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2019.2.6(水)購読クラス
2019年2月6日(水) 購読 陈老师  出席6名
『芳华』        严 歌苓 著
--第二节--
あれはもう30年あまり前になる。私たちの兵舎だった赤い建物に
はまだ夢があった。その多くの夢は皆美しく、恐れなど知らない
ものだった。

その赤い兵舎の2階と3階には長い回廊があって、回廊の上に
長々と庇が広がっていた。夕方に3階の回廊で練習曲をクラリ
ネットで吹いたり、バイオリンで弾いたりしながら、ふと目を
周りに移せば、階下にも庇のある回廊があり、更に目でその回廊を
たどれば、その果てには小練習室があった。その練習室を回り
こむと右側にはモチの木の小道があって、その小道で2つの大きな
バケツを天秤棒で担いでいる人をよく見かけた。その人が刘峰だ。
バケツは隣の路地に住む男の子のために担いでいた。その子は
17歳で、親はなく、路地に住む子どもたちの間では「カッコ」と
呼ばれていた。なぜなら彼が真っすぐ立つとその両脚が一対の
完璧なカッコになるからだ。子どもたちが言うには、サッカーを
するなら、その「カッコ」の両足をゴールにできるし、ボールを
蹴るとゴールの枠にボールが当たることはないのだと。カッコは
歩くときは腰かけに寄りかかる。先ずその腰かけを一歩前に運び、
次に自分が腰かけにもたれかかりながら一歩進むのだ。自分の
2本の脚と腰かけの4本の脚、合わせて6本の脚では2百メートル
の道のりを歩くのに15分かかる。毎日夕方には路地の水道水の
蛇口の鍵が開けられ水が売られる。路地の住民は皆、路地の入口
まで来て列をなして水を買うのだ。もしカッコが水を買って家に
戻るとしたら、6本の脚はさらに忙しくひどいことになる。バケツ
を動かし、腰かけを動かし、最後に自分のあの2本の「カッコ」の
脚を動かさなければならない。ブリキのバケツに半分水を入れても
家に着くころにはバケツの底に少し残っているくらいになって
しまう。カッコは水を汲めなければ話にならない。家の古いかまど
で沸かして、お湯を売るのが商売なのだ。刘峰は毎日私たちの庭で
水を2回天秤棒で担いでカッコに届けていた。指導者が問い正すと
刘峰は、私たち軍隊の水道水はいずれにせよ無料でしょう、と
言った。指導者はちょっと考えるとそのとおりだなと感じた。
軍隊は食べることから着るものまで人民から与えられている、
軍隊が少しのバケツの水を人民にあげるのだ、あげられないとでも
言うのだろうか?カッコのように独りぼっちで貧しい身障者の人民
ならなおさらだ。ある夏の終わりの夕方に、屋根のない走廊で
みんなが食後の腹ごなしでぼんやりしていると、手持ち無沙汰の
視線の中を刘峰が行ったり来たりしていた。天秤棒の2つの大きな
バケツは満杯なのに刘峰は一滴だってこぼさないで担ぐ事ができる
のだ。お腹いっぱい食べたトロンボーンの高强はゲップのように
低くこもったような音を鳴らしながら、モチの木の小道を軽やかに
去っていく刘峰の小さな姿をぼんやりと眺めてため息まじりに
言った。「はあ〜、なんだってあいつは疲れをしらないんだ?
なんて名前だっけ?」側にいたベースの曾大胜が言った。
「刘ーーー峰。」トロンボーンの高强はさっきのトロンボーンの
音のように長くひっぱって言った。「LiーuーFengーーー私は、
チッ!もう一人の雷又锋です、か。」

刘峰はこうしてそのあだ名、雷又锋を手にしたのだ。

私が初めて刘峰のことを近くから子細に観察したのは彼が私たちの
団に転属になってほどなくだった。その日の昼食がもうじき終わる
ころ、一人の人が木づちで床板を打ち付けていた。床板はどの
くらい古くなってたかって?こちらで力をいれてちょっと跳ねる
と、あちらの食卓の鉢がみんなひっくり返ったり、少なくとも
ガタガタするほどだ。木づちを打っていたのはまさに浮き上がって
話にならないような床板のところだ。その古い邸宅の90年以上前の
主人は軍閥で、住んでいたその赤い建物を兵舎として私たちに提供
した。20世紀の20年代は2階建てで、一人目と二人目のお妾さんが
住んでいた。30年代初めにさらに3人目のお妾さんを娶り、その
主人は2階の上にもう1階加えたのだ。東北地区では「満州事変」
が起こっていたが、西南地区はこれまで通りお妾さんなど
かこって、どんな危険や災難があろうと、成都ではみんな幸せを
享受し、苦労などなく過ごしていた。昔の事情を知っている人が
よく見れば、3階の赤い色は下の2階とわずかな違いがあった。
同じような赤いレンガを使って、赤い建物から一本の道が敷かれ、
上は青い瓦の庇で、両側には鉄色の木の柱があり、一軒の東屋
まで真っすぐにつながっていた。私たちの小練習室はその東屋の
土台の上に増築されたもので、そのため外観は変わっていて冬は
寒く夏は暑かった。再び入口の方へ進むと、私たちの食堂が
あった。昔はお妾さんたちの芝居小屋だったのだが、後に
抗日戦争になると成都は大後方となり、舞台は解体されてダンス
ホールに改造された。この内庭には馬牽き、女中、ねえやたちの
部屋があり、その造りはみな丁寧なものではなかった。解放軍が
平和裏に四川を開放した時にはすでにほとんど崩壊していた。
とり払われ、2列の平屋が建てられ女中やねえやの部屋に比べて
もさらに簡易なもので、その新しい住人は家族連れの文化宣伝工作
団の幹部だった。最も新しい建築が私たちの練習室だった。それは
大練習ホールと呼ばれ、60年代の建築で、一目でわかる正に当時の
スローガン、「多く、速く、立派に、無駄なく」の産物だった。
この日のお昼に、いつものように、私たちは一つ一つの小さな
テーブルを囲んで、空になったお椀やお皿を前に腹ごなしをして
いた。おしゃべりをして、男女の兵士たちが冗談を言ったり
からかったりしていて、話ていることなんて、どう聞いたって
いい、聞こえたままだと思っていいようなものだった。誰も刘峰が
やっていることなんかに感心はなかった。

なぜ私が刘峰のことが気になったかといえば、左右違った靴を
はいていたからだ。右には軍隊で支給された揃いの兵隊用の黒の
布靴をはいていて、その形は旧解放区のおばさんたち向けの
デザインだった。左にはいていたのは汚い白い柔らかい底の稽古
用シューズだった。後でわかったのだけれど、彼は左脚だけで
回転するのがうまくできなくて、構えるとすぐに傾いてしまった。
だから彼は暇さえあれば何回も回る練習をしていて稽古用シューズ
がいつも用意されていたという訳だ。木づちを打ち終わると、刘峰
は柔らかい底の靴で床板をちょっと踏んで、次に硬い底の靴で
激しく踏みつけ、最後に数回木づちで打つとやっと立ち上がる。
彼が真っ直ぐに立ち上がると、その身長への期待は裏切られること
になる。彼があんな風に座ったりしゃがんでいるとその背丈が結構
あるようだけれど、立ち上がると「そんなに高くないんだわ。欠点
は脚ね、脚が長くないわ。」と心の中でつぶやくことになる。
だけど、とんぼ返りに長い脚は邪魔だ。まさに刘峰はこのとんぼ
返りの上手さで劇団に選ばれたのだ。元の所属はある野戦軍の工兵
の兵営だった。刘峰のとんぼ返りは子供の頃にしこんだものだ。彼
の苦難に満ちた子供時代は县のある地方劇団で過ごされた。山東省
のある貧しい县は刘峰の話では「貧しすぎて着るものもないんだ
よ!」その地方劇団に入ってとんぼ返りを教えてもらわなければ、
彼もまた着るものもないような子供時代を過ごしただろう。

今後の予定
2月13日 お休み(変更です)
2月20日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
3月6日  長編『芳华』第三节
author:多摩中, category:講読編, 01:10
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2019.1.30(水)講読クラス
2019年1月30日(水) 購読 陈老师  出席6名
『管闲』  乔 迁著
『おっせかい』
(中国微型小说 排行榜P.138-140)
张明旺は町の産児計画主任(计生办主任)だ。町の産児計画の仕事
は目下これまでになく暇だ。農村でさえここのところ先を争って
息子や孫を欲しがるようなことはなくなった、だから张さんは楽を
している。多くの人から羨ましがられても张さんは嬉しくはなくて
かえってがっかりしていた。何故かって?张さんはじっとして
いられないタチ(闲不住的人)で、おっせかいが大好きなのだ。

おっせかいな人は大抵人に嫌われる(大多都不受人待见)。最近は
多くの人、多くの事が表だって知られることはなくなったので
おっせかいは嫌がられるのだ。おせっかいが大好きな张さんは
当然、人に嫌がられ町の人たちはみんな张さんのことをおっせかい
张さんと悪意を込めて呼んでいた。けれども张さんは気にしない
どころか、けなされたっていつも嬉しそうにニコニコと
(乐呵呵地)おっせかいをやいていた。

