてられた耳とのぞき見する目が存在していることを知っていたからだ。

=なんでわたしを追い出すの?わたしは指導者に会わなきゃならないのよ。うろたえたから、あるいは興奮したからか分からないが、私ははっきりと彼女の皺だらけの顔に細かな汗の玉がびっしりと浮き上がっているのを見た。その時、続々と人が押し寄せて来た。先頭で飛んできたのは私の同僚だ。彼らは行動によって最も適切な表現を生みだし、すぐに刚子は肩を並べて一列に立って、しっかりと突破できないバリケードを作った。すぐに続いたのは、眼鏡をかけた指導者の秘書だった。彼は別の扉の隙間から顔を出して様子を伺い、周りをちょっと見ると、すぐに素早く指導者の扉の前に立ち、臨時にもう一つの扉を担当した。私は続いてすぐに、さらに周囲の部屋の中でガサゴソとした音がするのを聞いた。机や椅子をひっきりなしに動かしてぶつかるような音がし、窓のカーテンを引く音やそっと扉を開ける音もした。……ひっそりとした空間にたちまちひとつの騒動が起こったのだった。

窗帘线轴:カーテンの糸巻き→カーテンの滑車・シャーと閉める音がした】

=一幕の劇のように、見物人が増えれば増えるほど、彼女の顔色はどんどん大げさになって、声はどんどん高くなって、動作はどんどん勝手放題になった。私は指導者に会わきゃならないのよ、あなたたちわたしの邪魔をしないでよ。彼女は叫びつつ、引きながら動いて、指導者の執務室の扉に向かって飛びかかって行った。

扯动着身子:体を人から制止されながらも引いて動いている様子】

=私は最前列でぶつかって、がっちりした立派な身体で、彼女をしっかりとくい止めゆっくりと廊下の出口の方向に向かって移動した。殴った!殴ったわね!警備員が殴った!彼女は声を涸らし力を振り絞って大声で叫び始めた。同時に、硬く握りしめた拳で雨あられのように私をぶった。私は両手を掲げて、皆に向けて私が殴り返していないことを示しながらも、同時に足を出すことは決して止めず、彼女は私の動きにともなって一歩一歩後ろの方へ撤退せざるを得なかった。

=指導者の執務室の扉が開いた。秘書はまずは少し唖然としたが、すぐに身をよけてゴールキーパーの位置を開けた。その時全ての音がふいに止んだ。私はちらっと指導者の執務室の中のきれいな陳列品を見た。さらに何人か背広と革靴の男たちがいて、両手をたらしてソファーの前にきちんと立ち、好奇心でわずかに身体を傾けて外を覗いていた。「何事だ?」指導者は尋ねた。

让出〜:〜を開けてやる

=あの女の夫の人民教員から正規教員への転向問題がまだ当然あるはずだと、何回もやって来て、陳情局で受け付たんですが。指導者秘書は身体をこごめながら言った。来たからには私の部屋に入って言いなさい。指導者は身体を斜めにし、続いて私達にむかって退出するよう手を振った。彼女はちょっとぼうっとしたが、すぐさま私の身体から抜け出して、振り乱した髪の毛を束ねると、指導者につき従って部屋に入って行った。扉は直ちにまた閉まった。

民师转正:田舎などで資格がなく教師を務めた人が正規の教員となること】

=当直室へ戻ると、刚子は険しい顔になって、しばらく話さなかった。少しして刚子はやっと話をした。あの人はつまるところ、身を隠す術に長けているか地を這うように飛ぶ能力でもあるのか?彼女の行動はなんで君の目をだましおおせたんだ?この点は確かだな、彼女は既に俺達をとても長い間監視していた。君がうつむいて水をのんだ瞬間に、彼女はまさに素早くいい場所を占領したってわけだ。刚子は悔しがって、締めくくって言った。ちょっと考えてみてくれよ、俺達二人は監視のプロだぜ、なのに全く監視されているのを察知できなかったなんて、ちょっと滑稽で皮肉なもんじゃないか?

遁地di神术:忍者でいうところの土遁の術といったところか?占领了高地:高いところを占領する→ここでは指導者の部屋まで行き着いたことを表現】

=私は刚子が心配しているのが見てとれた。実際私も緊張していた。私達はふたりとも臨時雇いで、指導者の秘書の管理下に置かれていて、ふたりとも警備の階級章と警備の目印のない制服を身にまとっていて、ああした指導者の部屋へ直接陳情する人の突入を阻むことを専門にしていた。指導者は静かな空間を必要とし、私達は仕事を必要としている。この仕事を私と刚子は二人とも大事に思っていた。あわよくば、この仕事で嫁を釣れることを願っていた。

借它钓个媳妇:それ(这份工作)の力をかりて、嫁を釣る】

=しばらくすると、手に手に鞄をもって慌ただしく歩いて来た人たちが絶え間なく指導者の部屋へと入って行った。私は彼らが皆各部門のトップなんだろうと推測した。間もなく、彼らは彼女をどっと取り囲んで出てきた。指導者の秘書は私達の宿直室の入口で足を止め、彼らが降りて行って、遠くへ行くのを見ると、ようやく宿直室へ突き進んで来た。

=秘書は言った。私は君たちに注意を与えなければならない。私と刚子ははい、と言った。秘書はさらに言った、指導者は重要な仕事を討議されていて、こんな騒ぎは指導者の決済に影響する、ひいては全市の発展に影響する。私と刚子ははい、と言った。

=運よく、指導者は怒ってはいらっしゃらなかったし、すぐに陳情の問題を解決された。指導者の仕事処理の効率は高くていらっしゃる。けれども、すべての陳情者に必ず直接指導者を訪問させるなんてできるか?あなた方の責務はまともに実行しされなかったな。こうだ、二人ともそれぞれの百元の賃金を罰として差し押さえる、憶えておくように。秘書は一瞬黙ると、続いて声をあげて言った。これで最後だからな、でないと、すぐに解雇だぞ!はい、私と刚子は言った。

=びっくりさせられたな、俺は俺らを解雇するのだろうと思ったよ。指導者の秘書がいなくなると、刚子は言った。私は言った。悪かったな刚子、事件が起きたのは私の担当時間で、責任は私にある、仕事が終わったら、君に鍋をおごるよ。