ある時のこと。露店の李丽华が店から8歩〜10歩のごみ箱に、歩き
もせず戸口からゴミ袋を投げた。シュートなんてちっとも上手く
ないから、ゴミ袋はまあまあバスケットボールのように飛んで
いったのに、入らずに見事に外に落っこちた。ちょうど张さんが
通りかかって目に留めると、ニコニコ顔で李丽华に言った。
「一度投げたって入りゃしないよ、ゴミ箱のところまで行って、
拾ってもう一回投げてちゃんと入れなよ。」李さんは白目を
剥いて一言言った。「あっちいってよ。」张さんは続けて
言った。「転がすなよ。ビー玉じゃあるまいし。投げなきゃ。
ほら投げろよ。」李さんはむっとして「あんた、この町の管理人
かい?あたし、投げないよ。あんたに何ができるっていうん
だい?」张さんはニコニコして言った。「あんたが投げない
なら、町の管理人に電話して罰してもらうさ。」言いながら携帯を
取り出し番号を打ち始めた。李さんは张さんなんか怖れていない
が、町の管理人は怖い、顔中で怒りながら歩いてきて、ゴミ袋を
拾いあげてプンプン怒りながらゴミ箱に投げ入れるとギロっと
张さんを睨んだ。张さんは李さんが睨んでいるのを知ってても
気にもとめず(视而不见)、鼻歌混じりに去っていった。

罵られたって、白い目で見られたって、张さんにとっては大した
ことではない、なぜならおせっかいが原因で頭をかち割られ血が
流れるような散々な目に遭った(头破血流)ことも経験済み
だからだ。一度など、町で2人の若者の喧嘩に遭遇したのだが、
2人は顔を互いに殴り合い、血も吹き出ていて、やじうまが大勢
取り囲んでいるのに、仲裁する人は誰もいなかった。张さんが
見ると、だめだ。このまま殴り合うと最悪死傷者がでるかも
しれない(闹不好会出人命的)。急いで人込みを押し分け二人の
間に飛んで入って両手で二人を引きはがし、しきりに叫んだ。
「よせ、もう殴るな。何かあるなら、ちゃんと話すことはできん
のか、何でけんかしているんだ?」2人の若者は頭に血が上って
いる真っ最中、そんな説教なんか聞くはずもない。张さんが引き
離しているのに、ずっとあっちとそっちから拳で殴り足で蹴って
いる。ちょっと考えてみてくださいな。こんなんじゃ、张さんが
間違って拳や蹴りをおみまいされる確率はすごく高いはずです
よね?ほどなく、张さんは文字通り頭を割られ血が流れ、
(头破血流)後で押し分けてきたやじうまは2人の若者が张さんを
殴ったと思っただろうな!张さんが見たらだめだ。この調子で
ずっとなぐりあっていては、でも2人の若者はなんでもなくて、
自分が先にぶっ倒れたのだった。张さんは大声で叫んだ。
「殴るな、わしは心臓病なんだ。早く人を呼んで助けてくれ。」
言いながら、急にバタンと地面に倒れ手で胸を押さえ、足を
ピンと突っ張った。これを見た若者は手を止め目を合わせると、
あっという間に逃げた。张さんが本当に心臓病で死ねば、自分
たちのせいになるのを恐れたのだ。2人が逃げたのを見て张さんは
起き上がり、顔の血を拭いながらやじうまに向かって言った。
「若いのが2人で殴りあっているのに、なんで止めないかね?」
皆は無視していた、ある人が小声でひとことひそひそ「なんだよ。
心臓病のふりなんかしやがって。」と言うとみんな散って
行った。张さんは怒りもせず足を引きずりながら去って行った。

大雨が一昼夜降り続いていた。次の日の朝には上がった。张さん
は目を開けると突然ひとつの問題を思い出した。町の小学校
の教室が崩れ落ちる危険があるのだった。その教室は2年前に
建てられた。今の町長が教育担当の副町長だった時に力をいれて
建てたものだ。建てられた後非常に多くの人が建物の質が悪いと
言っていたが言ったところで、誰もそれを突き止めない。結局
どうして粗悪なのか、どの程度まで粗悪なのか突き止める人は
いなかった。张さんは追及する権限はなかったけれど、度々
見に行っていた。2日前彼は教室に一筋の深い亀裂があるのを
発見した。手でちょっとほじくり、シャッシャッと土を落として
ちょっと見るとすぐ質が本当に悪いのが分かった。町長に言いに
行かなければければとまさにこの2日間彼は思っていたのだ!
この大雨では教室はおそらく耐えられないのだ。张さんはすぐに
起きて、町長の家へと駆けていった。町長に言うと、町長の
顔つきはにわかに不愉快な色になり、興味なさそうに言った。
「教室がだめなら校長が言いに来られるでしょ?あなたが関わる
必要はありませんよね?わたしが手抜き工事をしたとでも思って
おいでですかね!」张さんはこの町長の態度をちょっと見ただけで
町長は张さんの心配など気にかけるはずがないとわかり、いらだち
足を踏み鳴らし家へ戻った。戻って、少し考えると頑丈な鎖の錠前
を掴むと学校へと走って行った。

先生たちと子どもたちが泥水を踏みながら続々と登校してきた。
けれども入れなかった。张さんが正門を封鎖していたのだ。
校長が走って来て张さんに向かって言った。「张さん、何やって
んだ?」张さんは校長に目を向けて頑として言った。「校長、
教室にヒビいっているのを知らんわけじゃないだろ。一昼夜大雨
が降ったのにそれでも子どもたちを教室にいれるのか。」校長は
教室にヒビがあるのは知っていたが、崩れるというほどじゃない!
张さんの方へ一歩近づいて行った。「张さん、でたらめいわんで
いただきたい。さっさと門をあけて、子どもらを入れなさい。」
张さんは動こうとしない。校長はいらだって言った。「もし開け
ないなら、派出所に電話して来て開けてもらうぞ。」张さんは
首を横に振って言った。「わしは、開けん。校長、電話すれば
いい。」校長は本当に電話をした。十数分後、派出所所長が
やって来た。おまけに町長までついて来た。この時には子ども
たちはみんな登校していて、校門の所で押し合いへし合いし、
子どもを送ってきた父兄たちも张さんは余計なことをすると
文句を言い出していた。町長と派出所所長が张さんの目の前
まで来て、町長はどす黒い顔で言った。「門を開けなさい。」
派出所所長は大きなペンチを手にしていてちょっとちらつか
せた。それでも张さんは門の所に立って動かず、町長に目を
やり言った。「町長、本当に子どもたちを学校には入れること
などできない。やはりその前に誰かに一度教室を調べさせて
くれ、子どもたちはまだこんなに小さい…」町長は面倒くさ
そうに手を振って言った。「開けなさい。私が先に入って
見てこよう。それでいいだろう!」张さんは半信半疑で言った。
「本当か?」町長は言った「本当だ。さあ開けなさい!」
张さんはちょっとためらったが、錠をほどいた。町長は手を
伸ばし門を曳いて開けると子どもたちに言った。「入って
授業だ!」张さんは急いで手を伸ばして門を閉めにいったが
派出所所長はとっくに腕を掴んでいた。张さんは怒って、
大声で一喝し、拳骨を所長の顔におみまいし、殴られた所長は手を
緩めた。人々があっけにとられている間に张さんはすでに飛ぶ
ように教室の前に駆けていくと、狂ったように教室に突き
当たった。思いもよらぬことにドーンという音とともに教室が
本当に崩れた。

张さんは病院で横たわっていた。町のたくさんの人がお見舞いに
来ていた。とても多くの学生の父兄の目には涙が浮かんでいた。
张さんは目が覚めて、皆を見ると驚いて言った。「何で皆さん
来ているのですか?」皆は口を揃えて気持ちを込めて言った。
「张さん、私たちは迎えに来ました。一緒に戻ってまた
おっせかいをしてください。」
==おわり==
世直しおじさんのお話でした。巷でこういうおじさんをお見
かけしなくなりました。ご登場願いたいですが、注意されて
白目むいたりするかもしれません。ありゃ〜。

難しさ★☆☆☆☆  面白さ★★☆☆☆
今後の予定
2月6日  長編『芳华』第2节
2月13日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
author:多摩中, category:講読編, 17:39
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2019.1.16(水)講読クラス
2019年1月16日(水) 購読 陈老师  出席7名
『美女代孕』  殷 贤华著
『美女代理出産』
(中国微型小说 排行榜P.135-137)
菊花と二狗は幼馴染で仲良くてまるで一人の人のようだった
(好得像一个人)。菊花は大人になると、村一番の美しい娘と
なり、縁談には事欠かなかった。ところが、菊花は両親の反対を
押し切って無理やり貧しくてすっからかんの二狗と結婚した。
(穷得叮当响的二狗=鍋しかなくてカラカラと音がなるほど
貧しいという表現)両親は死ぬほど怒った。
==
二狗は菊花の深い思いに感動し、自分が出世し、菊花に幸せな
生活を送らせるんだ、と誓って結婚後ほどなく出稼ぎに行った。
菊花は舅姑の世話をし、自分の親のことも面倒をみなければ
ならなくて、とても苦労した。菊花が将来の幸せを夢見ていた時
悪い知らせが届いた。夫が交通事故に遭いしかも運転手が逃げた
のだ。病院の緊急治療が間に合って、命はとりとめたが、手足が
麻痺してしまった。おそらく人生の残りはベッドの上か車いすに
乗って過ごすしかしかなくなった。菊花は電話を切った後
気を失った。
==
菊花は戻って来た二狗を舅姑や両親に託して町に出稼ぎに行った。
町の求人市場には大学生が溢れていて、やっと高校を出た菊花に
とって仕事探しは難しかった。運よく職を得ても月給は1〜2千
元、これでは二狗の一週間の治療費をやっと賄えるだけだ、菊花
はほとんど絶望した。菊花が涙を流しながら呆然と町を歩いて
いると、突然電柱にある広告が目にとまった。「高額、求む!
美女代理出産」。「面接合格後手付け金10万先払い。代理出産
成功後さらに100万の高額報酬あり。」この文句に菊花の目は
大きく見開いた。以前ならこうした電柱の広告なんて信じ
なかった。すべて詐欺の手口だと分かっていたし、たとえ広告が
事実だとしても、身を売ってお金にするような徳を捨て自分を
貶めることは決してしなかった。けれども今、菊花は万策尽き、
歯を食いしばるしかない。ちょっと試してみようと思い、菊花は
広告にあった連絡先に電話した。二狗を救うためなら、何だって
したい、何を犠牲にしても惜しくはなかった。
==
郊外の立派な別荘で菊花は広告主の王总と夫人に会った。二人は
菊花の清純さと美貌に満足した。王总は疑いの目を向ける菊花に
説明した。「妻が不妊症で人工授精をしようと思ったが、不器量な
子どもの場合育てる自信がなくて、美女を選んでの代理出産を
決めたのです。決して詐欺ではありません。」
==
菊花の検診が済んだ後、約束どおり手付けが払われた。大きな
10束の現金を目の当たりした菊花はぼーっとした。それから菊花は
王总と各地を観光し、山海の珍味を食べ、高価な洋服を着て、豪華
な家に暮らした。夜になれば王总はとても激しく、優しく、菊花を
いたわり、あの手この手は絶え間なくて、菊花の高まりは止むこと
はなかった。こんな風に二狗は菊花に喜びを与えることは
できない。王总ともつれ合った菊花は興奮した後、二狗を思い出し
慚愧の念に酷く苦しんだ…
==
一日一日時は過ぎ、王总と菊花の2人の目には複雑な思いが宿る
ようになった。菊花は豪華な生活にすっかりなじみ、王总の生活
もまた菊花によって生気が満ちていた。菊花はすでに王总の子を
妊娠していたが、王总は夫人にはまだ知らせてはいなかった。
==
ある夜、菊花は王总に告げる。「一つお願いがあります。私と
夫は小さいころからずっと一緒に大きくなったのよ。だから彼
への情は深いの。夫は交通事故で手足が麻痺しているけれど、
医者によれば大きな病院にいって、お金さえあれば治せる
らしいの。心からの私の願いをかなえてもらえないかしら?」
王总は遠くをみるような表情になって、ちょっと考えると
「君って本当に思いやりがあって情が深いね。感動したよ。
わかったよ。そうしよう。でも僕も君にあるお願いがあるんだ。
」ちょっと間をおいてから王总は続けた。「妻のことなんだけど、
不妊症だけでなくて、重い神経衰弱と不眠症もあってね、
睡眠薬に頼って眠っているんだ。時間があったら、妻の相手を
して、世話をしてくれないか?妻とは苦楽を共にしてきて、僕が
一番大変だった時も妻は僕を見捨てなかった。僕の成功は半分
彼女のおかげなんだよ。」
菊花は遠くを見るような表情になって、ちょっと考えると言った。
「あなたってなんていい人で情が深いの。わたし、感動したわ。
そうするわね。」
王总と菊花の2人の目のなかには複雑な何かが生まれていた。
==
ほどなく、二狗は大きな病院に送られたが、意外な結果となり、
手術台の上で死んでしまった。菊花は知らなかった。執刀医は
王总からたくさんの袖の下をもらっていたのだ。ほとんど
同じころ、王夫人は寝ている間に死んでしまった。王总もまた
知らなかった。菊花が王夫人の飲み物に過量の睡眠薬をいれて
いたとは……。
==おわり==
生まれた子供が誰に似ちゃったのか不細工でした。
生まれた子供がどういうわけか二狗そっくりでした。
といったオチを思わず考えてしまいました。
難しさ★☆☆☆☆  面白さ★☆☆☆☆
今後の予定
1月30日 短編『管闲』p138-140
2月6日  長編『芳华』第2节
2月13日 短編『裱画徐』p141-143
2月27日 短編『谁送来烤红薯』p144-146
author:多摩中, category:講読編, 22:53
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2019.1.9(水)講読クラス
2019年1月9日 (水) 購読  陈老师  出席7名
『大团员』    孙 艳梅著(中国微型小说排行榜p132〜p134)
『みんな揃った』
日が昇って(8〜9時ころ)おじいちゃんは目が覚めた。ベッドが
ゴツゴツしておるのう?おやおや、ベッドの足元の地べたに一晩
寝てしまった。おかしいのう、たしかにベッドの上に這い上がって
布団をかけたはずが、どうやら酔い過ぎてしまったようじゃ。
おじいちゃんは手足を一気に使ってベッドの縁につかまって、3回
力をいれて、ベッドに這い上がると、足でベッドのヘリの布団を
引き上げた。身体は冬眠から目覚めたばかりの蛇のように次第に
温かくなってきた。(老汉手脚并用,扳着床沿,使三次动,爬上
床,用脚把床头的被子挑过来,身子像刚冬眠苏醒的蛇,逐渐暖和起
来。)やっと身体を良い感じに整えたと思ったら、お腹はグルグル
鳴り出した。まるで雷だ。おじいちゃんは本当に動きたくなかった。
携帯がまた、テーブルの上で鳴り出した。
おじいちゃんはお腹は無視できるけれど、携帯は無視する勇気が
なかった。きっと誰かだ、子供達の誰かがかけてきているのだ。
おじいちゃんには2人の息子と娘が一人いる。皆都会に鳥の巣の
ように高層の家を持ち、息子はかつておじいちゃんを都会に連れて
行って楽に暮らしてもらおうとした、おじいちゃんは1か月暮らし
たが、幸せに暮らすということにはならず、なんだか苦しい目に
あっている感じがした(感觉受一圈罪)。人間は鳥ではない、
空中に住んでいたおじいちゃんは夜通し眠れず、どうしても田舎に
帰りたくなった。息子はやむなくおじいちゃんを村まで送ると、
携帯を渡し、緑のキラキラ光るボタンを指さして言った、オヤジ、
鳴ったら、ここを押すんだよ。
次の日娘が電話をしてきた、おじいちゃんはすぐに緑のボタンを
押すと、携帯に向かって大声で言った。「わしゃ元気じゃ。」
「元気じゃ」が続いて半年、おじいちゃんははっきりとわかった
ようだ。携帯を持つようになってから、子どもたちはみな「様子を
見にちょくちょく帰る〜♪」*歌詞*ことはなくなって、「携帯」
の中の息子と娘になってしまったのだ。
おじいちゃんはこの黒黒した道具をなんか遠ざけたくて、一度
市に出かける時持っていかず、そこで赵じいさんに会って、暗く
なるまで飲んでしまった。路地口に着いたとたん、家の門の
ところで黒い数人の人影がうろうろしているのが見えて、
近づいていくと、2人の息子と娘がみんな揃っていた。娘は
おじいちゃんを見たとたん、目の周りを赤くして、一日中電話
したのよ、お父さん、なんで出ないの?わたし何かあったかと
思っちゃった…。息子はわめいた。オヤジ、暇にしているんだろ、
面倒をかけるなよ。いいな。こっちが忙しいことわかっている
だろ。それからというもの、おじいちゃんはまるで影のように
携帯を離すことはなくなった。携帯が鳴ればすぐとる。それは
まるで浮きがちょっと動けば、釣り竿を引き上げるようだった。
もうこれ以上迷惑はかけることはできなかった。(一响,就按,
像浮子一动,就把鱼竿提起来,可不能再添乱。)
=冒頭の場面へと戻ります。
この時しつこくなっている携帯から、娘の声が聞こえてきた。
今日はそっちに戻れないわ。お義姉さんも用事があって戻れ
なくなったって。おじいちゃんはしょうがなくて、ちょっと
出かけるかと決めたけど、実際のところ行くようなところなど
ない。村中大部分の家はしっかりと鍵がかけられ、かけられて
いないのは老人の家。それ以外は子供がいる家。子供が学校
にあがれば、大人によって村から出され、老人は時間がたてば
死神のお迎えが来る。
遠くから鳴り物やチャルメラの音、そして男女が泣き叫ぶ声が
聞こえてきた。隣村のばあさんが死んだんだな、おじいちゃん
はたちまちなんかうらやましくなって、いいのお、息子も娘も
みんな来ておる。おじいちゃんは田んぼの畔にしゃがんで
スパスパ煙草を吸い始めた。
おじいちゃんは家に戻るとタンスから死に装束を引っ張り出し、
すべて身に着け、棺桶に入って横になった。棺桶は大きくもなく
小さくもなく、ぴったりだ。棺桶は妻用に一つ、自分用に一つ
用意した。棺桶を怖がる娘におじいちゃんは言ったものだ。
何がこわい?父さんはすべて用意した。その時がきたら、
お前たちはここに来てお父さん〜と泣いてくれればいい。
おじいちゃんは子供たちに面倒はかけないと決めていたのだ。
暗くなって、月の光がひっそりと部屋に差して、おじいちゃんは
棺桶にちょっと横になっては出て、ビスケット一袋と水一瓶を
持って枕の下にしまった。そしてちょっと横になって又はい出て
きて2枚の紙おむつを探してきて身に着けた。死に装束を着た
おじいちゃんが月明かりの下、まるで鼠のように行ったり来たり
忙しくパタパタしていて、このとき誰か来たらびっくりして
死にそうになるだろう。とはいってもこの家に尋ねる人など
いなくなって久しい。
携帯が鳴り始めた。おじいちゃんはほっておいた。でも携帯は
出なければ、止むことはない、おじいちゃんは出たくない、
でも手はそれには従わない。娘の声が楽しそうに響く。お父さん、
中秋節おめでとう!おじいちゃんの濁った老いた涙がでてきた。
後悔しておじいちゃんは自分の手をずっと叩いた。携帯はまた
鳴るかもしれない、中秋節、みんな揃う日だから娘はかけてきた、
2人の孝行息子もかけてくるだろう。指をちょっと動かせば
手間はかからないし。案の定、また鳴った。おじいちゃんは手を
こすりながら大いに苦痛を味わった(老汉搓着手备受煎熬)。
いっそのことと、酒を飲んで一気に酔った、今度は携帯に
出たくても出られない。おじいちゃんはふらふらと棺桶へと
入っていった。
天地をひっくり返すような泣き声でおじいちゃんは目を覚ました。
おじいちゃんと棺桶は部屋の隅から真ん中へと動かされ、子ども
たちが正におじいちゃんの棺桶をとりかこんで激しく泣いている。
ああ良かったのう。息子も娘も来とるし。孫たちも来ておる、
おじいちゃんはホントに這い出たかったちょっと孫の頭をなでた
かった。でもおじいちゃんはちょっと動いて押しとどまった。
おじいちゃんがうっとり幸せを味わっていると、突然外が騒がしく
なるのが聞こえ、誰かが叫んでいる。医者が来たぞ、医者が。
医者はおじいちゃんの手を押さえた。脈拍は勢いよく打っている
と医者が言った。おじいちゃんは医者が眉をひそめ怪訝な顔を
しているのが、目を空けなくても想像できた。
そして、みんなが怖気づくような一幕があがった。
おじいちゃんがゆっくりと棺桶から起きあがって、白い服で喪に
服していた息子と娘をぐるっと見回し、満足気に足腰を伸ばして
言った。みんな揃っとるな、良かった。良かった。
=おわり=
 