=なんでだ?刚子はこわい顔をして言った。メシは食いたいな、でも割り勘だぞ。俺たちみんな一緒にさ、冷菜の盛り合わせ、最初に肉、精進三品。君がおごるとか俺がおごるとかなんて、水臭い。

凉拼:冷菜盛り合わせ 头肉 初めに肉 素三样:野菜三種】

=私は刚子に、自分の罪を告白したかった、たった今陳情に来たあの女の人は身を隠す術ができるわけでも地を這うように飛ぶ能力があるわけでもない、彼女は私がわざと入ってくるのをほっといたんだ。私はさらに刚子に告白したかった、あの女の人は私の母親で陳情しているのは父の長年の人民教員の正規教員への転向問題で、すでに長い年月をかけていて、今なお結果が出ていなくて、母は危険を顧みずにやって来て……けれども私はなにも言えなかった。見れば、刚子はすでに宿直室の入口に立って、虎視眈々と階段口の一人一人通行人を監視していたのだ。

 

=私は急いで刚子と一緒に立った。私達二人は非常に屈強で、眼光鋭く、まるで一対の門の守り神のようだった。

 

面白さ★★★☆☆  難しさ★★★★☆

 

今後の授業  2月26日   3月4・11・25日

author:多摩中, category:講読編, 15:28
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2020.2.5Wednesday>>講読編,

2020年2月5日(水)講読【陈老师】出席7名(聴講3名)

(2015中国微型小说 排行榜P.236-239)

『墙上的猪』    张 正 著

『塀に描かれた豚』

 

=王二椤の家は新しく改装したのだが、その山型の塀の上になんと一頭の豚が描かれた!この豚の絵はほんとうになんてことはない感じで、2つの丸があって、その外には小さなパーツがあるだけだ。大きな丸は楕円で、豚の身体を表し、小さな丸は完全な丸にもなっていなくて、きっと豚の頭に違いない。それで小さなパーツはといえば、豚の大きな耳や長い口や短い脚と小さな足先などにすぎない。

=豚は木炭で描かれているようで、真っ黒で、浅黄色の塀の塗料の上では特に目だった。この絵は全体としては豚のように見えるのだが、ちょっと見ただけだと、それは犬や猫には見えることはなく、ようやく字を読めるようになった小学生が簡単に描いた絵のようだった。誰がやったんだ?

=王二椤一家はこの農民集中居住地区に引っ越してきて、一年と経っていない、どんな人にも失礼なことなどしていない、誰がこんなことで侮辱するのか、これが、王二椤一家の小さな別荘が豚小屋で、豚が住んでいる、と罵ったものであるのは明らかなんじゃないのか?思いもよらないことだ。この地区に引っ越して来て、町の人のようにようやく数日暮らしただけで、農村の人達がまるで町の人のように人を罵ることができるようになったなんて。町の人は塀に落書きすることがすごく好きで、下劣な言葉で下劣な人を罵り、下劣な行いをする、最もよく見かけるのは、多くの路地の奥や塀の角に描かれているこんな言葉や絵だ。:ここでの小用は♯!

=「♯」は一匹の大きな亀の絵の代わりだ。これは中国人なら皆知っている、人を罵る悪辣な言葉だ。ごらんよ。今や農民集中居住地区に引っ越して来て、足の泥もまだきれいになっていないのに、農村の人達は人を罵ることにおいては町の人と同じレベルとなってしまった。運よく「ここに住む奴は♯」とは書かれなかった、そう書かれていたら、王二椤を怒らせることになるんじゃないのか?

=王二椤は毎日自分の新居を出入りしていて、塀のこの絵を見ないはずはない、けれども彼は見ても怒らないし、悩まないし、ことさら取り上げる様子もない。「おまえ、おまえんちの塀、見たか、誰が描いたんだ?」近所の人が親切心で王二椤に注意した。「なんでもないよ。」王二椤は大声で答え、ちらっとも見ない。「おおかた、どこかのガキのいたずらだな、困ったもんだな、塀はまだ新しいのにな。」「新しいものだって古くなるさ。」王二椤はちょっと止まって、広くて大きな廊下で座って居眠りをしている老いた父親を指さした、「人間だって年をとる、昨日はまだトントンと走っていてたのに何日か過ぎて、一旦だめだと言い出したら、もうだめだよ。」「お前さんのおやじさんにいろんなところをむやみに走らせておかないで、入口に座らせて、家を見張らせて、新しい家なんだから、誰かに落書きなんかさせるなよ。」

=「おやじがまだ家を見守る、家はおやじを守らなくていい、それゃいいや!」王二椤は口を開いて笑った。彼の老いた父親は去年、前に住んでいた村で八十のお祝いをして、ようやく家をたたんで、引っ越すことに同意したのだった。

=王二椤は言うことなど何もないが、镇の指導者にはあった。この農民集中居住地区は镇の仕事の中では大いなる注目の的で、数日ごとに县の指導者が人を連れて見学に来る。その日、镇の書記は县の指導者をともなって見学にやってきて、辿る道一面の真新しい塀、樹木が茂る緑化、を彼が紹介して、満面に笑みをたたえて、王二椤の家のところに歩いてやって来ると、彼は眉間にしわをよせた。書記はゆっくりと歩み、背後の村の建設担当の副镇長に向かって彼の意図を示し、前に進み出て、低い声で耳打ちして言った。:

=「誰かにすぐ処理させろ、落書きしおって、みっともない!」まだまだたくさんの文句を書記は言いたかった、例えば事前に見学の道順に沿って一通り検査し、注意深く仕事をし、このような玉にきずなものは排除しなければならなかったと。しかし、县の指導者の前だったので彼は怒り出したりはしなかった。县の指導者は王二椤の塀の豚を見ると、ちょっと笑って、少しユーモアのある感じでいった。「新しい地区でも、豚を飼うようになった!」

=書記は慌てて自己批判をして言った;「我々の事後管理はまだ途上でありまして……」县の指導者は厳しい顔で言った:「都市と農村は統一的な発展を計画されておる。農民居住条件は改善された、しかし、生活習慣はまだ適切に改められる必要があり、文明の程度はもう一歩進んで高められなければならんな…」

=テレビの記者の撮影した場面はぴったりと县の大指導者に焦点を当てていた。その日の夜、その小さな地区の多くの住民の家では、テレビでこの县の指導者が発表した談話と王二椤家の塀のあの豚も見ていた。