浑浊的老泪「濁った老人の涙」あまりピンとこない表現ですが、
よく使われる表現だそうです。新年はじめの授業。おじいちゃん
の寂しさから始まったいたずらの様子に教室は笑い声が…。
今年も楽しい授業になりそうです。陈老师,谢谢。

難しさ★★☆☆☆    面白さ★★★☆☆
今後の授業:1/16、30
来週は短編「美女代孕」(中国微型小说排行榜p135〜p137)です。

 

 

author:多摩中, category:講読編, 08:36
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2018.12.19(水)講読クラス
2018年12月19日(水)講読    陈老师  出席7名
『芳华』        严 歌苓 著
--第一节--
刘峰に再会しても、彼とは分からないだろうと私は思っていた。
20歳の頃の彼だって、彼のことをよく知っていても、彼に背を
向けてしまえば、彼がどんな顔か思い出せない感じだった。
容貌が不細工ならその方がいい、不細工がロゴとなれる。不細工の
度合いが相当程度に達していれば誰もが知るところとなる(惊世
骇俗)。でも、彼は不細工ではなくて、もし不細工から美形までに
10の目盛りをふるなら、彼の容貌は間違いなく5だ。軍服を着て
軍帽をかぶった彼なら、美形の方に1度目盛りがふれていたかも
しれない。とりわけ私達の着ていた軍服は裁断が凝っていて、
生地も良くて、羊毛と化繊の混紡で特に皺になりにくく、ピン
としていた。彼の容貌に問題はない、問題はその問題のなさだ。
だから、かつて私と彼がどんなふうに、同じ隊列で教練したり、
同じ稽古部屋で足を伸ばしたり腰を下ろしたり、同じ食堂で
青梗菜の肉炒めを食べたり、あの同じ赤い宿舎で中央政府からの
声を学んだり、あることないことお喋りしたり(搬是非)した
とか、要するにかつて私と彼がどんなに親しく共に青春を台無しに
していたか(8年間のあの青春!)なんてことなど関係なく、彼の
顔をしっかり憶えておくなんて、到底無理なのだ。それなのに、
王府井の大通りでたくさんの面差しの海の中で私の視線は瞬く間に
彼をその水面に釣りあげた。しかも、横顔の彼を。私は彼の名を
呼びたかった。でも思い直して、やはりとどまった。
彼は刘峰という名で、30数年前私達は彼をこう呼んだ:雷又锋。
意味はもう一人の雷锋、音としては、ピンインの母音をゆっくり
発音する:L-i-u-Liu、Lを発音してから途中のleiで10分の1秒
止めて、最後にLiuとなる。刘峰と雷锋の2つの名前のピンインは
一つの字母しか違わない。だから私達は彼をふざけて雷又锋と
呼んでいた。でも皮肉っていたのではなくて、私達女性の兵士は
あの頃、本当に全身美徳の人として崇拝していて、ただ好意を
こめてからかっていた。それだけだ。もし刘峰の顔立ちの描写の
表の穴埋めをするなら、実際上手く埋まる。ーー顔の形:丸顔・
眉と目:濃い眉で一重・鼻:丸く、鼻筋は通っている・肌の色:
きめ細かく色白。もし雷锋の要望を形容しようとすれば、そのまま
刘峰の形容を真似できるとわかる。もちろん刘峰は雷锋にくらべて
10cm背が高く、1m69だ。私達は皆各地から選ばれて舞台に立って
いたのだ。まったく雷锋なら選ばれない、ダンスの列が作れず、
彼のところでガタンの低くなってしまうからだ。三十数年前、
私達のあの赤い建物から出てくる人たちは皆軍隊版の才子佳人で、
見るに忍びないような顔や体つきは見当たらなかった。
かつて私達の兵舎だった赤い建物は先の世紀末に壊して平にされ、
ローラをかけられ一筋の広い坂道(岛路)の地面の下に
ならされた。赤い建物のあの48の大小の部屋にあった刘峰が残した
痕跡さえみんな塵となってしまった。:彼が修理した壁や天井板、
彼がふさいだ鼠の穴、彼が釘を打ってつけた取っ手、彼が剥して
替えた白蟻に食われた床板…三十年あまり前の赤い建物は既に古く
なって、古希に近く、危険な建物と言わざるをえなかった。ただ
その極めて慢性化した崩壊への過程が刘峰によって遅らされていた
だけだった。;彼の左官や大工としての手によって三階建ての
危険な建物は巨大なヒビの入った卵のようにして大切に扱われて、
まだ立ち退き拒否という概念が生まれる前であったのに、知らない
うちに私達は立ち退きたくないという思いを抱くようになって
いた。私達はなんの心配もせずに、その危険な建物に住んで10年
以上たっていたのだけれど、その赤い建物の老朽化が激しくなって
崩れる速度が上がると、異口同音に叫んだものだった。「誰か
刘峰を呼びにいった?」そうした老朽化の突然の加速はよく一夜の
うちにある壁面に亀裂ができたり、枇榔扇の大きさの石灰片が
なんの前ぶれもなく天井板から落ちたりすることで表れた。そんな
ことが起きても、私達は「刘峰を探してきて!」と言えばよかった。
私が今日王府井に来たのは本を買いにだった。王府井のデパートの
入口では身障者の少年たちの一団が歌を歌っていて、その中央には
募金箱が置いてあった。演じている人はそれぞれが一生懸命だった
けれど、出たり入ったりする観衆の流れはとても速く、たまたま
人の群れから募金する人が歩み出ても、皆いくらか恥ずかしそうで、
募金すると飛ぶようにその場を離れた。最近は、多くの人が集まる
公開の場で良いことをするのを、人はかえって恥ずかしがるのだ。
私はちょっと見るに忍びなくて、視線をそらした。その時、私は
群衆の中に刘峰が立っているのを見つけた。動きの激しい観覧席で、
彼は比較的じっとしていて、すでにしばらくの間そこに立っていた
ようだった。横から見ると、彼のありきたりな顔立ちは年齢に
よってそぎ落とされ深みが加わっていた。
私は刘峰の横の方から正面の方へと回った。平凡な顔は往々にして、
老けにくく、変わりにくいものだが、同年齢の人に比べて彼の
面立ちは少なくとも7・8歳は若かった。彼は「痴漢」事件に
よって兵卒としての服役という処分を受け、その2年目だった。
べトナムとの戦争がすでに始まっていた。
旅行団体のバスが長安通りの角に停まり、5〜60人の西洋人の観光客
が降りてきた。人の群れが一時乱れ、私が再び良い位置を見つけて
しっかり立った時には、刘峰はそこには居なくなっていた。私は
人の群れから出て王府井の大通りを端から端まで探した。彼が
こんなに早く姿を消せるはずがない、もし彼が私を避けたいと
思っていないのであれば。私は大通りの南の端に向かって一通り
歩き、又向きを変えて北の方へと歩いたけれど、街中見知らぬ人で
いっぱいだった。この時、きっと刘峰は私に彼のことを見知らぬ人に
しておいてほしかったのだ。
これからの授業:1/9、16、30
1/9は短編p.132〜134の『大团圆』
author:多摩中, category:講読編, 19:48
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2018.12.12(水)講読クラス
2018年12月12日(水)講読    陈老师  出席8名
『武则天的疼』        闵 凡利 著
(中国微型小说排行榜p128〜p131)
『則天武后の痛み』
 *則天武后:(624〜705)中国史上唯一の女帝。唐の高宗の
皇后となり、後に唐に代わり武周朝を立てた。
 
そなた、わたくしがわからぬのか? うん。歴史を学んで
おらぬのか? 習ったし、成績は良かったよ。そなた、中国
の歴代王朝は知っておるな?口をついて出てきた。唐尭禹夏
商周,春秋戦国、乱世は長く、秦漢三国時代晋統一され、
南北朝で対立し、隋唐五代十国、宋元明清皇帝は終わり。
どうです?おや、わたくしのことを歴史がそんな扱いをして
おるとは思いもよらぬことよ。わたくしの偉大なる周王朝は
どんなに隆盛を極めておったか。今や、そなたの歴史に
おいてはただ簡単にふれておる(一笔带过)だけとは。あなた
が周の人だって?周のなんていう人です?わたくしは周の
武則天なるぞ!僕は笑って言った。あなた、今何時代かわかって
ます?今は中華人民共和国、西暦2013年。あなたの偉大な周は
690年から705年、今から千年以上前ですよね!千年以上前、
と現代、もともとこの二本の線が交差するなんてありえない!
その上あなたがそんなに若いままなんて、絶対ありえない!
 
彼女は笑って言った。そなたたち現代人はすでに進んでおる
(上天入地)のに、まさか時空を超えることをまだ解決して
おらぬのか?僕は首を横にふった。彼女は長くため息をついて
言った。そなたたちの科学技術がどんなにか発達したかと言う
たが、核兵器とやらを研究し生み出したとのう、して、それらは
いったい何に使用する為に研究したのか?実のところ、そなた
たちは亡霊にも及ばぬのう。亡霊?僕たちをそんな縁起の悪い
ものと比べられるのか?そなた、亡霊がそなたたち人間に及ばぬ
とでも思っておるのか?わかっておらぬな。亡霊は正義のもの
だし、情も愛も持っておる。そなたたち人間より、ずっとまし
よのう。そなたたちの周りの道徳的に堕落した者どもをちょっと
見てみるがよい。そのような者どもをそなたは亡霊と呼ぶ、それ
こそ亡霊への侮辱ぞ。僕は言葉がなかったが、遮るように言った。
亡霊の中にだって悪い奴もいるし、人に軽蔑される奴だっている
だろ!おる。但しそういう輩は油鍋に入れられ地獄のどん底に
落ちておる。
僕は夢から覚めたように気づいた。できるだけ早く、この自称
武則天の女から逃れた方が良いと思った。彼女の容姿は
美しく、僕の心を動かしたのだけれど。僕は言った。あなたが
僕のところに来たのは、何か用があったの?あるとも、わたくし
は最近心の臓の辺りが痛むのじゃ。そなたわたくしを診てはくれぬ
かのう?侍医とかいるんじゃないの?わたくしは侍医どもを信頼
しておらぬ。あれらの者は皆、心に一匹の毒蛇を飼っておるのよ。
え?そんなはずないよ。僕の心にいるか見た?そなたの心の中には
おらぬ。そなたたちの世をわたくしはよくよく見ておった。どの者
の心の中にも毒蛇がおる。ある者は一匹、ある者は二匹、たくさん
おる者もいたのう。ありえないよ、人の心になんで毒蛇なんかが?
信じぬのか?僕は信じない、殺されたって信じないよ。道理で
袁天罡が言ってたのう。そなたたち現代人は皆偽りの者、各々の
心の中に毒蛇を飼っているだけではなく、目も患い何を見れども
見えず(视而不见)。ただ権力、金、美女を見れば狼のように目
から緑の光を放つとな。
 
そういうあなたはまさか権力が好きではないとかじゃないでしょ?
あなた、権力が好きでなくて、なんで李家の天下を奪ったんだよ?
何を申す。わたくしが李家の天下を奪ったと?わたくしは李家の嫁
で、李家の人間として生き、李家の亡霊として死んだ。わたくしは
李家に代わって家を治めていたのじゃ、それをどうして李家の天下
を奪ったことになるのか!じゃ、なんで国の名前を唐から周にした
んだよ?唐のままにしておかなかったの?そ、それは区分のため
じゃ。周と呼ぶか唐と呼ぶかなどそんなに重要かのう?はあ。周に
とっては国家が栄えるより民が良い暮らしを送れることがより重要
ではないかのう?はあ。彼女はほほほと笑った。わたくしは多くの
大臣がわたくしが皇帝になるのをなぜ反対しおったか解るように
なった。もともとわたくしは大臣たちは女が皇帝になるのが気に
食わないのだと考えていた。今、わたくしはそういうことでは
なかったのだとはっきりわかった。それじゃどういう事だったの?
それはそなたたちの心の中に飼っているあの毒蛇の事じゃ。どう
いう事?なんで毒蛇の事なの?毒蛇が大臣たちを支配しておった
のじゃ。蛇に支配されていた者どもにはわたくしが信頼しておった
大臣たちも含まれる、狄仁杰も、さらには…。
あなたが言っている人はみな忠臣だ。歴史の事は僕には発言権は
ないな。しかもそれは悪い世界だ。あなたは女帝としてだって、
歴史を思うままになんてできないよ。ましてや僕はこんなとるに
たらない人間なんだし。
 
わたくしの心からの話をしようかのう。わたくしは本当のところ
皇帝になどなりたくなかったのじゃ。なりたくなかった?
可笑しいよ。なりたくなくて、なんでなったわけ?強制されての
ことよ。女人はそもそも内を守るもの、もしわたくしのあの息子
たちが皇帝になる能力があればわたくしが自分で皇帝になれるわけ
ないであろう。あの一つの国があのような無学無能なばか息子たち
によって滅ぼされるのに、わたくしがどうして十年も息子たちを
見ているなんてできるものかのう?!
僕はわかったよ。あなたの胸がなぜ痛んだか。あなたの心には
ある精神があったんだ。その精神は僕たちが気概と言っている!
気概も一匹の毒蛇よのう。その蛇は毎日わたくしの心を噛んでおる。
その蛇によって私の胸は痛み、私は憔悴し、狂う。
僕のお腹になんで毒蛇がいないかわかる?袁天罡(占い師)は
あんなに何でもわかったのに、あなたに教えなかったの?
武則天は首を振った。僕のお腹の中に毒蛇がいないのは自分
の為にいつも毒蛇を食べているからさ、僕のお腹の中の毒蛇は
僕の口に驚いて逃げちゃったのさ。なるほど、そういうことか。
彼女はやっと夢から覚めたように解ったようだった。
 
じゃ、服をめくってみて、僕が試しに見てみるよ。あなたのお腹
の毒蛇がどんな様子か。武則天はゆっくりと服をめくりあげた。
武則天の服の下は空っぽで何もなかった。まるでつまらない
歴史の一部のように。     (終わり)
 
則天武后さんがタイムスリップして現代にやってきた。自分は
望んで皇帝になった訳ではなく、国家のため民のためだったのよ。
ダメな息子には任せておけなくて、とおっしゃいますが、お腹の
中にはそんな気概はなく、からっぽでした。タイムスリップもの
ということで、ワクワクしましたが、武則天のイメージを刷新
することはなく、残念。

難しさ★★☆☆☆      面白さ★★☆☆☆
来週は長編『芳华』の第一节を読む予定です。YouTubeで同題の
映画を見ることできます。
今後の授業:12/19、1/9、16、30
今後の休み:12/26、1/2、23
author:多摩中, category:講読編, 20:35
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2018.12.6(水)講読クラス
2018年12月5日(水)講読   陈老师          出席7名
『一顿饭吃到遏      周 海亮著
(中国微型小说排行榜 p.126〜127)
『ご飯を食べて暮れてゆく』
情景描写から入ります。
简陋的单人宿舍,一张床,一把椅子,房间就被塞满。潮湿的水泥
地面上,一个燃烧的酒精炉,一个滚着沸水的铝皮饭盒。他们甚至
没有一张餐桌。(粗末な単身用の寮、一つのベッドと椅子一脚で、
その部屋はすでに塞がっていた。湿ったセメントの床の上には、
ひとつのアルコールランプ、アルミの弁当箱でお湯が沸いている。
彼らにはテーブルさえなかった。)
あなたは沸いているお湯にインスタント麺を入れて、溶き卵を
加えて、葱のみじん切りを入れた。ちょっと考えてからそれに2滴
の胡麻油を垂らした。その香りが部屋中に広がった。胡麻油は
まるで透き通った琥珀のようだった。あなたは私をちょっと見つめ
言った。熱いうちにおあがり。私はうっとりした。あなたを好きに
なったばかりで、その言葉、その眼差し、一杯のインスタント
ラーメン、そっと絡めた小指、全ては蜜のような愛だった。
=ムードぶち壊しの誤訳シリーズ。小指轻轻一勾(×小指でそっと
ラーメンをかき混ぜ、…あつっ!)
妻は笑って立って椅子を引いてテーブルの上の花瓶に一輪の白い
百合の花を挿した。花の香りがいっぱいになって、夫の心は
うっとりとなった。テーブルの上には小皿に漬物、大きな皿には
炒め物、お椀に煮込み。漬物は揃って綺麗に切ってあって、炒め物
は色も香りも全部整っていた。煮込みはその時付け加えたもので、
半身の鶏とじゃがいもーーなぜなら今日は彼らが婚姻届けを受け
取った日なのだ。テーブルクロスは古いけれど清潔で、枝が絡んだ
ハスの図案(缠枝莲图案:仲が良い、縁起が良い柄)は妻に
とっては気持ちが落ち着くものだった。新しく借りた家は一部屋と
リビングが一間。そこに夕焼けが流れるように入って来ていた。
部屋は明るく温かく、妻は鶏を一本とって夫の碗に入れて言った。
一日大変だったでしょう。栄養をとってね。 
=この後、〈鶏〉を妻に返す夫。ここで〈鶏〉がやり取りされ、
つながっているかのようですが、時間は経っています。
夫は微笑んだ。微笑みながら、鶏をとって妻にも返してあげた。
妻には栄養が必要なのだ。妻の体にはまだ生まれていない赤ちゃん
が育まれていた。おかずは四品でスープが一種。質素だけれど、
栄養が整ってた。これは夫が毎日作っていた。家に戻ると、すぐに
料理の本をめくり、エプロンをつけて、お玉を操る。夫が料理を
しているそばで妻はお腹をさすりながら、立って静かに見守り
ながら、水をいれて!と声をかけた。夫はしまった、と頭を自分で
たたいた。以前と同じの一部屋とリビング一間。壁には幸せな新婚
当時の写真がかかっていた。テーブルには赤いバラが静かに開いて
いた。
夫は電話をとった。夫の仕事は忙しく、電話は特に多かった。
四部屋とリビングが二間。テーブルはマホガニー製で大きくて
たくさんのおかずが並んでいるが百合もバラもなかった。妻の膝
には息子が座っていて、泣いていて、テレビは大音響でついて
いた。2人はついさっき喧嘩をしたばかり。夫が三日連続で帰宅
してお飯を食べてなかったのだ。ご飯一回を食べないというのが
問題なのではない。妻は夫が心配なのだ。夫の胃の具合は良く
なくて、お酒は飲めないし冷たすぎるものは食べられないのだ。
それに妻は自分たちの気持ちも心配だ。家の外には誘惑がいっぱい
なのは分かっているから。
=ここでは〈電話〉が時間を超えて物語を繋げています。
夫は電話を終えると戻って来た。妻はスープに酢を少し加えた。
夫は尋ねた。息子はまた帰らないのか?妻は答えた。まだ仕事を
始めたばかりで、忙しいのよ。夫は座って、一口食べるとまた
台所へ入って行って、お玉を動かした。もう一品だな。夫は
言った。今日は僕たちの結婚記念日だ。テーブルには二組のお椀
とお箸、花瓶が一つ、一輪のバラ、おかずが四品、スープが二種。
夫はそれでも台所でインスタントラーメンを作っていた。妻は夫
の気持ちが分かっていた。夫は昔を思い出したのだ。妻は夫に
お酒をついで、夫に微笑んだ。2人は盃を掲げた。夫は妻の
瞳に涙がキラキラ光っているのに気づいた。
=ここでは〈お酒〉が時間を超えて物語を繋げます。
妻はお酒をちょっと飲んで、酔った。彼女が窓の外に目をやると、
夫と一緒に植えた芙蓉の木がよく茂っていた。夫はまだご飯を
食べていて、落ち着きはらっている。妻は分かっていた。夫は
晩御飯を大事に(吝啬地)楽しんでいるというよりは、2人で
過ごした歳月をじっくりと味わっているのだ。空は既に暮れて、
妻は灯りをつけた。橙色の光の輪が夫の年老いた顔色をつやつやと
生気に満ちたものへと変えた。妻は夫の為にお碗にご飯を半杯
盛ろうとしたけれど、夫は手を振り、もう食べられない、と
言った。夫はエプロンをして老いていた。動作が不自由になって、
いつもご飯粒や酒をあちこちにこぼしてばかりとなっていた。
妻はご飯を盛ってテーブルに置いた。髪は白く、顔と手は老人の
シミだらけだ。妻はおかずを作れば前みたいに夫が喜んでくれる
と思っている。妻はエプロンをして、料理の本をめくる。その
白い髪と皺の中には彼女と夫のたくさんの物語がしまわれている。
妻は夫の為にスープを温めて、浅緑色のみじん切りの葱を加え、
とき卵も加え、ちょっと考えてから、2滴の琥珀のような
なめらかで温かい胡麻油を垂らす。妻はもう歯がない口を開けて
笑って言う。おじいさん、さあ食べましょう。テーブルの上には
夫の若き頃の写真が置かれ、写真の傍らには黄色い菊がまばゆく
輝いて…。     (終わり)
湯気の温かさ、胡麻油の香り、百合とバラの香り、夕日の色、
灯りの色、百合の白、バラの赤、菊の黄色等、感覚に訴える物語
でした。食事シーンに集約された幸せなご夫婦の一生。なにより
です。作者は男性。やはり男性の方がロマンチストです。
難しさ ★★☆☆☆    面白さ★★★☆☆
!!注意!!来週は先生にご用意いただきました長編〈芳华〉を
読み始めるかもしれません。(1頁くらい???)
今後の授業 12/12、19、1/9、16、30
今後の休み 12/26、1/2、23
author:多摩中, category:講読編, 17:26
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2018.11.28(水)講読クラス