=次の日、镇の村の建設所のある副所長が2名の町の管理員を連れて、王二椤家の塀の所へやって来た。彼らは手に持っていた塗料のバケツを置くと、シリンダーロールを使って塀の豚を塗りつぶし始めた。王二椤ちょうど入口にしゃがんで孫をあやしていて、彼は孫を下ろすと、小走りで出てきて、制止して言った。「あなた方、これは、何をされるのですか?」

=新しい地区への移動という仕事が、ようやく始動した時、村の建設所の副所長は村の組織の幹部をつれて家にやってきて、王二椤親子の説得工作をした。まだ王二椤を覚えていて、彼は王二椤に冗談で言った。「王さんや、見てみなさい、家にいても門を守ることもできないで、塀に子供にこんなふうに落書きさせて、―――君の孫の絵かい?そのせいで、私達は今あなたの家を改めて白くぬらなきゃならないんだ。」

=「どこの奴があなたたちに子どもが描いた絵だと言ったんだ?描いたのはわたしだ!」王二椤は意表をついて言った。「あなたが自分で描いたって?」副所長は少し意外だった。彼がこう言ったのを聞いて管理人は二人とも手を止めた。塀のあの絵の高さは確かに子どもの手が届くものではなかった。「あなたはこの豚をいたずら描きして、それを太らして年越しで殺して食べようとあてにでもしたのかい?」副所長が王二椤に言った。「それで年を越そうなんて思ってやしません、私の家の年よりがあれを頼りに家に帰れるためにですよ…」王二椤は少しいらだった。

=もとはと言えば、王二椤の父親は息子に伴ってこの地区に引っ越してきて、鶏も、豚も失くして、家の前や後ろの野菜畑さえも失った。彼は少し呆け始めて、外観が定型的な地区の別荘に面と向かうと、自分の家の入口にさえもたどりつけなくなることが何度もあった。一度など、以前住んでいた村の人から王二椤に電話がかかってきて、おやじさんは今日はどうしちゃったんだ、朝から晩まで昔の家の跡地に何度も来るのを見かけたよと言った。王二椤はこれでやっと、父親が朝に門を出て、丸一日たっても戻っていないことに思い至って、急いで探しに行った。探し当てて、やっとわかった。父は家に戻る道がわからなくなって、悪霊に堂々巡りさせられるように古い家のあった所と新しい地区の間を既に何回も廻ったのだと。

=今までのことやこれからの事を思って、王二椤はまさに幼稚園にあがったばかり孫の絵のように、この地区で主要な道にある自宅の塀の上に豚の絵を描いて、父親に言った。:「父さん、これからはちゃんと見なよ、塀に豚があるのが俺らの家だよ!」

=以前住んでいた村では、どの家にもみんな豚小屋があって、毎日えさを時間通りにやるのが王二椤の父親が必ずやっていた仕事だった。父は毎年一二頭の豚を飼いたがった。父は入念に世話をし、豚たちは目下の者のように父に対して慣れ親しんだ。どんな時だって関係なく、たとえそれまで寝ていたとしても、父が空手でやって来ると豚たちはブウブウ這い起きてきて、父をとり囲んでフガフガと湿った鼻をじいさんのズボンの裾にくっつけた。父は、ふと古い木櫛を手にとるとかゆみを止めるように豚を梳ると、豚はたいそう喜んで、父を取り囲んで離れようとせず、気持ちよくて我慢できず、横になって、父に梳ってもらって、父は豚に囲まれて、長いことそこから離れなかった。

=引っ越す前、父が見当たらなくて、王二椤が豚小屋に探しに行くと、間違いなく、父は彼の太った豚たちと一緒に仲良くしていた。家をたたんで、引っ越すことになって、父はレンガひとつや瓦ひとつと見計らって築き上げた古い家を手放すのが忍びなくて、更に父はいつも面倒をみていた豚たちを手放すのが忍びなくて、何度も息子に尋ねた、「わしらが引っ越したら、豚はどうするんだ?新しい家には豚小屋はないのか?それじゃどうやって豚を飼うんじゃ?」

王二椤の説明を聞くと、副所長と2名の町の管理人は笑いたくなったが、笑えなかった。副所長は言った。:「もしそうなら、こうしたらどうだろう、書記がすでに命じたからには、あなたの家の塀の豚を我々は必ずや塗り消さなければならないのでな。後でわしはあなたの家に二つの大きな花の鉢を贈らせましょう。あなたはそれを入口に置いて、おやじさんにしっかり覚えさせればいいだろう。」

=王二椤は道理の分からぬ人間ではないので、副所長のこの提案を受け入れた。

 

面白さ★★★★☆  難しさ★★★★☆

呆けちゃったお父さん、豚だからビビッとくるのよ。お花の鉢じゃ通り過ぎちゃう。

きれいなお家に引っ越さなければ、呆けなかったのに。お父さんと豚の仲良しシーンが良いので、星4つ。

 

今後の授業  2月12日、26日

author:多摩中, category:講読編, 09:03
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2020.1.29Wednesday>>講読編,

2020年1月29日(水)講読【陈老师】出席6名(聴講2名)

(2015中国微型小说 排行榜P.233-235)

『最后一项发明』    刘 玉行 著

『最後の発明』

=ビースー教授は立派な人物だ。ビースー教授は社会学者であるばかりではなく、科学者で、発明家でもある。ビースー教授はその生涯で100を超える発明をしたが、感情修復器は彼が遺憾に思っている発明で、またそれは彼の最後の発明となった。

=テレビのある報道がビースー教授の発明への情熱を呼び起こした。それは高くなってなかなか下降しない離婚率に関しての報道で、現代で生活している人、とりわけ

35歳以下の若い人の離婚率は59.8%にまで及び、その上社会の不安定要因に成っているという事だった。この報道はビースー教授にとっては大きな衝撃で、ビースー教授は密かに誓いを立てた。必ずや自らの持てる能力を尽くして、ひとつの先進的な機器を発明し、人と人の間の美しい情感を維持・修復するのだと。特に、夫婦間の気持ちを。そのことで、流感のように日一日流行をしている離婚を減少させ、断ち切るのだ、と。