2018.11.28(水)講読クラス    陈老师    出席 6名

『七月流火』            杨 崇著
(2015中国微型小说排行榜p122〜p125)
 

「七月流火」とは『詩経』「国風・豳風」の「七月」〈豳
(ひん、地名)の農事の暦を歌っている寿ぎ歌〉の始まりに
出てくる四文字。七月(旧暦なので八月終わりか9月ころらしい
です)にさそり座のα星アンタレスが西に傾き沈んでゆく
(=流火)。このころには夏の暑さが引き、涼しくなるということ
でした。よって題名はこのまま。
 
吴南奎は町役場のそばのネットカフェから出てきた。受かった。
湘潭大学,法学部に。本当に天も見る目がある!
吴南奎多想感谢一下这个老天,他强迫自己好好地看一回这个老天的
宠儿--太阳。可是,太阳在是太亮了,以至于吴南奎的目光一触及
光线,鼻子就不由自主地耸了起来,嘴巴也翻合起来了,特别想打
喷嚏。(吴南奎はこの天に感謝してみようとなんと願ったことか、
そこで彼は無理やりこの天の愛する子どもーー太陽を一度よくよく
見ようとした。けれども、太陽はとても眩しくて吴南奎の視線が
光線に触れると、とたんに鼻が思わずそそり立って、唇が開い
たり閉じたりして、大きなくしゃみが出そうになった。)
==こうした丁寧な描写が特徴的です。
 
盘山村の骚水牯は町から荷車を引いて戻って来たばかりで、村役場
を通りかかった時、口をパクパクしている吴南奎を見て言う。
そこで何してんだ?おまえ。吴南奎は大学に受かったと冷静に
告げる。!!!それを聞いた骚水牯の面食らった様子がこちら→
骚水牯站定了,呆呆地望着这个村里的奎子狗。日他娘的,这下,
贤亮瞎子该开眼了,崽伢子考上了湘潭大学!湘潭是什么地方?
那是毛主席的家乡 !以前那个歌是怎么唱的?“江边有个湘潭县哪,
出了个毛主席,领导人民得解放,咿呀咿子哟。”(骚水牯は
呆然とわが村の奎子くんをながめながら固まってしまった。
こんちくしょう、これで、贤亮瞎子はきっと笑うはずだ。自分の
せがれが大学に受かったとはな!湘潭ってどこじゃったかのう。
あれは毛主席の故郷じゃ!昔のあの歌はどんなじゃったかのう?
「川辺には湘潭县があるな。毛主席のうまれたところ、人民を
導き解放してくださった、イ〜ヤ〜イ〜ズヨ〜。」
固まっていた骚水牯が我に返ると、前を麻溪江村の张聋子が通る。
大声で呼び止める骚水牯。ところが、それほど耳が悪いわけでは
ない张聋子(聋子=耳が不自由な人)、聞こえないふりをします。
その理由がおかしい。→〜但他去年背着麻鱼机麻了骚水牯田里的
鱼,以为骚水牯这么凶着喊自己,估计又是想找自己的麻烦,〜
(〜だけど、彼は去年電気ショックで魚をとる機械をしょって、
骚水牯の田んぼの魚を電気でしびれさせたことがあった。骚水牯が
あんなに荒っぽく自分を呼ぶのは、嫌がらせでもしようっていう
魂胆だと思った。)骚水牯は勢いよく走って来て、张聋子を強く
叩くと言った。おれらの盘山村から大学生が出たどー!骚水牯の
その表情を見て、安心した张聋子、すぐに驚き、高い声で尋ねる。
誰のせがれだ、そんなすごいのは?骚水牯は吴南奎をひっぱて来て
言った。こいつさ、贤亮瞎子のせがれが、湘潭大学だぞ!
张聋子もまた、この大学の名をきくと思い出すのはあの歌。
”咿呀咿子哟イ〜ヤ〜イ〜ズヨ〜”湘潭がどこにあるかは知らない
けれど、確かに湘潭と歌ったぞ。偉大な毛主席と歌ったな。
一応敬意を表しますが、本当は一言言いたかった张聋子。
「それって、あの奥さんを翘嘴巴村長にもてあそばれた、贤亮
瞎子ですよね?」でも、骚水牯からもらった煙草をとりあげられ
そうなので、言葉を飲み込みました。
 
骚水牯がこんな風にふれまわり、街道じゅうにに盘山から大学に
受かった人が出た!ということがすぐに広まった。骚水牯は
吴南奎と一緒に村へ帰りたがった。その思惑は→〜要对这个奎子
狗好一点,人家马上就要进湘潭大学了,将来出来不是个县长就是
个乡长,得罪不起的,更何况那年自己还因为奎子狗在自家田里药
泥鳅打了人家呢,希望他不要再记过去了。(〜この奎子の機嫌を
とっとかなきゃな、こいつはすぐに湘潭大学に入ったら、将来は
县長か乡長になるだろう。気に障ったりしないようにな。そう
そう、ましてや、あの年、おらが、奎子の奴がおらの田んぼで
泥鰌を毒殺したからあいつをぶんなぐったけっな、あいつが思い
出さないといいがな。)
骚水牯は吴南奎がまるでわが子であるかのように、会う人に
煙草を配り、吴南奎の湘潭大学の合格を言いふらした。
ところが吴南奎は骚水牯にもう宣伝するのはやめてほしいと命令
のように懇願するのだった。その目を見ると、骚水牯は承諾
しないわけにはいかなかった。

贤亮瞎子は井戸のそばの松の木の下で涼んでいた。贤亮瞎子は
吴南奎が大学に受かった知らせが聞きたくて彼を午前中ずっと
そこで待っていた。吴南奎の足音を聞きつけ、奎子かい?
そうだよ、父さん。ところが奎子が喜びを表さないので、贤亮
瞎子は試験がうまくいかなかったのかと思う。奎子が湘潭大学
の法学部に受かったと聞き、さっと震えがきた。奎子は父親を
抱きしめると、落ち着いた様子で言った。父さん、僕は合格
通知を待ちたかっただけで、大学に行きたいとは思っていない
んだ。贤亮瞎子はたちまち口を大きくあけて、しばらくそこで
硬直してしまった。怒って、言う。お金の事を心配している
のか?父さんは目は見えなくとも物乞いをするさ。
=お待たせしました。ここで、息子の感動のお言葉であります。
父さん、すべてがそうということではないよ。僕は大学を受け、
父さんの息子が決して役立たずではないことをただ証明した
かっただけだよ。父さんが今日たとえ僕を打ち殺したって、
大学にはいかない、湘潭大学の合格通知を受け取りたかった
んだ。そうしたら、深圳に働きにいくよ。
お父さんは息子を抱きしめ、ううう…と泣くのでありました。
=心が洗われるこの親子。
贤亮瞎子(贤は賢く、亮は心美しく、瞎子は目が不自由と
いう意味も持ちます。)一方その時…
 