=時が経つこと三年、数限りない試験を経て、ビースー教授はついにある種の器具、ある種の効果のある機器を発明し、感情修復器と命名した。これはある種の外形は腕時計に似通ったもので、男性はそれを左腕にはめ、女性はそれを右腕にはめ、電源スイッチを入れ、その人の基本情報をインプットし、一週間経てばすぐに理想の効果が得られるのだ。ビースー教授は1000名のボランティアに対しての試験を通して、有効の確率は100%に達し、感情修復の効果は98%に達した。特に感情が決裂し、やかましいまでの口喧嘩をしながら離婚したがっている夫婦に対しての効果は絶大だった。かつてこのような一組の夫婦がいた、別居してすでに3年、気持ちは決定的に決裂していて、離婚は既にどうしても避けられない、裁判所までいってもわめきちらしていたが、感情修復器を身に着けて使用した3日後、夫婦二人は以前の恨みがなくなり、元通り仲直りし、その仲良くて離れられない関係はまるで初恋に戻ったようだった。

=感情修復器は市場に出回ると、すぐに広大な民衆の普遍的歓迎を受け、感情修復器を購買しようとする人達はまるで川を渡るフナのようで、特にもうすぐ崩壊しそうな家庭とかや、特に巨万の富を持っていて老いて容色がおとろえた中年女性たちが買いたがった。

=まさに感情修復器が存在するようになって、無数の家庭は仲睦まじく暮らすことができ、無数の夫婦が元のさやにおさまり、無数の仲違いした仇のような兄弟は握手して和解することができ、無数の長年の仇同士の関係は争いから友好へと変わることができた。新聞で感情修復器に関して冗長な文章で多量に報道されているのを見ながら、テレビで人の心を感動させる画面を見ながら、日増しに好転する社会的風潮を見ながら、一人の社会学者としてビースー教授は言うまでもなくとても心踊った。

=ある人は擁護するが、反対の立場に立つ人もやはりいた。先ずは匿名の手紙や匿名の電話をビースー教授によこし、脅しを行った。教授は平地に浪をたて、他人の要らぬ世話をする、と言い、教授の脚を一本切るぞと声を張り上げた。更にある人はビースー教授に対して背後から影で操って、中傷し、罠にはめ、絶体絶命の窮地に教授を追い込んでそれで喜びたがった。けれどもビースー教授はいささかもたじろがなかった。元通り夜を日についで、彼の感情修復器を加工生産した。けれどもある一件がビースー教授を動揺させることとなった。

=ある日ビースー夫人は外から戻ってくると、大喜びでビースー教授に言った。「あなた、あなたが発明した感情修復器って本当にすばらしいわ!」奥さんの賞賛を聞いて、ビースー教授は喜びに心がはずんだ。「ダーリン、もし世間の夫婦がみんな僕たちのような気持ちなら、僕はあんなものを発明する必要などなかったのにね。」「私とあなたの気持ちって、いい状態なのかしら?」ビースー夫人は頭をかしげながら尋ねた。「もちろんだよ。」ビースー教授はこれまで自分たちの夫婦間の感情が上手くいっていることを誇りに思っていた。「だけど、私はあなたと離婚したいと思っているの。」ビースー夫人は落ち着きはらった声で言った。「ダーリン、何冗談言ってるんだ?」ビースー教授は奥さんの話を重く受け取らなかった。すでに一緒に10年あまり生活してきた、夫婦間の感情もまたすごく良かった、なんで離婚なんかあろうはずがないよな?

=「だれがあなたをからかったりする?私は真面目よ。あなた聞いて、ビースー、私は今日、正式にあなたに言うわ。:私はあなたと離婚したいの!」言いながら、一枚の離婚協議書を投げてよこした。「どうしてだい?これって一体全体なんでだよ?」ビースー教授は大声で怒鳴った、それは一頭の怒り出した雄ライオンのようだった。

=「実はね、ほんとうに簡単なことよ、私はあなたの感情修復器を使ったのよね、そしたら、私、初恋の人とうまくいっちゃったの。」ビースー夫人はちょっと肩をすぼめた。

「きみっ、きみっ、きみは―――」ビースー教授は感情修復器を無造作に掴むと、容赦なく奥さんの顔めがけて投げ付けました……。(おわり)

 

面白さ★★★☆☆  難しさ★★☆☆☆

結婚して10数年だから、結構若い。その若さで100の発明。発明している間、足元が揺らいでいたとは…。

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時間が余ったので次週の墙上的猪を読み、先生のアドバイスをいただきました。

p.236(1行目)山墙:家屋の左右にある山形の塀。

p.236(下から2行目) #→「ここでおしっこするのはだめだ!」の意図を表す。 

           読みでは発音しない。

p.238 (10行目)伢子 〇伢子のようにして男の子の名前にする。

p.239 (4行目)裤脚 ズボンのすそ

 

また、今後短い作品の時に教えて頂く教材として「十大最佳微小说精选,看完久久不能平静」(A3-1 枚と A4-1枚)を頂きました。陈老师,多谢。

 

今後の授業  2月5日、12日、26日

author:多摩中, category:講読編, 16:24
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2020.1.22Wednesday>>講読編,

2020年1月22日(水)講読【陈老师】出席7名(聴講3名)

(2015中国微型小说 排行榜P.230-232)

『手长』    满 震 著

『手が伸びた』

=初め、谭局長は洋服が着たり洗ったりしているうちに縮んでしまって、洋服の袖が短いのが目立つのだと思った。その後袖がどんどん短くなっていくのに気がついて、ようやく自分の腕が伸びてしまったのでは、と思い至った。谭局長は鏡の前にやって来て、身体を真っすぐにして立つと、両腕を下に垂らした。すると、なんと両腕が膝頭を超えてしまっていることに気づいた。腕が伸びたのは確かだ!

 

=ご立派な谭局長はなんとまあ「手長猿」になってしまった!このことがもし他の人に知られてしまったら、死ぬほど恥をかいてしまうぞ。谭局長は医者に診てもらいに行こうと決めた。彼はこっそり县の病院の整形外科に診察を申し込んだ。レントゲンを撮り、CTとMRI等一連の検査をしたが、なんの異常も発見されなかった。専門医は彼に町の大きな病院へ行くように言った。

 

=谭局長はすぐに、また省の人民病院へ行った。彼には县の病院の医療設備は正確さを欠いていて、医者の診断レベルも低いのではという懸念があった。検査の各項目をまた改めて一通りやったが、依然として何の問題も発見されなかった。頭が真っ白な老医師は彼に尋ねた:「あなた、お仕事は何ですかね?」谭局長は言った:「公務員です。」老先生は更に尋ねた:「普通の公務員ですか?それともお立場のある方ですか?」谭局長:「うーん、それは―」老医師は言った:「あなた、本当のことをお言いなさい。そうでないと、診断するすべがないですよ。」谭局長はやむなく事実に基づいて自分の身分を告げた。老医師はちょっと笑うと言った:「ここに私の門外不出の処方があるんだが、あなたに試してもらっても構わんよ。あなたが処方どおりにすることに同意するなら、あなたの病気をうまく治療できると保証するよ。」そして、いくつかの封筒を取り出して彼に渡して言った:「あなたの腕が一区切り伸びるその度に実際にはいつも腫れと痛みがちょっとあるだろう。今度その痛みを感じた時、封筒を一つ開けて処方の指示に従ってやれば、あなたの症状はすぐに好転する。あなたがあくまで私の処方のとおりにしっかりやってくれさえすれば、あなたの病気は治るよ。」

 

=谭局長は言った「私の病気を治すことさえできるのなら、何でもやりますよ。」谭局長は希望に満ち満ちて家に戻った。自分の腕がまた長く伸び続けないことを願いながら、また一方ではあの「腫れと痛みの感覚」が早くやって来ないかなとも願っていた。

 

=その日の夜、一人の部下が谭局長の家を訪ねて来た。科長に抜擢してもらうようひきたてくれないかと願ってのことだった。そして、帰り際ひとつの分厚い大きな封筒を置いていった。次の日の朝、谭局長は突然腕の腫れと痛みを感じ、彼は驚いたり、喜んだりしながら急いで専門医のあの封筒を破いて開けた。見つけたものはただの一枚の紙で、そこに書かれた二つの文字が突然に現れ出た:返却!彼はすぐに昨晩受け取ったあの封筒に思い至り、ああ、なるほど私にお金を返せというのだな。口にまで届いている肉を吐きださせるとは、彼は本当はやりたくない、でもまだ腫れて痛んでいる腕がだんだん長くなっていることに思い至った。歯ぎしりしながら奥さんに封筒を贈り主に送り返させるしかなかった。なんと、奇跡だ!その封筒を返すや否や谭局長の腕の腫れと痛みはあっという間に消えて、巻き尺を持って来て測ってみると、腕は伸びていないばかりではなく、さらにちょっと短くなっているではないか。谭局長は本当に喜んだ。

 

=またある日の夜、一人の建築会社の社長が谭局長の家を訪れ、彼に一枚の銀行カードを贈って、工事の一つの工程項目を任せてくれるように頼んだ。次の日の朝、谭局長は腕の腫れと痛みの感覚にまた襲われた。彼が急いで老医師のあの封筒を再び破って開けると、処方箋にはまた、二つの文字が書かれていた:上申!今回、彼は二度とためらわずに、出勤するとすぐカードを規律委員会へ届け出た。部屋に戻ると、彼の腕の腫れと痛みはまたすぐに消えた。こっそりと巻き尺を持って来て測ってみると、今回腕は長くなっていないばかりか、さらにまたちょっと短くなっていた。谭局長は本当に喜んだ。

 

=谭局長はついにはっきりと分かった。なんと自分の腕が長くなったのは己の強欲さが招いた結果だったのだ。強欲さが手を長くし、手が長いのは強欲だからだ。その後、また谭局長に対してある人が袖の下を使ったが、谭局長はきっぱりと全ての受け取りを拒み、実際受け取りを拒絶するのが容易でない場合には、受け取った後、お金の数を一枚一枚調べることさえせずに、すぐに規律委員会に収めた。こうして彼の腕は二度と長く伸びることはなかった。

 

=谭局長は本当に嬉しかった。嬉しくなった谭局長はいつも鏡に映してみる。谭局長は鏡の前にやって来て、身体を真っすぐにして立ち、両腕を下に垂らすと、自分の腕が膝頭の上まで短くなっていた、しかしながら、依然として正常な人に比べると明らかにまだ一区切り分長かった。

 

=ある日、部署のトイレの個室にしゃがんでいた谭局長は外の小便の所で二人の人が自分の悪口を言っているのを聞いた。一人が言った:「われらが谭局長の手はホントに長いよな。」谭局長は心の中で言った。「私の手が長いという秘密は、どうやら彼らはとっくに知っていたんだな。」もう一人が言った、:「そうさ、君がもし局長に何かをしてもらいたくても、十分に贈りものをしなかったり、ある程度の水準まで贈らないと、局長は君の為には何もやらんよ!」谭局長は心の中で言った:「私が毎回お金をもらっていたのは全て天地しか知らないことなのに、彼らはどうして知っているんだ?これこそ正に『もし誰にも知られたくないと思うなら、己を除いてはやるなかれ』だな」一人が言った:「こんな言葉があるよ、『手を伸ばすなかれ、手を伸ばせば必ず捕まる』。中央の反腐敗への力の入れ様はこのところ凄いからな。局長がもし手をしまわなければ、あの2つの長い手に遅かれ早かれ手かせがかけられると思うぜ!」谭局長の心はドキッとした。もう一人が言った:「そうそう、俺が聞いたのは、ある人が今証拠をかき集めていて、規律委員会に局長を密告するつもりだってさ。」谭局長は驚いて全身冷や汗をかいた。戻ると谭局長の心配はずっしりと重くなり、落ち着かず、食べたり飲んだりする意欲もなくなり、よく眠れなくなり、繰り返し考え事をし、今までの事とこれからの事を考え、最後に決心した:局長だったこの数年受け取った賄賂のお金を悉く規律委員会の清廉政治専用口座にすべて振り込み、その後に自首しよう。考えが決まると彼の心は少し軽くなった。

 

=谭局長はまた鏡の前へやってきた。身体を真っすぐにして立って、両腕を下に垂らした。すると、急に自分の両腕が正常な長さになっているのに気づいた。(終わり)

 

面白さ★★★☆☆

難しさ★★☆☆☆

 