あの翘嘴巴村主任、そう、吴南奎の母を弄んだ、あやつです。
村主任(前述は村長、どっちやねん?)は麻雀を打っていて、
おしっこをしに外に出て、あの清らかな親子が抱き合って
泣く光景を目にすると、ああ…奎子の奴大学落ちたな、と
考えます。最低な翘嘴巴村主任のご様子がこちら→因而翘嘴巴
村长在小便的时候,也就表现得格外嚣张,甚至还在心里进一步想,
你贤亮瞎子和秀梅能生出个什么货?我保证,我的种子要比贤亮瞎子
的强!(それで、翘嘴巴村長はおしっこをしながら、うんと勢い
よく放ってひけらかし、さらに心の中でもう一歩進んで思った。
贤亮瞎子、おまえと秀梅〈奎子の母、今は村長の女にされた〉から
どんなものが生まれると思ってるんだ?おれが保証しよう、おれの
子種の方が優っているに決まってるさ。)
=あっぱれな最低ぶり。
自己評価がめっちゃ高い翘嘴巴村長、でも吴南奎は大学に受かって
いるのに村長の娘ときたら、ランクが三番目の大学でさえ合格には
百点以上も足りないのです。トホホな感じ。吴南奎から口止め
されてはいましたが骚水牯は村長に言っちゃいます。
合格通知書までも目にした村長。まずいな、奎子の奴が湘潭大学に
受かった、おまけに、法学部。将来おれにとって良いことは有る訳
ない。それから数十日の間、村長は注意深く吴南奎の機嫌を取り
まくり、お酒のお誘いの案内状を吴南奎から受け取ったら、行き
ますとも、是非ともいきますよ!村のこんなに目出度いことに、
私が行かなかったら、人間じゃないですよ。とおっしゃる始末。
吴南奎のお祝いの宴会は盛大に終わり、吴南奎は一人で深圳へと
旅立った。翘嘴巴主任はずっと納得できなかった。そして、
油断などはできないと思っていた。これが天龙盘山村で最近
広く伝わった大流行りの話題だ。   (終わり)
 
==久しぶりの誤訳シリーズ。お楽しみください。
「七月流火」=×「七月のフィラリア」教養がないとこうなる。
        全盛期を誇り人妻にまで手をだした村長も
        七月のアンタレスのように沈んでゆく…。
        権力を握ったら、気を付けましょう。
        要らない心配。
「也不知道续后」=×「その後を知らない。」
         ○「再婚はしていない。」前文が奥さんを
         亡くして十数年、ということから考えて訳す。
以下の2つは正解が上記の訳文に載っております。
「背着麻鱼机麻了」=????麻鱼机麻が人名か?マーウージーマ
         という赤ちゃんを背負って→もちろん×。
「三本都还差一百多分」=「三書はすべてまだ百以上違う」???
「将来可有自己的好果子吃了」=×「将来、自分(吴南奎)に
         とって良い成果が持てる」○「将来、自分
         (村長)にとって良いことにはなるわけない。
         (可有=没有で反語になる)」
==今回は難解で、読み応えのある物語でした。
  作品中の歌を先生が聞かせて下さいました。
  先生のご説明なくしては、この物語を楽しむことはできません
  でした。多谢,陈老师。
今後の予定 12/5、12、19
今後の休み 12/26、1/2
        
難しさ★★★★★    面白さ★★★★★
author:多摩中, category:講読編, 22:18
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2018.11.28(水)講読クラス

2018.11.28(水)講読クラス    陈老师    出席 6名

『七月流火』            杨 崇著
(2015中国微型小说排行榜p122〜p125)
 

「七月流火」とは『詩経』「国風・豳風」の「七月」〈豳
(ひん、地名)の農事の暦を歌っている寿ぎ歌〉の始まりに
出てくる四文字。七月(旧暦なので八月終わりか9月ころらしい
です)にさそり座のα星アンタレスが西に傾き沈んでゆく
(=流火)。このころには夏の暑さが引き、涼しくなるということ
でした。よって題名はこのまま。
 
吴南奎は町役場のそばのネットカフェから出てきた。受かった。
湘潭大学,法学部に。本当に天も見る目がある!
吴南奎多想感谢一下这个老天,他强迫自己好好地看一回这个老天的
宠儿--太阳。可是,太阳在是太亮了,以至于吴南奎的目光一触及
光线,鼻子就不由自主地耸了起来,嘴巴也翻合起来了,特别想打
喷嚏。(吴南奎はこの天に感謝してみようとなんと願ったことか、
そこで彼は無理やりこの天の愛する子どもーー太陽を一度よくよく
見ようとした。けれども、太陽はとても眩しくて吴南奎の視線が
光線に触れると、とたんに鼻が思わずそそり立って、唇が開い
たり閉じたりして、大きなくしゃみが出そうになった。)
==こうした丁寧な描写が特徴的です。
 
盘山村の骚水牯は町から荷車を引いて戻って来たばかりで、村役場
を通りかかった時、口をパクパクしている吴南奎を見て言う。
そこで何してんだ?おまえ。吴南奎は大学に受かったと冷静に
告げる。!!!それを聞いた骚水牯の面食らった様子がこちら→
骚水牯站定了,呆呆地望着这个村里的奎子狗。日他娘的,这下,
贤亮瞎子该开眼了,崽伢子考上了湘潭大学!湘潭是什么地方?
那是毛主席的家乡 !以前那个歌是怎么唱的?“江边有个湘潭县哪,
出了个毛主席,领导人民得解放,咿呀咿子哟。”(骚水牯は
呆然とわが村の奎子くんをながめながら固まってしまった。
こんちくしょう、これで、贤亮瞎子はきっと笑うはずだ。自分の
せがれが大学に受かったとはな!湘潭ってどこじゃったかのう。
あれは毛主席の故郷じゃ!昔のあの歌はどんなじゃったかのう?
「川辺には湘潭县があるな。毛主席のうまれたところ、人民を
導き解放してくださった、イ〜ヤ〜イ〜ズヨ〜。」
固まっていた骚水牯が我に返ると、前を麻溪江村の张聋子が通る。
大声で呼び止める骚水牯。ところが、それほど耳が悪いわけでは
ない张聋子(聋子=耳が不自由な人)、聞こえないふりをします。
その理由がおかしい。→〜但他去年背着麻鱼机麻了骚水牯田里的
鱼,以为骚水牯这么凶着喊自己,估计又是想找自己的麻烦,〜
(〜だけど、彼は去年電気ショックで魚をとる機械をしょって、
骚水牯の田んぼの魚を電気でしびれさせたことがあった。骚水牯が
あんなに荒っぽく自分を呼ぶのは、嫌がらせでもしようっていう
魂胆だと思った。)骚水牯は勢いよく走って来て、张聋子を強く
叩くと言った。おれらの盘山村から大学生が出たどー!骚水牯の
その表情を見て、安心した张聋子、すぐに驚き、高い声で尋ねる。
誰のせがれだ、そんなすごいのは?骚水牯は吴南奎をひっぱて来て
言った。こいつさ、贤亮瞎子のせがれが、湘潭大学だぞ!
张聋子もまた、この大学の名をきくと思い出すのはあの歌。
”咿呀咿子哟イ〜ヤ〜イ〜ズヨ〜”湘潭がどこにあるかは知らない
けれど、確かに湘潭と歌ったぞ。偉大な毛主席と歌ったな。
一応敬意を表しますが、本当は一言言いたかった张聋子。
「それって、あの奥さんを翘嘴巴村長にもてあそばれた、贤亮
瞎子ですよね?」でも、骚水牯からもらった煙草をとりあげられ
そうなので、言葉を飲み込みました。
 
骚水牯がこんな風にふれまわり、街道じゅうにに盘山から大学に
受かった人が出た!ということがすぐに広まった。骚水牯は
吴南奎と一緒に村へ帰りたがった。その思惑は→〜要对这个奎子
狗好一点,人家马上就要进湘潭大学了,将来出来不是个县长就是
个乡长,得罪不起的,更何况那年自己还因为奎子狗在自家田里药
泥鳅打了人家呢,希望他不要再记过去了。(〜この奎子の機嫌を
とっとかなきゃな、こいつはすぐに湘潭大学に入ったら、将来は
县長か乡長になるだろう。気に障ったりしないようにな。そう
そう、ましてや、あの年、おらが、奎子の奴がおらの田んぼで
泥鰌を毒殺したからあいつをぶんなぐったけっな、あいつが思い
出さないといいがな。)
骚水牯は吴南奎がまるでわが子であるかのように、会う人に
煙草を配り、吴南奎の湘潭大学の合格を言いふらした。
ところが吴南奎は骚水牯にもう宣伝するのはやめてほしいと命令
のように懇願するのだった。その目を見ると、骚水牯は承諾
しないわけにはいかなかった。