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時間が余ったので『一杯の掛け蕎麦』の続きを訳しました。元は日本の作品なのでご興味のある方はネットで調べてみてください。日本語から中国語へ訳されている作品を読むのは初めてでした。印象的な部分を抜粋します。舞台は北海道の蕎麦屋《北海亭》時は大晦日。父親の交通事故により生活に苦しんでいた母と息子2人が、1杯の掛け蕎麦に玉をそっと追加してもらい、温かく声を掛けられたことで、苦しい時代を乗り越え、しばらくぶりにかつて大晦日にいつも訪れていたその蕎麦屋に来店する場面です。日本の大晦日の様子がよく描けていると思います。

北海亭附近的商店主人,到了除夕这天打烊以后,都会带着家眷集合到北海亭来吃面,一边吃,一边等着听除夕的钟声,然后大家一起到神社拜拜,这是五六年来的习惯。周围商店主人和家眷聚集在了北海亭,有人吃面,有人喝酒,有人忙进忙出准备菜肴,大家无所不谈,打成一片,像一家人。过了十点半,门突然再度被轻轻的拉开。所有的人都停止谈话,视线一起朝向门口望去。

北海亭の近所の店主は大晦日のその日、店を閉めた後、いつも家族連れで集まって北海亭にそばを食べに来ていた。食べながら、除夜の鐘が聞こえるのを待って、みんなで一緒に神社に初詣に行く。それがここ5,6年の習慣だった。周りの商店の店主とその家族は北海亭に集まると、蕎麦をたべる者あり、酒を飲む者あり、忙しく出たり入ったりして酒の肴を用意する者あり、みんな話に花を咲かせ、一つになって、まるで一家族のようだった。十時半を過ぎたとき、入口がまた、そっと開いた。みんな話を止め、一斉に入口を見た。

 

=そこに立派に成長した息子たち(医者と銀行員)に挟まれて着物を着た母親が現れます。その息子曰く、滋賀に引っ越し、今年父親のお墓参りに来た。我们就商量一个最奢侈的计划…就是今年除夕,母子三人要来北海亭,吃三人份的北海亭汤面。私たちはある素晴らしい計画を話し合ったんです。それは今年の大晦日、母子3人で北海亭に来て北海亭のあの蕎麦を三人前食べようという計画です。店主とおかみさんの目には涙があふれ、応えるように言った。「そうだね!かけ3丁だね!」

 

泣ける〜母を支える孝行息子。このパターン多いですな。そしてそっと麺の玉を多めに茹でた蕎麦屋の店主。励ましを込めて明るく声をかけたおかみさん。毎年大晦日親子を待っていた。良い話すぎるなあ…。手が伸びちゃった局長の話の方が好み。

 

今後の授業 1月29日  2月5日、12日、26日

 

author:多摩中, category:講読編, 17:34
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1月8日 講読

城市的味道 を読み終わりました。

 

蜘蛛人 スパイダーマンかと思いきや、高層ビルの窓拭きオジサンのことでした。

 

地方から、大都市への出稼ぎに出た、お父さんと帰りを待ち続けるお母さんの

再会初日の場面を切り取った物語でした。

 

来週は、お休みです。

 

時間が有ったので、「一椀(石偏)湯面」を訳しました。

2ページ目の5行目まで進みました。

次回は、

請進!請進!老板娘熱・・・からです。

author:多摩中, category:講読編, 16:26
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2019.12.18Wednesday>>講読編,

20191218日(水)講読【】出席6名(聴講3名)

2015中国微型小 排行榜P.224-226)

『背叛』   斌著

『裏切り者』

=将軍は山を下りて食料を手に入れるように人を派遣した。何日か経つと我々の食料は絶えてしまい、ただ川のベルトを食べ、草の根食べるしかない。要するに、石と木を除いて食べられるものは全て我々は食べてしまっていた。将軍は頭をかきむしりながら言った。だめだ、食料を手に入れなければ、もしそうでなければ、どうやって戦うのだ?

王老蔫は聞くやいなや、木の幹につかまりながら、立ち上がると、奮起して申し出た、私がまいります。将軍は彼をじろっと見ると、尋ねて言った、お前が行くのか?王老蔫は頷くと、我々に告げた。自分は己の指を知るかのごとく道を熟知しております。私は将軍に目配せをし、王老蔫に背を向けると、ひそひそと将軍に言った、こいつは臆病だし、辛抱強くもない奴です、こんなに勇敢だったときがこれまでありましたか?信じることはできません。将軍は目を大きく見開いて尋ねた、どういう意味だ?

=私はため息をついて言った、敗戦後というものは、本来、人の気持ちが不安定なものです。私は決して大げさなことを言っているのではなかった。このところ、敵がどこまでも追いかけて来たり、大雪が山を塞いでいる、こうした状況では、骨なしの兵士の一部は苦しみに堪えられず、銃を携えてこっそりと山を降り、敵に投降し、我々に極めて大きな危害をもたらしていた。これ故、私は注意せざるを得なかったし、将軍に忠告せざるを得なかった。とりわけ、王老蔫のような人間にはどうしても気を付けなければならなかった。

=けれども、将軍は結局、私、この参謀長の意見を聞き入れず、王老蔫をやはり派遣してしまった。現在、戦いに敗れた後、将軍の身辺にいる者は十数人にさえなってしまい、彼らはみんなこの土地の者ではなく、この土地の状況には疎かった。ただ王老蔫だけがこの土地の者で道に詳しかった。王老蔫は任務を仰せつかり、敬礼をして出かけた。

=約束どおりだと、次の日の早朝王老蔫はここに駆けつけていなければならなかった。けれども、夜が明けて、太陽が雪の平原を照らしても、依然として王老蔫は戻ってこなかった。私は心配になって、将軍に言った、早いうちに移動しなければなりません、私は王老蔫、奴が問題を起こしたと疑っております。私は分析した、あいつは道をよくわかっているのだから、別の事が起こったはずはない、もし事を起こすのであれば、きっとそれは投降するということだ。将軍は首を横に振って言った。もう少し待とう。将軍は独り言を言った、この王老蔫という奴は、何かに手間取らされてしまったのではないのか?そうして待っていると、我々は日本軍を迎えることとなった。列をなした黄色い日本野郎がここに向かって銃を持ってやって来た。

=その先頭は、まさに王老蔫だ。将軍は一声罵った。腰抜けめ、やはり日本野郎をつれてきたな。言い終わると、静かに十数人に命令した。急げ、伏して進み、雪に身を隠し戦闘に備えよ。我々はそこで腹ばいになり、息を潜めた。王老蔫がだんだんと近づいてきた、彼の顔が笑みを浮かべているのがはっきりと見えた。あの野郎、得意顔だ。後ろに日本軍の小隊長がついてきていた。

=こちらまで来ると、彼は立ち止まり、笑うと、日本軍小隊長に告げた。ここが我々の拠点でした。しかしながら、昨日将軍と私は協議の上決めたのであります。私の任務は食料をここに運ぶのではなく、直接虎头岭に送り届け、その後夜が明けたら我が軍が取りに行くということでありました。ここまで話すと、彼は笑って言った。自分はもうその任務はやりたくはありませんでした。よって、门头沟に逃亡し、太君にお会いし、投降したのであります。そこで、彼は断定した、将軍は今虎头岭にいます。日本軍の小隊長は聞くと指揮刀をかざした、突撃だ!日本軍一隊は王老蔫につき従って、うんうんと深い雪を踏みながら引き続き前方へと進んだ、一歩一歩虎头岭を登っていった。

=ほどなく、虎头岭の上で、老蔫の叫び声が伝わってきた、日本軍め、くたばれ。それと同時に手りゅう弾がバーンと爆発する音がして、そして一切が失われ、広い平原は静まり返った。我々は這い上がり、虎头岭を望んだ。我々の一つ一つの目には涙がどっと溢れた。

=将軍は手で涙を拭いて言った。進め、门头沟へ進め。门头沟で、我々は最後に見たのは洞窟にある一袋の食料だった。我々はこうして難局を乗り切ったのだった。

=長い年月がたち、私は既に両鬢に白いものが混じっている。再度ここへ戻り、王老蔫があの年、捉えられた経緯を尋ねてみた。その土地の人は私に告げた、ある人が見たそうだ、当時王老蔫は捉えられたのではなくて、正確には自分から出て行って、喜んで日本軍に道案内したのだ。その時彼は食料を担ぎながら门头沟に来ると、一隊の日本軍がひそかに我々の拠点の方向にむかって暗闇の中を進んでいるのを発見した。彼は驚き、急いで食料を上手く隠して、衣服をはたきながら出て行って、日本軍に告げた、自分は逆らって、将軍のところからに出て来たばかりだと。

=彼は言った、自分は将軍がどこにいるか知っている、道案内をして手柄をたてたい。そして、彼は日本軍を従えて真っすぐに虎头岭へと向かった、自らの命の終着点へと。彼と私は同い年だった。もし今生きていたら、すでに90過ぎだろう。

(終わり)

黄乎乎日本軍の軍服のカーキ色、一色の様子を表現。色+乎乎はあまりいい意味ではないそうです。

  「太君」ここでは投降した身の上の人が媚びるかんじで、日本軍将校への呼びかけている。

王老蔫」の「」は年よりではなく、「ずっと」の意味、また、「」はのろま、やるきがない、の意味。この人のキャラを醸し出している。

 

本編は短かったので、先生が他の短編「一碗汤面をお持ちくださいました。これは日本の作品が訳されたもので、ネット上で人気が高かったそうです。今週で読みが終わりました。

 

次回はP227229「城市的味道」と上記短編一碗汤面(原稿は教室にあります。)

 

今後の授業 1月8日・22日・29日

author:多摩中, category:講読編, 13:57
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2019.12.11Wednesday>>講読編,

2019年12月11日(水)講読【陈老师】出席6名(聴講3名)

(2015中国微型小说 排行榜P.219-223)

 

『工地上的兄弟们』   宋 超 著

『工事現場の仲間たち』

=給料がでたぞ!工事現場は一面喜びに沸き返った。仕事を終えて、毛子は飯場へ戻った。そこには人影はひとつもなかった。まさかみんなは本当に町に遊びにいったのか?仕事が終わる前、罗卜はこっそりと聞いた、仕事終わったらどこへ行く?どこも行かないけど。毛子は言った。君は?半年の間女の匂いを嗅いでないからな、みんな町へ繰り出して、ちょっと遊べる所へ行くんだ。滅多にないチャンスだ、毛子は急いで近くの別の工事現場で働いている奥さんに電話をした。今暇ある?毛子は言った。何するの?奥さんは尋ねた。君に会って、何をするかって、分からない?毛子は言った。いやだ、またがまんできなくなったの?いったい来るの、来ないの?会える場所はあるの?あるさ。他の人達は?給料がでたから、みんな町へ遊びに行ったんだ。あなたはどうして行かないの?僕は君に会いたくて……本当?嘘ついてたりしない?来てくれる?行かないわ。来ないの?行かないってば。ほんとに?ほんとよ。それなら、僕は町に行っちゃうかも……。行ってみたら……。

=何分かすると、奥さんはやって来た。やっぱり飯場はもぬけのからで、仲間たちはみんなどこかへ行っていた。毛子は手を枕にしてベッドに横たわり、奥さんはぱっと飛びあがると、楽々と毛子の腰の上に乗っかった。お給料、でたの?奥さんは聞いた。ああ。毛子は奥さんの腰を抱きながら言った。幾らだった?六千だ。そんなに?私達お金持ちね!どこが。何よ?少なすぎるよ。まだ少ないって文句いうのね?う…ん。ちょっと訳を言ってみて。

=ひとつ、まだ君のお父さんに牛一頭の借りがある、婚約した時、約束したよね、僕たちにお金ができた時にお父さんに牛を買うって。お父さん言ってたわよ、牛はもういらないからそれを孫の進学のために取っておけって。ほんと?ほんとよ。君のお父さん、本当に有難いな、でも……。でも何よ?まだふたつ目がある、ふたつ、まだ君に金の指輪をあげていない。結婚証明書を受け取ったあの日、僕は君に買ってあげるって言ったのに、お金がなくて、君は言ってくれたね、最初はなくたっていい……って。金の指輪も、もういらないわ。金の指輪をして働いている人なんていないし。ほんとに?ほんとよ。君ってほんとに、ありがとう。けど…… まだなにかあるの?