贤亮瞎子は井戸のそばの松の木の下で涼んでいた。贤亮瞎子は
吴南奎が大学に受かった知らせが聞きたくて彼を午前中ずっと
そこで待っていた。吴南奎の足音を聞きつけ、奎子かい?
そうだよ、父さん。ところが奎子が喜びを表さないので、贤亮
瞎子は試験がうまくいかなかったのかと思う。奎子が湘潭大学
の法学部に受かったと聞き、さっと震えがきた。奎子は父親を
抱きしめると、落ち着いた様子で言った。父さん、僕は合格
通知を待ちたかっただけで、大学に行きたいとは思っていない
んだ。贤亮瞎子はたちまち口を大きくあけて、しばらくそこで
硬直してしまった。怒って、言う。お金の事を心配している
のか?父さんは目は見えなくとも物乞いをするさ。
=お待たせしました。ここで、息子の感動のお言葉であります。
父さん、すべてがそうということではないよ。僕は大学を受け、
父さんの息子が決して役立たずではないことをただ証明した
かっただけだよ。父さんが今日たとえ僕を打ち殺したって、
大学にはいかない、湘潭大学の合格通知を受け取りたかった
んだ。そうしたら、深圳に働きにいくよ。
お父さんは息子を抱きしめ、ううう…と泣くのでありました。
=心が洗われるこの親子。
贤亮瞎子(贤は賢く、亮は心美しく、瞎子は目が不自由と
いう意味も持ちます。)一方その時…
 
あの翘嘴巴村主任、そう、吴南奎の母を弄んだ、あやつです。
村主任(前述は村長、どっちやねん?)は麻雀を打っていて、
おしっこをしに外に出て、あの清らかな親子が抱き合って
泣く光景を目にすると、ああ…奎子の奴大学落ちたな、と
考えます。最低な翘嘴巴村主任のご様子がこちら→因而翘嘴巴
村长在小便的时候,也就表现得格外嚣张,甚至还在心里进一步想,
你贤亮瞎子和秀梅能生出个什么货?我保证,我的种子要比贤亮瞎子
的强!(それで、翘嘴巴村長はおしっこをしながら、うんと勢い
よく放ってひけらかし、さらに心の中でもう一歩進んで思った。
贤亮瞎子、おまえと秀梅〈奎子の母、今は村長の女にされた〉から
どんなものが生まれると思ってるんだ?おれが保証しよう、おれの
子種の方が優っているに決まってるさ。)
=あっぱれな最低ぶり。
自己評価がめっちゃ高い翘嘴巴村長、でも吴南奎は大学に受かって
いるのに村長の娘ときたら、ランクが三番目の大学でさえ合格には
百点以上も足りないのです。トホホな感じ。吴南奎から口止め
されてはいましたが骚水牯は村長に言っちゃいます。
合格通知書までも目にした村長。まずいな、奎子の奴が湘潭大学に
受かった、おまけに、法学部。将来おれにとって良いことは有る訳
ない。それから数十日の間、村長は注意深く吴南奎の機嫌を取り
まくり、お酒のお誘いの案内状を吴南奎から受け取ったら、行き
ますとも、是非ともいきますよ!村のこんなに目出度いことに、
私が行かなかったら、人間じゃないですよ。とおっしゃる始末。
吴南奎のお祝いの宴会は盛大に終わり、吴南奎は一人で深圳へと
旅立った。翘嘴巴主任はずっと納得できなかった。そして、
油断などはできないと思っていた。これが天龙盘山村で最近
広く伝わった大流行りの話題だ。   (終わり)
 
==久しぶりの誤訳シリーズ。お楽しみください。
「七月流火」=×「七月のフィラリア」教養がないとこうなる。
        全盛期を誇り人妻にまで手をだした村長も
        七月のアンタレスのように沈んでゆく…。
        権力を握ったら、気を付けましょう。
        要らない心配。
「也不知道续后」=×「その後を知らない。」
         ○「再婚はしていない。」前文が奥さんを
         亡くして十数年、ということから考えて訳す。
以下の2つは正解が上記の訳文に載っております。
「背着麻鱼机麻了」=????麻鱼机麻が人名か?マーウージーマ
         という赤ちゃんを背負って→もちろん×。
「三本都还差一百多分」=「三書はすべてまだ百以上違う」???
「将来可有自己的好果子吃了」=×「将来、自分(吴南奎)に
         とって良い成果が持てる」○「将来、自分
         (村長)にとって良いことにはなるわけない。
         (可有=没有で反語になる)」
==今回は難解で、読み応えのある物語でした。
  作品中の歌を先生が聞かせて下さいました。
  先生のご説明なくしては、この物語を楽しむことはできません
  でした。多谢,陈老师。
今後の予定 12/5、12、19
今後の休み 12/26、1/2
        
難しさ★★★★★    面白さ★★★★★
author:多摩中, category:講読編, 22:17
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2019.11.21(水)講読クラス

2018.11.21(水)講読クラス         陈 老师   出席6名

 
相见不晚          尚 庆海著
『知り合うのは遅くはなかった』
(2015中国微型小説排行榜 p119-121
出会いと言えば男女?いいえ、これは男同士の出会いのお話です。
赵大伟と李志锋は,40歳を超えてからネット上で知り合い、生活、
理想、同一の人生観、興味、趣味を語り合い、2人は話さないこと
がないほどとなり、その上田舎も近く話せば話すほど気が合った。
実際に会うと初対面ですぐ親しくなり、那种相见恨晚的感觉甚为强
烈。(知り合うのが遅すぎたという気持ちが一層強くなった。)
赵大伟と李志锋は酒の席で語りあった。もし10年前、15年前に知り
会えていたら、どんなに素晴らしかった(精彩,美妙)だろうと。
20年前に知り合っていたら、すごいことになっていただろう
(不得了)と。その時から2人は兄弟xiongdiと呼び合い、一心同体
で生活においては互いに助け合い、仕事については励まし合い、
普段はQQや微信や電話で度々おしゃべりをして、毎週末には
ちょっと集まって兄弟の情を交わした。彼らの周りの多くの友人
たちもこの兄弟は本当に知り合うのが遅かった、という感慨を
持った。
ある時、二人は南山にいる道士の事を知る。その道士は不思議な
鏡を使って、願いに応じて数十年前、ことによっては前世の様子を
見ることができるのだという。二人は試してみることにする。
南山の道士は慎重に白檀の木箱から銅鏡を取り出し二人に言った。
「先ずはそなたたちがもし10年前に知り合っておったら、どんな
だったか見てしんぜよう。」道士は軽く目を閉じ、口の中でブツ
ブツ唱え、ただ机の上の鏡を見た。さっと暗くなり、またさっと
明るくなると、鏡の中に二人の三十歳くらいの男の姿が現れた。
鏡の中の二人は握手をし、型通りの挨拶をし、顔の表情は冷たい
のか温かいのか見当し難かった。その後鏡は一面まっ白になり
長い時間二度と何も映らなかった。道士は言った。「まっ白なの
は、お二人が知り合った後二度と交渉を持つことがなかったと
いう事じゃ。」「ありえない!」二人は10年前に知り合った場合
に、こんな様子だったなんて信じられなかった。
では、15年前出会っていたら?鏡がさっと暗くなり、又さっと
明るくなると、鏡の中で、赵大伟が李志锋を酒に誘っていた。
李志锋は一回は断るふりをした後に応じた。酒の席で二人は冷淡
でもなく、熱くもならずにしゃべっていると、タイミングよく
(差不多的时候)赵大伟は携帯が鳴り、帰ってしまう。李志锋が
会計をしにいくと、ポケットに金はなく、悪態をつく、一方画面が
変わると赵大伟が口笛を吹いてゆったりと大通りをふらふらと
歩いて行く。「なんでこんなことなんだ?」二人はなかなか信じ
られない。
では、20年前に知り合っていたら?矢も楯もたまらず二人は聞く。
鏡はさっと暗くなり、またさっと明るくなると、鏡の中には
二人の青春真っただ中の男二人の姿が現れた。ラッパズボンを
穿いた李志锋は髪は真ん中分け、口には煙草をくわえ、チンピラ
のようだ。赵大伟は地味な恰好だけれど明らかに鋭気がみなぎり、
内も外も全身に犯すこと難しい公明正大な気概が表れていた。
李志锋は赵大伟の前を過ぎるとき、斜に一瞥をなげ、煙草の煙を
赵大伟に吹きかけた。赵大伟はこの種のゴロツキが最も気に
食わない。赵大伟の肩を押した李志锋。「やるか?」「おうっ」
そう言うと赵大伟は跳びかかっていった。
がーん。この光景を見た二人。なんだかこんな場面経験した
憶えがある。これは何年前だったろうか。ここで道士のお言葉で
あります。ーーー
「お二方とも今、はっきりすべてご覧になったであろう。
20年前のあなた方は一人は傲慢で無謀で一人は敏感で怒り易
かった。15年前は一人は鋭敏、狡猾、一人は落ちぶれて無気力。
10年前は一人は官界を転々とし、一人は生活に苦労していた。
今日のあなた方は様々に鍛錬を重ね、世間にもまれた経験を
経て、とげとげしさはすでにあんなにはっきりではなくなって
消えた。かつ、それぞれが自分の境地を手に入れ、互いにより
寛容になり冷酷さがなくなり、理解力が備わり、猜疑心が薄れ、
責任を担うようになり、不遜さが消え、さらに自分の心が
何を求めているのか、何の為に生きているのか、はっきりと
わかっておる。だからこそようやくお二人は初対面なのにまるで
旧知の中のようで、兄弟のように仲良く誠の心で接することが
でき、真心で友達付き合いができるのじゃ。さあ、お二人は
いまでもまだ知り合うのが遅かったと思われるのかのう?」
道士の話に二人は慌てて答えた。「遅くない、遅くなんか
ない!俺たちがこの時期に知り合ったのは本当に最高に
いい時だった!俺たちは必ずよくよく大事にやってゆくさ。」
(おわり)
難しさ ★★☆☆☆
面白さ ★★★★☆(購読クラスN氏のご評価であります)
以前、時間が余ったときに長編も合わせて読んでみる案が
あがり、先生がご用意して下さり、メールして下さる
そうです。楽しみですね。陈老师,多谢。
これからの予定ー11/28、12/5、12、19、
12/26と1/2はお休み
author:多摩中, category:講読編, 17:37
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