=まだみっつ目がある。みっつ、それは君だよ、君はまだ僕に一つ借りがあるよね……なあに?これだよ……毛子はぱっと上になって奥さんを身体の下に押さえつけた……あなたほんとにわるいひと……奥さんは言った。

=夜は深まり、仲間たちはまだ戻って来ていない。滅多にない一回きりのチャンス、二人はどうしても寝付けなかった。これでわたしたち貸し借りはなくなった?奥さんは毛子の胸の中に横たわりながら聞いた。

=あるよ。まだよっつ目がある。よっつ、僕たちは明日町へ行こうよ!毛子は言った。何しに町へ行くの?僕は君にスーツでもかってあげたいな。スカートを?うん。いらないわ。他の人はみんなスカートをはいているよ。ひとはひとよ。君がスカートをはくと、きっときれいだよ。スカートをはかないときれいじゃない?はかなくてもきれいだよ。それできれいなら、買わないわ。それなら…。

=毛子、お金は、私達は一分だってやたらに使う事はできないわ。どうしてだい?あなた、しっかりしてよ?しっかりって?お母さんの手術、まだじゃない!忘れてたの?忘れてないよ、忘れられるはずないじゃないか!あなた、どうにかまだ良心があったのね。まだ足りないじゃない。一分一分ためて、とっておいて、君のお母さんに手術を受けてもらわないとね!お母さんには長生きしてもらわないと、わたしたち、お金のために出稼ぎにいくから、まだまだお母さんにはわたしたちのためにも孫を預かってもらわないと!それにお母さんはまだ一日だっていい暮らしをしたことがないもの。君は聞いているんだろ、お母さんの手術にいくらかかるの?一万よ。わたしここに2千まだあるわ。お給料が出たの?まだよ!どこからもってきたの、へそくりを集めたの?家にへそくりできるようなお金がある?そうだよね。それなら……

=婚約した時あなたがくれたものよ。ほんと?ほんとよ。君って、えらいな。けどそれでも2千は足りないな。わたしたちもう一度手立てを考えましょう。よし、年末までには足りるようになるさ。お母さんが年末までもつかどうかわからないわ……。はあ……。

=夜があけた、奥さんは恋々として思いきれず、毛子も同じように恋々とした思いで、ドアのところまで送ってきた。会える場所ができたらまた電話するよ……うん。奥さんは言った。ドアを開けると、ドアの前には横一線に人の壁ができていて、先頭は罗卜だった。二人はハッとした。仲間たちがみんないた、一人も欠けず、罗卜の手には一握りのお金が掴まれていた。

=みなさん、戻ってたんですか?毛子は尋ねた。みんな、どこにもいかないでドアの前で奥さんの為に見張りに立ってたんだよ!罗卜は言った。奥さんの腰は大丈夫かい?これは……毛子は感動して、頭をかきながら、なんて言っていいかわからなかった。奥さんの顔はたちまち、一面真っ赤になった。昨晩君と奥さんが話してるのをおれたちは、みな、聞いていたんだ、それはみんなのちょっとした気持ちさ、少ないとか文句は言わずに、早くお母さんを迎えに田舎へ帰って、町で手術を受けさせてやりなよ……罗卜は言った。(おわり)

面白さ★★☆☆☆

難しさ★★★☆☆

(感想)若い奥さんのけなげさ、若い夫の純情な感じ。飯場の友情。なんか日本でいうと昭和の感じ。どこかにはまだあると思いたい。

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『宅男』

『オタク』の続きです。

=父がおいしいおかずを作っていると、すぐに会社に行く時間になった。彼は魚を何口か食べ、ご飯を何杯かかきこみ、パソコンの前に急ぐと、息子に書き込みをした。彼に伝えた。魚がすごくおいしくできたよ。父親はユーモアで、息子にひとつの絵文字「大豆」を残した。その大豆は目をほそめて笑った表情だった。

=息子はぞんざいに魚を食べた。彼は心の中であることを考えていた。彼はどうやったらなんとか小美と自分二人の事を完結させることができるかを考えていた。小美は彼がネット上で知り合ったガールフレンドで、二人はまだ会ったことはなかったが、思いはつのり、お互い離れることはできない。小美は彼にちょっと会ってみたいと言っていた。彼は同意していない、彼は、会ってしまったら自分たちのこのすばらしい感情が消えてなくなってしまうのではと恐れていた。

=p3息子は何度か考えた。部屋を出て、小美と結婚することを。でも、結婚した後を考えると自分は小美にすまないことになるかもしれない。だからその考えを打ち消した。彼は自分の部屋を出たいとは思わない。部屋は彼の空であり大地だ。彼は自分の部屋にいる時だけ、ようやく世界が安全だと感じられる。彼は外界に対して全く興味がなかった。ただ、小美がいるようになったら、そうではなくなる。例えば、病気になったとする、自分が病気なら、ネット上で薬を買えばよい、小美が病気になったら、多分ネット上で薬を買うのでは収まらない。その上、こどもが欲しくなるのではないのか、小美はあくまで健康な赤ちゃんを産みたがる、もし子供ができれば、さらに、面倒なことになる。彼は彼の居場所と内面を持ちこたえられなくなる。

=けれども、また、息子は小美をとても愛していた。愛は究極に達していた。動画で小美をみると、あんなにも美しくて、笑うとあんなにも甘くてまるで天上の仙女だ。テーブルの上の携帯が鳴った。それはある特殊な音がした。小美がメールを送って来た時にだけこの人をうっとりさせる音がするのだ。彼は手に取った。見ると小美の言葉が送られていた。小美のメールには、私はあなたを思うあまりほんとうにおかしくなっちゃったの、私は今あなたの家の向いの五階にいるの、あなたが出てこないなら、私、飛び降りるわ。

=息子が顔を出すと、はたせるかな、目に飛び込んできた。小美がとても美しくあでやかに五階のてっぺんに立っているのが。息子は愕然とした。ただ愕然とするしかなかった。そして、息子は探さなきゃと決心した。最高の角度を。小美がどうやってさっと羽をひろげるのかを見ることができる最高の角度を。(おわり)

(感想)作者は引きこもりの娘をもつ50代の女性。それ故か、「息子が生きていてさえいればいい」と思う親の心情の部分が訴えかけてきます。オタクの息子との生活の様子もリアル。一歩間違えば誰でもこうなりそう。最後の「最高の角度」というのがオタクらしくてゾッとしました。

    

 

面白さ★★★★☆

難しさ★★☆☆☆

 

今後の授業 12月18日

      1月8日・22日・29日

author:多摩中, category:講読編, 18:05
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